マルチな距離感
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あれから特別講義は滞りなく続き、
私と彼も、平穏に普通に何事もなく過ごした。
毎週水曜日、彼の講義を受けていても
彼と校内で鉢合わせし声をかけあっても
それについて言及したり注目したりする者はもういなくなっていた。
彼から不意にからかわれることも無くなり、
そうして続いて行く毎日はとても平和だ。
私はこれを望んでいたのかもしれない。
そうだ、これでいいんだ。
何も気にしなくていい。
何も考えなくていい。
そうだ、これでよかったんだ。
段々彼との距離や関係が明白になり、
結局思い返してみると
私達はただのお隣さんで、たまたま色んなことがあっただけ。
そういうことだ。それだけだ。
今日は何周目かの木曜日。
学業の締めくくりはマルチメディア論。
「はい、この間から昨今のテレビコマーシャル事情について話し合ったわねー。」
「今日は息抜きがてら
90年代のCMを紹介します。」
大きなスクリーンに昔のCMが再生される。
私はボーッとそれを眺めていた。
チープなもの、カッコいいもの、それらは一通り再生された後、講師の手によって切り替わっていく。
ある一つの動画に差し掛かった時、
私の全ての細胞がいきなり目を覚ましたような感覚に陥った。
「これはみんなも知ってると思うけど、
烏龍茶のCMね。
とても洗礼されていて
お洒落でかわいらしいイメージがあるのだけれど、
みんなはどうかしら。」
見たことのないCM。
チャーミングな女の人たちがボートに乗り、湖を渡っている。
私はそこに流れているBGMを聞いて、
もう少しで声を出しそうになった。
この歌は。
この歌は、紛れもなく彼が歌っていた歌だ。
「ちなみにこのCMで使われている歌は
太湖船 といって
中国民謡なの。」
“太湖船 ”
講師がボードに走り書いたそれを
私は食い入るように見つめた。
彼とこの歌にどんな関係があるのか。
そんなこと、
もう気にしないつもりでいたのに。
そんなこと、
もうどうでもいいはずだったのに。
すぐに画面切り替わり、別のCMになっても
私の耳や頭の中はあの歌が鳴り続けていた。
私と彼も、平穏に普通に何事もなく過ごした。
毎週水曜日、彼の講義を受けていても
彼と校内で鉢合わせし声をかけあっても
それについて言及したり注目したりする者はもういなくなっていた。
彼から不意にからかわれることも無くなり、
そうして続いて行く毎日はとても平和だ。
私はこれを望んでいたのかもしれない。
そうだ、これでいいんだ。
何も気にしなくていい。
何も考えなくていい。
そうだ、これでよかったんだ。
段々彼との距離や関係が明白になり、
結局思い返してみると
私達はただのお隣さんで、たまたま色んなことがあっただけ。
そういうことだ。それだけだ。
今日は何周目かの木曜日。
学業の締めくくりはマルチメディア論。
「はい、この間から昨今のテレビコマーシャル事情について話し合ったわねー。」
「今日は息抜きがてら
90年代のCMを紹介します。」
大きなスクリーンに昔のCMが再生される。
私はボーッとそれを眺めていた。
チープなもの、カッコいいもの、それらは一通り再生された後、講師の手によって切り替わっていく。
ある一つの動画に差し掛かった時、
私の全ての細胞がいきなり目を覚ましたような感覚に陥った。
「これはみんなも知ってると思うけど、
烏龍茶のCMね。
とても洗礼されていて
お洒落でかわいらしいイメージがあるのだけれど、
みんなはどうかしら。」
見たことのないCM。
チャーミングな女の人たちがボートに乗り、湖を渡っている。
私はそこに流れているBGMを聞いて、
もう少しで声を出しそうになった。
この歌は。
この歌は、紛れもなく彼が歌っていた歌だ。
「ちなみにこのCMで使われている歌は
中国民謡なの。」
“
講師がボードに走り書いたそれを
私は食い入るように見つめた。
彼とこの歌にどんな関係があるのか。
そんなこと、
もう気にしないつもりでいたのに。
そんなこと、
もうどうでもいいはずだったのに。
すぐに画面切り替わり、別のCMになっても
私の耳や頭の中はあの歌が鳴り続けていた。