埃
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いつまでそうしていたのか分からない。
体感時間でいえば、
とても長い間そうされていたような気もするし、
けれどそれは一瞬の事だったような気もする。
私の背に彼の腕が回された時、
頭と体が別々にあるような感覚になり
体は硬直したままだった。
そして、頭の方でぼんやりと
ああ、小さいけれどやっぱり男の人なんだな
などと思ったりした。
タバコと、その他に柔らかい匂い。
彼の匂いがこれ程まで
充満したことはなかった。
驚きが治っても、
心臓が煩いのは依然として同じだったが
頭と体は少しづつ元に戻っていった。
そこで自分も彼と同じように
腕を回そうと思い手を伸ばした。
そうしなければならないと思ったのか、
そうしたいと思ったのかは
私には判別できなかった。
あと少しで抱き締め返すという段になった時、
彼は私から離れて再び謝った。
「‥すまん。」
何も言えず、ただ私は彼を見ていた。
驚いたのだ、多分。
驚いたというのは、
いきなり抱き締められたことにではない。
それはさっき驚き尽くした。
そうでなくて、
彼の脆さに直面したような気がして
私は驚いた。
彼は自室にいるのにもかかわらず、
手持ち無沙汰にして座っている。
何か言葉を待っているような。
何を言えばいいんだろう。
頭をこねくり回して考えてみる。
“ジーモー”
そうだ、彼は寂しいのだ。
といつの間にかタバコを吸っている
彼を見て思い出した。
寂しい時、
人は人にどうしてあげればいいのか。
“大丈夫” “一人じゃありません”
そんな言葉が通用しないことは
彼を見ていれば分かる。
直ぐに抱き締め返すことも出来なかった私が、
彼に一体何をしてあげられるというのだろう。
「ワタシ、何か言てたか」
彼が沈黙を破り、私に聞いた。
それに私はギクリとする。
何か尋問をされている罪人のような気持ちになり、しどろもどろした。
「ハハ、分かりやす。」
彼は乾いた笑いを出しながら煙を吐いた。
白いが透明なそれは、
ストーブの灯りで照らされ直ぐに消えていく。
「‥さみしいんですか。」
言った瞬間、私は馬鹿かと本気で思った。
彼の顔をまともに見れなくて
視線を外し、また黙り込む。
「やぱり知てたな。」
「‥詳しくは、知りません。」
私はもう観念した。
あのマークや歌のことまで
全て洗いざらい吐いてしまおうか
とまで思っていた。
「もういいね。」
そう言って彼が立ち上がり、
背中を向けて玄関に立つ。
「全部忘れろ。さきのことも。色々すまん。」
バタンと扉が閉まり、私は1人取り残された。
体感時間でいえば、
とても長い間そうされていたような気もするし、
けれどそれは一瞬の事だったような気もする。
私の背に彼の腕が回された時、
頭と体が別々にあるような感覚になり
体は硬直したままだった。
そして、頭の方でぼんやりと
ああ、小さいけれどやっぱり男の人なんだな
などと思ったりした。
タバコと、その他に柔らかい匂い。
彼の匂いがこれ程まで
充満したことはなかった。
驚きが治っても、
心臓が煩いのは依然として同じだったが
頭と体は少しづつ元に戻っていった。
そこで自分も彼と同じように
腕を回そうと思い手を伸ばした。
そうしなければならないと思ったのか、
そうしたいと思ったのかは
私には判別できなかった。
あと少しで抱き締め返すという段になった時、
彼は私から離れて再び謝った。
「‥すまん。」
何も言えず、ただ私は彼を見ていた。
驚いたのだ、多分。
驚いたというのは、
いきなり抱き締められたことにではない。
それはさっき驚き尽くした。
そうでなくて、
彼の脆さに直面したような気がして
私は驚いた。
彼は自室にいるのにもかかわらず、
手持ち無沙汰にして座っている。
何か言葉を待っているような。
何を言えばいいんだろう。
頭をこねくり回して考えてみる。
“ジーモー”
そうだ、彼は寂しいのだ。
といつの間にかタバコを吸っている
彼を見て思い出した。
寂しい時、
人は人にどうしてあげればいいのか。
“大丈夫” “一人じゃありません”
そんな言葉が通用しないことは
彼を見ていれば分かる。
直ぐに抱き締め返すことも出来なかった私が、
彼に一体何をしてあげられるというのだろう。
「ワタシ、何か言てたか」
彼が沈黙を破り、私に聞いた。
それに私はギクリとする。
何か尋問をされている罪人のような気持ちになり、しどろもどろした。
「ハハ、分かりやす。」
彼は乾いた笑いを出しながら煙を吐いた。
白いが透明なそれは、
ストーブの灯りで照らされ直ぐに消えていく。
「‥さみしいんですか。」
言った瞬間、私は馬鹿かと本気で思った。
彼の顔をまともに見れなくて
視線を外し、また黙り込む。
「やぱり知てたな。」
「‥詳しくは、知りません。」
私はもう観念した。
あのマークや歌のことまで
全て洗いざらい吐いてしまおうか
とまで思っていた。
「もういいね。」
そう言って彼が立ち上がり、
背中を向けて玄関に立つ。
「全部忘れろ。さきのことも。色々すまん。」
バタンと扉が閉まり、私は1人取り残された。