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車は私と彼を乗せ、
とりあえず道を走っている。
「‥車、持ってたなんて知りませんでした。」
窓を見ながら、なんとなく話す。
景色がどんどん変わっていく。
「いや、フィンから借りた。」
そうだったのか。
ペーパードライバーにしては、
割と丁寧な運転だと思う。
「嵐は、持てないか。」
「はい。というか免許もまだ。」
駅はそう遠くはないし、
こういう日を除いては不便することもあまりない。
それに何と言っても経済面において、
今の私にはちょっと不可能だ。
「嵐は取らない方がいいな。」
「どうしてですか。」
「きと車だと、泥まみれではすまないね。」
とまた可笑しそうに笑っている。
しまった、またからかわれてしまった。
「仕事で必要だったんですか。」
私はそれを黙殺し、後部座席に置かれたスーツに目をやりながら聞く。
ネクタイはつけていなかったし、
前に言っていた市民講座か何かだろうか。
「ん。まぁちょとな。」
濁すような彼の言い方が引っかかったが、
それよりも彼の少しやつれたような横顔の方が気になった。
そんなに仕事、きつかったのかな。
「あの、大丈夫ですか?」
「何がか。」
「だいぶ疲れてるみたいだから。」
信号にさしかかり、車は止まる。
彼は黙ってタバコに火をつけ、
窓を開けて煙を吐いた。
またあの顔だ、静かで、悲しい。
“寂寞”
そしてまた、私の中で何かが込み上げる。
「車でデートは初めてか?」
発進したと同時に彼は言う。
「な。」
デートって、これはただの買い出しだろう。
「ハハ、やぱりからかい甲斐あるな。」
「やめて下さい。」
もしかして、
またはぐらかされてしまったのか。
悔しい気持ちで悶々としていると、
彼が再び話題を変えた。
「ところで、この辺何あるか。」
「え、知ってたんじゃないんですか。」
てっきり道は分かってると思っていた。
だって、何も言わずに走るんだから。
「いや、嵐が知てると思たからテキトーに走てたね。」
「じゃ、なんで出す前に聞かないんですか。
この辺ならニコリかIKOA‥。」
と頭に今の道と、目ぼしい店を検討しながら答える。
「どれが何だかさぱり分からん。」
そう言いながらも、
車は“テキトー”に走り出したままだ。
「あ、ちょ!どっち行くにしてもそっち右!」
「ハハ、急がば回れてよく言うね。」
「回りすぎです!だから今のとこ!」
「嵐の“今”は遅過ぎるね。」
「あー!もう!だからっ!」
本当にこれで着くのかしら。
とりあえず道を走っている。
「‥車、持ってたなんて知りませんでした。」
窓を見ながら、なんとなく話す。
景色がどんどん変わっていく。
「いや、フィンから借りた。」
そうだったのか。
ペーパードライバーにしては、
割と丁寧な運転だと思う。
「嵐は、持てないか。」
「はい。というか免許もまだ。」
駅はそう遠くはないし、
こういう日を除いては不便することもあまりない。
それに何と言っても経済面において、
今の私にはちょっと不可能だ。
「嵐は取らない方がいいな。」
「どうしてですか。」
「きと車だと、泥まみれではすまないね。」
とまた可笑しそうに笑っている。
しまった、またからかわれてしまった。
「仕事で必要だったんですか。」
私はそれを黙殺し、後部座席に置かれたスーツに目をやりながら聞く。
ネクタイはつけていなかったし、
前に言っていた市民講座か何かだろうか。
「ん。まぁちょとな。」
濁すような彼の言い方が引っかかったが、
それよりも彼の少しやつれたような横顔の方が気になった。
そんなに仕事、きつかったのかな。
「あの、大丈夫ですか?」
「何がか。」
「だいぶ疲れてるみたいだから。」
信号にさしかかり、車は止まる。
彼は黙ってタバコに火をつけ、
窓を開けて煙を吐いた。
またあの顔だ、静かで、悲しい。
“寂寞”
そしてまた、私の中で何かが込み上げる。
「車でデートは初めてか?」
発進したと同時に彼は言う。
「な。」
デートって、これはただの買い出しだろう。
「ハハ、やぱりからかい甲斐あるな。」
「やめて下さい。」
もしかして、
またはぐらかされてしまったのか。
悔しい気持ちで悶々としていると、
彼が再び話題を変えた。
「ところで、この辺何あるか。」
「え、知ってたんじゃないんですか。」
てっきり道は分かってると思っていた。
だって、何も言わずに走るんだから。
「いや、嵐が知てると思たからテキトーに走てたね。」
「じゃ、なんで出す前に聞かないんですか。
この辺ならニコリかIKOA‥。」
と頭に今の道と、目ぼしい店を検討しながら答える。
「どれが何だかさぱり分からん。」
そう言いながらも、
車は“テキトー”に走り出したままだ。
「あ、ちょ!どっち行くにしてもそっち右!」
「ハハ、急がば回れてよく言うね。」
「回りすぎです!だから今のとこ!」
「嵐の“今”は遅過ぎるね。」
「あー!もう!だからっ!」
本当にこれで着くのかしら。