狂わす調子
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部屋に帰り、冷蔵庫に材料を戻す。
そこには自分の記憶通り、レモン果汁の瓶が収まっていた。
それから、お米を研いでセットする。
全ての任務が終わり、
早速布団に寝そべってみる。
洗いたての布団はきっと、
好きなものベスト3ぐらいに
余裕でランクインするだろう。
しばらく本を読んだりしてまどろんでいると、
扉を叩くコンコンという音が聞こえた。
「入るぞ。」
「どうぞ。」
ノックなんて、今までしたことなかったのに。
ていうか出来るのなら
ずっと前からしてほしかった。
もうすっかり彼の無礼な
行動に慣れていたせいか、
そんな彼をよそよそしく思ってしまう。
炊飯ジャー、お皿、お箸、材料、その他。
それを運ぶのは一苦労だ。
「別に私の部屋でもいいですよ。」
お互いえらく大荷物になってしまった。
「いや、それは無理ね。」
そう言って玄関を出て、
彼の部屋も通り過ぎ、
アパートの階段を降りていく。
「次は転ぶなよ。」
「転びませんて。」
少し礼儀正しくなっても、
やはりあの意地悪な笑みは健在のようだ。
「何処に行く気なんですか。」
「そこ。」
彼の目線の先はアパートの庭を指しており、
そこには何故か七輪が設置されていた。
「あれ、煙すごいからな。
それに今日、そんなに寒くないね。」
「どうしたんですか。」
「どしたて、昔からある。」
謎だ。
ろくな家電がないのに、
何故七輪を所持しているんだ。
謎すぎる。そして似合わなすぎる。
炭を置き、火をつける。
なんというか手慣れていた。
昔からあったって言ってたけど、
まさかこれを使っていたのか。
本当に得体の知れない人だ。
もうもうと煙が立つ。
これは確かに窓全開、
換気扇をフルに使ったとしても
室内では難しいだろう。
それと、講義にはそぐわない。
それぞれ勝手に肉を網に置くと
いい音が聞こえて、
ついでにお腹の音も鳴りそうになる。
とりあえず二人で黙々と
それらを焼いて口に運んだ。
「わ、美味しい。」
「飲むか。」
そう言って発泡酒を出す。
お酒はあまり強くはないので
いつも好んでは飲まないが、
こういう時にはやっぱり欲しい。
いただきます。と言って缶を受け取る。
それを含んでいると
彼が私サイドの網に端を伸ばした。
「あ、それ私が焼いてたやつ。」
「細かいこと言うなね。」
絶対知ってたくせに。
それからは、ひたすら肉を奪い合う。
目を離すと直ぐに
私の分まで食べようとする為、油断はできない。
まぁ、彼が買ってくれたのだけれど。
それでも、やっぱり不公平だ。
久々の高タンパク質。
栄養を蓄えなくては。
ふとこの光景を、はたから見た絵面を想像し
おかしくなって笑う。
「そんなに好きか。」
「え。」
主語が欠けているその文に、焦ってしまう。
“肉が”という意図での発言なのは分かっている。
けれどあんなことがあった手前、
そう簡単に意識しないのは無理だった。
「いや、これ近所の人が見たら
シュールだろうなと思って。」
「ハハ、確かに。」
彼も発泡酒の缶を片手に軽く笑う。
冬の風と、七輪からの煙に紛れて
いつもよりも長い時間
彼の笑顔を眺めることができる。
彼の笑い方は、
ちょうどいい質量だなとその時思った。
ただ面白いから笑う。
無闇に取り繕ったり、
ワザとらしく大声を出したり
学校のそこかしこで耳に入ってくる、
そういう類の笑い方じゃない。
その時、そのタイミングで
必要な量だけ笑っている。
静かに、フラットで、ただそこにある。
そんな感じ。
安心する…。
彼についてもう深く考えないと決め、
関係ないどうでもいいことと思おうとしても、
やはり、彼との時間は楽しいものということに
変わりはない。
「じゃ、講義。」
彼の声に、
弾かれた様に考えが手離される。
