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「あ、ここだ。
布団、どれにしますか。」
サイズは当然シングルを選ぶにしても、他にも材質やなんやと色々種類が置いていた。
「どれでもいいね。嵐選べ。」
「どれでもいいって。
とりあえず、これとかどうですか。」
彼用に、掛け布団と敷布団がセットになっているものを指差した。
「じゃ、それ。」
とちゃんと見ないでそれを掴む。
「張り合いないな。
あ、カート。取ってきますね。」
先に用意しておくべきだったが、
すっかり忘れていた。
「待っててください。そこだから。」
私は早足でその場を離れた。
「カートカート。あ、あそこだ。」
と、数人の間を潜りそれを手にとろうとした。
その時、服を引っ張られた気がして振り返る。
見ると、小さな男の子が泣きそうな顔で私の側に立っていた。
「どうしたの?」
「おかあさん、どこ。」
と私の服をギュッと掴んで、その子は尋ねる。
成る程、迷子である。
私はその場にしゃがみ込み、男の子に視線を合わせる。
「どんな服を着ているかとか分かるかな?」
「‥わかんない。」
辺りを見回して見ても、周りはカップルや若い人ばかり。
生憎お母さんと呼ばる人は何処にも居ない。
とりあえず放送してもらうか。
カートを戻して立ち上がり、男の子に手を差し伸べる。
「お母さん一緒に探そっか。」
「ん‥。」
男の子の手は、暖かく湿っていて、
なんだかとても心もとない。
「大丈夫だからね。」
そう言って笑うと
少しは安心してくれたようだ。
さて、とりあえず係員の人を探そうと足を踏み出す。
「何してるか。」
「あ。」
痺れを切らして迎えにきた彼が、
私、そしてその少し下の方にいる男の子に視線を落とす。
「えらく珍しいカートだな。」
「違います。」
こんな時にふざけなくても。
「迷子ね。」
分かってるなら最初からそう言え。
彼をひと睨みしつつ私も返す。
「とりあえず、
係員の人に放送してもらおうと思って。」
「お前、名前は。」
男の子を見下ろしながら彼は聞く。
そんな見方したら、絶対怖いに決まっている。
「えっ。」
案の定。
出会った頃私でもびっくりしたぐらいであるその威圧感に、
小さな子供が耐えられるわけはない。
「何か、お前名前ないのか。」
それを知ってか知らずか詰め寄る彼。
男の子はすくみ上がり、私の背中に隠れてしまった。
「もう、そんな聞き方するからですよ。
ごめんね。お兄ちゃん怖いよね。」
「な。」
“お兄ちゃん”と呼ばれたのが嫌だったのか、それとも“怖い”が心外だったのか。
彼は非難の声を上げた。
「とりあえず、
お店の人の所一緒に行こうね。」
そう言って、どうにか3人で歩き出す。
「もう何も言わんね。」
彼はそっぽを向いて不機嫌そうだ。
これではどちらが子供かわからない。
スタッフに事情を説明し、店内放送を流してもらうことになった。
しかし、ここはデパートではないので、迷子を預けておく場所はない。
1人で待つのはさぞかし心細いだろうと、迎えに来るのを待つことにした。
「放といても大丈夫ね。
子供は勝手に逞しくなる。」
どうやら彼は子供が苦手らしかった。
面倒臭いとでもいうように、彼はその場を離れようとする。
「そんな無責任ことできませんよ。」
「無責任なのは親ね。
ちゃんと見てたらこうならない。」
制した私に彼は振り返る。
眉間に皺を寄せながら。
何かとても怒っているみたい。
「そんな。
何か事情があったんですよ。」
「何が事情か。」
そう言った彼の顔に言葉を無くす。
何というか、とても寂しい顔だったから。
険悪な雰囲気。
店の周りだけがやけに明るく感じた。
私達のそんなやりとりを見て、
男の子は小さく言った。
「ごめんなさい‥。
ぼくがはぐれちゃったから。」
それに私達は、一時仲裁された形になった。
「‥別に、お前謝ることないね。」
そう言って、
男の子の頭をたどたどしく撫でる。
その手は少し、震えていた。
その時、
「あ!お母さん!」
男の子はそう言いながら、両親の元へ駆け出した。
「どうもすみませんでした。
ずっと探していたんだけど見つからなくて。」
母親と父親が、申し訳なさそうにしきりに頭を下げた。
「いえ、無事に会えて何よりです。」
私はそう言い、男の子と別れる。
「お姉ちゃんありがとう!
あと、怖いお兄ちゃんも!」
とそう言いながら手を元気に振っている。
「こら!
