狂わす調子
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月曜日、新しい週間の始まりだ。
部屋に戻って身支度をした。
あれから一睡もしていないから、
きっと酷い顔だろう。
冷たい水をバシャバシャかけて
なんとか持ちこたえる。
その時、階段から足音が聞こえた。
ここに上がってくるのは
私と、そして彼しかいない。
私は勢いよく扉を開けた。
と同時にガツッと何かが当たった音がし、
見ると彼が額を抑えていた。
どうやら開けた扉が
クリーンヒットしたようだ。
「すみません!」
「‥お前な‥。」
「大丈夫ですか!」
慌てて駆け寄った彼の肩腕には、
綺麗になった私の布団が抱えられていた。
そういえば、布団物干し竿に掛けっぱなしだったっけ。
「‥人がせかく持て来てやたのに。」
「洗ってくれたんですか。」
「昨夜、フィンの家に寄た時。
あいつの家、乾燥機ある。」
昨夜。
気まずい気持ちなり、口籠る私に気づかないのか
「あいつの部屋女いたね。
そんな家いれるか。」だの
「酔てる野郎程煩わしいものはない。」だの
眉間の皺を深く寄せて吐いていた。
そうだったんだ。
だから昨日、戻ってきたんだ。
そして新たな疑問ができる。
それでは彼はそのもっと後、
あの「全部忘れろ事件」以来
一体何処に行ったのだろう。
昨夜の出来事には一切触れない彼の態度に
あれは私が見た幻ではないのかと混乱する。
「ほら、どくね。
またボコられたりしたら困る。」
「事故です!
ていうか本当に大丈夫ですか。
たんこぶとか‥。」
部屋に布団を運ぶ
彼の背を追いながら私は言う。
「別にないね。」
無造作に敷かれた布団はフワフワで、
新品みたいになっていた。
柔軟剤のいい香りが鼻をくすぐる。
「じゃ、仕事行くね。」
「あ!あのっ!」
踵を返す彼を呼び止める。
「何か。」
「えっと‥
今日のご飯は何が‥。」
こんな台詞に死ぬ程緊張するなんて、
私は思いもしなかった。
黙る彼。
それは今日の献立を考えているからなのか、
それとも別の意味でなのか、
分からなくてヤキモキした。
「肉。」
その瞬間私は安堵した。
「分かりました。」
「ん。じゃな。」
彼が片手を少し上げて、
また階段を降りて行った。
足音が、さっきとは逆に遠のいていく。
今日は大学だろうか。
それよりよかった、普通に話してくれた。
このまま終わりではないんだ。
私は深く息を吐いた。
それにしても、
“忘れろ”とはどういう事なのだろうか。
あの夜だけを指した言葉なのだろうか。
また私は分からなくなる。
大体、彼は言葉足らずだ。
「って。」
ちょっと待て。
安堵とはなんだ、
よかったとはなんだ。
もっと俯瞰(ふかん)で己と向き合ってみる。
仮に彼が明日明後日居なくなっても、
私には何ら関係のないことだ。
特別講義は消えてしまうが、
食費は半減…とまではいかないか。
彼にも出してもらっている。
それよりなんだ、
家事が激減、噂にされる心配もなし。
心が乱されることもなし。
いい事尽くめではないか。
少々彼との時間が長かっただけ。
何をしているんだろう。
危ないところだった。
私はもう気にしない。
というかそう思う事自体、
甚だおかしなことである。
彼の言う通り、あの涙も、言葉の意味も、
全部なかったことにしよう。
忘れろとは多分そういうことだろう。
惚れた腫れたなど、もう考えたくもない。
悶々とするのにもいい加減疲れた。
初めてのことに、
少し動揺していただけなんだ。
「よし!」
気を取り直し、私は準備を再開する。
部屋に戻って身支度をした。
あれから一睡もしていないから、
きっと酷い顔だろう。
冷たい水をバシャバシャかけて
なんとか持ちこたえる。
その時、階段から足音が聞こえた。
ここに上がってくるのは
私と、そして彼しかいない。
私は勢いよく扉を開けた。
と同時にガツッと何かが当たった音がし、
見ると彼が額を抑えていた。
どうやら開けた扉が
クリーンヒットしたようだ。
「すみません!」
「‥お前な‥。」
「大丈夫ですか!」
慌てて駆け寄った彼の肩腕には、
綺麗になった私の布団が抱えられていた。
そういえば、布団物干し竿に掛けっぱなしだったっけ。
「‥人がせかく持て来てやたのに。」
「洗ってくれたんですか。」
「昨夜、フィンの家に寄た時。
あいつの家、乾燥機ある。」
昨夜。
気まずい気持ちなり、口籠る私に気づかないのか
「あいつの部屋女いたね。
そんな家いれるか。」だの
「酔てる野郎程煩わしいものはない。」だの
眉間の皺を深く寄せて吐いていた。
そうだったんだ。
だから昨日、戻ってきたんだ。
そして新たな疑問ができる。
それでは彼はそのもっと後、
あの「全部忘れろ事件」以来
一体何処に行ったのだろう。
昨夜の出来事には一切触れない彼の態度に
あれは私が見た幻ではないのかと混乱する。
「ほら、どくね。
またボコられたりしたら困る。」
「事故です!
ていうか本当に大丈夫ですか。
たんこぶとか‥。」
部屋に布団を運ぶ
彼の背を追いながら私は言う。
「別にないね。」
無造作に敷かれた布団はフワフワで、
新品みたいになっていた。
柔軟剤のいい香りが鼻をくすぐる。
「じゃ、仕事行くね。」
「あ!あのっ!」
踵を返す彼を呼び止める。
「何か。」
「えっと‥
今日のご飯は何が‥。」
こんな台詞に死ぬ程緊張するなんて、
私は思いもしなかった。
黙る彼。
それは今日の献立を考えているからなのか、
それとも別の意味でなのか、
分からなくてヤキモキした。
「肉。」
その瞬間私は安堵した。
「分かりました。」
「ん。じゃな。」
彼が片手を少し上げて、
また階段を降りて行った。
足音が、さっきとは逆に遠のいていく。
今日は大学だろうか。
それよりよかった、普通に話してくれた。
このまま終わりではないんだ。
私は深く息を吐いた。
それにしても、
“忘れろ”とはどういう事なのだろうか。
あの夜だけを指した言葉なのだろうか。
また私は分からなくなる。
大体、彼は言葉足らずだ。
「って。」
ちょっと待て。
安堵とはなんだ、
よかったとはなんだ。
もっと俯瞰(ふかん)で己と向き合ってみる。
仮に彼が明日明後日居なくなっても、
私には何ら関係のないことだ。
特別講義は消えてしまうが、
食費は半減…とまではいかないか。
彼にも出してもらっている。
それよりなんだ、
家事が激減、噂にされる心配もなし。
心が乱されることもなし。
いい事尽くめではないか。
少々彼との時間が長かっただけ。
何をしているんだろう。
危ないところだった。
私はもう気にしない。
というかそう思う事自体、
甚だおかしなことである。
彼の言う通り、あの涙も、言葉の意味も、
全部なかったことにしよう。
忘れろとは多分そういうことだろう。
惚れた腫れたなど、もう考えたくもない。
悶々とするのにもいい加減疲れた。
初めてのことに、
少し動揺していただけなんだ。
「よし!」
気を取り直し、私は準備を再開する。