静かな風の音と、
不釣り合いな香ばしい香りのせいで
なんだか課外授業みたいだ。
そこには自分の記憶通り、レモン果汁の瓶が収まっていた。
それから、お米を研いでセットする。
全ての任務が終わり、
早速布団に寝そべってみる。
洗いたての布団はきっと、
好きなものベスト3ぐらいに
余裕でランクインするだろう。
しばらく本を読んだりしてまどろんでいると、
扉を叩くコンコンという音が聞こえた。
「入るぞ。」
「どうぞ。」
ノックなんて、今までしたことなかったのに。
ていうか出来るのなら
ずっと前からしてほしかった。
もうすっかり彼の無礼な
行動に慣れていたせいか、
そんな彼をよそよそしく思ってしまう。
炊飯ジャー、お皿、お箸、材料、その他。
それを運ぶのは一苦労だ。
「別に私の部屋でもいいですよ。」
お互いえらく大荷物になってしまった。
「いや、それは無理ね。」
そう言って玄関を出て、
彼の部屋も通り過ぎ、
アパートの階段を降りていく。
「次は転ぶなよ。」
「転びませんて。」
少し礼儀正しくなっても、
やはりあの意地悪な笑みは健在のようだ。
「何処に行く気なんですか。」
「そこ。」
彼の目線の先はアパートの庭を指しており、
そこには何故か七輪が設置されていた。
「あれ、煙すごいからな。
それに今日、そんなに寒くないね。」
「どうしたんですか。」
「どしたて、昔からある。」
謎だ。
ろくな家電がないのに、
何故七輪を所持しているんだ。
謎すぎる。そして似合わなすぎる。
炭を置き、火をつける。
なんというか手慣れていた。
昔からあったって言ってたけど、
まさかこれを使っていたのか。
本当に得体の知れない人だ。
もうもうと煙が立つ。
これは確かに窓全開、
換気扇をフルに使ったとしても
室内では難しいだろう。
それと、講義にはそぐわない。
それぞれ勝手に肉を網に置くと
いい音が聞こえて、
ついでにお腹の音も鳴りそうになる。
とりあえず二人で黙々と
それらを焼いて口に運んだ。
「わ、美味しい。」
「飲むか。」
そう言って発泡酒を出す。
お酒はあまり強くはないので
いつも好んでは飲まないが、
こういう時にはやっぱり欲しい。
いただきます。と言って缶を受け取る。
それを含んでいると
彼が私サイドの網に端を伸ばした。
「あ、それ私が焼いてたやつ。」
「細かいこと言うなね。」
絶対知ってたくせに。
それからは、ひたすら肉を奪い合う。
目を離すと直ぐに
私の分まで食べようとする為、油断はできない。
まぁ、彼が買ってくれたのだけれど。
それでも、やっぱり不公平だ。
久々の高タンパク質。
栄養を蓄えなくては。
ふとこの光景を、はたから見た絵面を想像し
おかしくなって笑う。
「そんなに好きか。」
「え。」
主語が欠けているその文に、焦ってしまう。
“肉が”という意図での発言なのは分かっている。
けれどあんなことがあった手前、
そう簡単に意識しないのは無理だった。
「いや、これ近所の人が見たら
シュールだろうなと思って。」
「ハハ、確かに。」
彼も発泡酒の缶を片手に軽く笑う。
冬の風と、七輪からの煙に紛れて
いつもよりも長い時間
彼の笑顔を眺めることができる。
彼の笑い方は、
ちょうどいい質量だなとその時思った。
ただ面白いから笑う。
無闇に取り繕ったり、
ワザとらしく大声を出したり
学校のそこかしこで耳に入ってくる、
そういう類の笑い方じゃない。
その時、そのタイミングで
必要な量だけ笑っている。
静かに、フラットで、ただそこにある。
そんな感じ。
安心する…。
彼についてもう深く考えないと決め、
関係ないどうでもいいことと思おうとしても、
やはり、彼との時間は楽しいものということに
変わりはない。
「じゃ、講義。」
彼の声に、
弾かれた様に考えが手離される。
静かな風の音と、
不釣り合いな香ばしい香りのせいで
なんだか課外授業みたいだ。