狂わす調子
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すっきりしたような心持ちで
私は例によって本館に入る。
金木犀のいい香りに気分もいっそう軽やかだ。
今日の授業は‥。
よし、いつも通りだ。
そう思い階段を上がる。
あの大きな窓のある階段。
いつか彼はここから見える場所で、
タバコを吸っていた。
いや、忘れるんだ。全て。
全部忘れろ事件だ。
そう思って無理やり目を逸らそうとした。
しかし、あの見覚えのある影に、
すぐに視線は捕らえられてしまう。
「また吸ってるし。」
生活指導部に、
一度怒られてみたらどうだろう。
いや、それでも彼はこたえそうにないな。
今回は電話などはしておらず、
立ったままひたすらタバコを吸っているだけだった。
表情はよく見えない。
私は、またあの悲しい顔をしていやしないかと気になった。
「いや、だから。」
私はもう吹っ切ったんだ。
予鈴が鳴る何分も前に、私は教室に入る。
何事もなく授業が終わり、下校する。
目の前のキャンパスから人がぞろぞろと出てくる。
そこに不釣り合いにレジ袋を下げ、
こちらに向かってくる人物がいた。
皆まで言わずとも彼だ。
「ん。」
「‥何ですかこれ。」
「牛タン。」
「いや、それは分かりますけど。」
袋の中にはその他にチシャ、キムチ等、焼肉に必要なものが入っていた。
「肉て言ただろ。帰て焼く。」
「私の部屋でですか。」
それでもいいのだが、
あのいい香りの布団が眠る前から芳ばしい匂いに変わるのは少し抵抗があった。
消臭すれば特に問題はないんだけれど。
「それは心配するな。」
「はぁ。」
というか、
こんなところで生肉を見せつけられても
反応に困る。
チラチラと私達を見ていく生徒達に
急いで近場の柱に身を隠し、
声を潜めて彼にいう。
なんで、私が気をつけなくちゃいけないんだ。
「だから、こんなところで堂々と‥。」
「別に、お前とワタシは何もないね。」
その言葉に拍子抜けする。
“馬鹿” “まだ気にしているのか”
“勘違いさせとけ”
この辺りのことを言われると思っていたから。
「‥ですね。」
「これ持て帰れ。あと米炊いとけ。」
私に例の物を差し出しながら言う。
彼にはあともう一コマ、
代講の授業があるのだそうだ。
「お疲れ様です。」
「あ、それと。」
帰ろうとした足を止め、振り返る。
何だろう。
「先に食うなよ。」
必死の形相で凄まれ、
低い声で唸るように言われた。
そこまで言わなくとも、
私はそんなにがめつくない。
そりゃお肉なんて久々だけど。
「食いません。」
「よし。」
またいつもの“よし”だ。
こんなところで頭を撫でられてしまっては
九分九厘、いや十割方噂になる。
私は彼の行動を予知し、
スッと身体を後ろに引く。
だがそれは私の奇行とみなされて
終わってしまった。
「見えない敵でもいたのか。」
「や、いえ‥。特に深い意味は。」
絶対触れられると思ったのに。
何だか調子が狂ってしまう。
いや、そうか。全部忘れろ事件だった。
もう心配する必要なんかないんだ。
忘れろ、忘れろ。
「変な奴。」
そう言って彼は教務室へと向かって行った。
私は頭を切り替えて、
冷蔵庫にはレモンがあったかどうかを
思い出すことにした。
私は例によって本館に入る。
金木犀のいい香りに気分もいっそう軽やかだ。
今日の授業は‥。
よし、いつも通りだ。
そう思い階段を上がる。
あの大きな窓のある階段。
いつか彼はここから見える場所で、
タバコを吸っていた。
いや、忘れるんだ。全て。
全部忘れろ事件だ。
そう思って無理やり目を逸らそうとした。
しかし、あの見覚えのある影に、
すぐに視線は捕らえられてしまう。
「また吸ってるし。」
生活指導部に、
一度怒られてみたらどうだろう。
いや、それでも彼はこたえそうにないな。
今回は電話などはしておらず、
立ったままひたすらタバコを吸っているだけだった。
表情はよく見えない。
私は、またあの悲しい顔をしていやしないかと気になった。
「いや、だから。」
私はもう吹っ切ったんだ。
予鈴が鳴る何分も前に、私は教室に入る。
何事もなく授業が終わり、下校する。
目の前のキャンパスから人がぞろぞろと出てくる。
そこに不釣り合いにレジ袋を下げ、
こちらに向かってくる人物がいた。
皆まで言わずとも彼だ。
「ん。」
「‥何ですかこれ。」
「牛タン。」
「いや、それは分かりますけど。」
袋の中にはその他にチシャ、キムチ等、焼肉に必要なものが入っていた。
「肉て言ただろ。帰て焼く。」
「私の部屋でですか。」
それでもいいのだが、
あのいい香りの布団が眠る前から芳ばしい匂いに変わるのは少し抵抗があった。
消臭すれば特に問題はないんだけれど。
「それは心配するな。」
「はぁ。」
というか、
こんなところで生肉を見せつけられても
反応に困る。
チラチラと私達を見ていく生徒達に
急いで近場の柱に身を隠し、
声を潜めて彼にいう。
なんで、私が気をつけなくちゃいけないんだ。
「だから、こんなところで堂々と‥。」
「別に、お前とワタシは何もないね。」
その言葉に拍子抜けする。
“馬鹿” “まだ気にしているのか”
“勘違いさせとけ”
この辺りのことを言われると思っていたから。
「‥ですね。」
「これ持て帰れ。あと米炊いとけ。」
私に例の物を差し出しながら言う。
彼にはあともう一コマ、
代講の授業があるのだそうだ。
「お疲れ様です。」
「あ、それと。」
帰ろうとした足を止め、振り返る。
何だろう。
「先に食うなよ。」
必死の形相で凄まれ、
低い声で唸るように言われた。
そこまで言わなくとも、
私はそんなにがめつくない。
そりゃお肉なんて久々だけど。
「食いません。」
「よし。」
またいつもの“よし”だ。
こんなところで頭を撫でられてしまっては
九分九厘、いや十割方噂になる。
私は彼の行動を予知し、
スッと身体を後ろに引く。
だがそれは私の奇行とみなされて
終わってしまった。
「見えない敵でもいたのか。」
「や、いえ‥。特に深い意味は。」
絶対触れられると思ったのに。
何だか調子が狂ってしまう。
いや、そうか。全部忘れろ事件だった。
もう心配する必要なんかないんだ。
忘れろ、忘れろ。
「変な奴。」
そう言って彼は教務室へと向かって行った。
私は頭を切り替えて、
冷蔵庫にはレモンがあったかどうかを
思い出すことにした。