どうも本当にありがとうございました。」
そう言いながら、
家族は手を繋いで帰っていった。
「‥怖いは余計ね。」
そう言いながら、家族を眺める彼の顔は、さっきよりももっとずっと寂しそうだ。
彼に何があったんだろう。
そんな彼に、私は何を言えばいいんだろう。
「さ。買い直し。今日は本当に散々ね。」
さっきの顔はもう何処かに消えてしまい、
いつもの彼に戻っていた。
「ですね。まだ何にも買えてないし。」
「カートだけは私が選ぶね。」
力無く笑い、先を歩く彼の背は、
いつもよりも小さく見えた。
布団、どれにしますか。」
サイズは当然シングルを選ぶにしても、他にも材質やなんやと色々種類が置いていた。
「どれでもいいね。嵐選べ。」
「どれでもいいって。
とりあえず、これとかどうですか。」
彼用に、掛け布団と敷布団がセットになっているものを指差した。
「じゃ、それ。」
とちゃんと見ないでそれを掴む。
「張り合いないな。
あ、カート。取ってきますね。」
先に用意しておくべきだったが、
すっかり忘れていた。
「待っててください。そこだから。」
私は早足でその場を離れた。
「カートカート。あ、あそこだ。」
と、数人の間を潜りそれを手にとろうとした。
その時、服を引っ張られた気がして振り返る。
見ると、小さな男の子が泣きそうな顔で私の側に立っていた。
「どうしたの?」
「おかあさん、どこ。」
と私の服をギュッと掴んで、その子は尋ねる。
成る程、迷子である。
私はその場にしゃがみ込み、男の子に視線を合わせる。
「どんな服を着ているかとか分かるかな?」
「‥わかんない。」
辺りを見回して見ても、周りはカップルや若い人ばかり。
生憎お母さんと呼ばる人は何処にも居ない。
とりあえず放送してもらうか。
カートを戻して立ち上がり、男の子に手を差し伸べる。
「お母さん一緒に探そっか。」
「ん‥。」
男の子の手は、暖かく湿っていて、
なんだかとても心もとない。
「大丈夫だからね。」
そう言って笑うと
少しは安心してくれたようだ。
さて、とりあえず係員の人を探そうと足を踏み出す。
「何してるか。」
「あ。」
痺れを切らして迎えにきた彼が、
私、そしてその少し下の方にいる男の子に視線を落とす。
「えらく珍しいカートだな。」
「違います。」
こんな時にふざけなくても。
「迷子ね。」
分かってるなら最初からそう言え。
彼をひと睨みしつつ私も返す。
「とりあえず、
係員の人に放送してもらおうと思って。」
「お前、名前は。」
男の子を見下ろしながら彼は聞く。
そんな見方したら、絶対怖いに決まっている。
「えっ。」
案の定。
出会った頃私でもびっくりしたぐらいであるその威圧感に、
小さな子供が耐えられるわけはない。
「何か、お前名前ないのか。」
それを知ってか知らずか詰め寄る彼。
男の子はすくみ上がり、私の背中に隠れてしまった。
「もう、そんな聞き方するからですよ。
ごめんね。お兄ちゃん怖いよね。」
「な。」
“お兄ちゃん”と呼ばれたのが嫌だったのか、それとも“怖い”が心外だったのか。
彼は非難の声を上げた。
「とりあえず、
お店の人の所一緒に行こうね。」
そう言って、どうにか3人で歩き出す。
「もう何も言わんね。」
彼はそっぽを向いて不機嫌そうだ。
これではどちらが子供かわからない。
スタッフに事情を説明し、店内放送を流してもらうことになった。
しかし、ここはデパートではないので、迷子を預けておく場所はない。
1人で待つのはさぞかし心細いだろうと、迎えに来るのを待つことにした。
「放といても大丈夫ね。
子供は勝手に逞しくなる。」
どうやら彼は子供が苦手らしかった。
面倒臭いとでもいうように、彼はその場を離れようとする。
「そんな無責任ことできませんよ。」
「無責任なのは親ね。
ちゃんと見てたらこうならない。」
制した私に彼は振り返る。
眉間に皺を寄せながら。
何かとても怒っているみたい。
「そんな。
何か事情があったんですよ。」
「何が事情か。」
そう言った彼の顔に言葉を無くす。
何というか、とても寂しい顔だったから。
険悪な雰囲気。
店の周りだけがやけに明るく感じた。
私達のそんなやりとりを見て、
男の子は小さく言った。
「ごめんなさい‥。
ぼくがはぐれちゃったから。」
それに私達は、一時仲裁された形になった。
「‥別に、お前謝ることないね。」
そう言って、
男の子の頭をたどたどしく撫でる。
その手は少し、震えていた。
その時、
「あ!お母さん!」
男の子はそう言いながら、両親の元へ駆け出した。
「どうもすみませんでした。
ずっと探していたんだけど見つからなくて。」
母親と父親が、申し訳なさそうにしきりに頭を下げた。
「いえ、無事に会えて何よりです。」
私はそう言い、男の子と別れる。
「お姉ちゃんありがとう!
あと、怖いお兄ちゃんも!」
とそう言いながら手を元気に振っている。
「こら!
どうも本当にありがとうございました。」
そう言いながら、
家族は手を繋いで帰っていった。
「‥怖いは余計ね。」
そう言いながら、家族を眺める彼の顔は、さっきよりももっとずっと寂しそうだ。
彼に何があったんだろう。
そんな彼に、私は何を言えばいいんだろう。
「さ。買い直し。今日は本当に散々ね。」
さっきの顔はもう何処かに消えてしまい、
いつもの彼に戻っていた。
「ですね。まだ何にも買えてないし。」
「カートだけは私が選ぶね。」
力無く笑い、先を歩く彼の背は、
いつもよりも小さく見えた。