日光の猿
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家に帰り、
また例のごとく彼は床にゴロンと寝転んだ。
いつもなら、
そこからすぐ寝息が聞こえてくる筈だったが、
今日はそれは聞こえてこない。
「眠れませんか?」
私はベッドに横たわったまま、
暗い部屋の中で声を出す。
それを聞き、
目の端に小さく動く影と衣擦れの音が聞こえた。
「さき寝たからね。多分。」
やはり、彼は起きていた。
「いつも‥」
あの歌を歌うんですか、と言おうとしたが、
やっぱり何故か切り出せない。
「‥仕事、大変なんですか。」
と私は質問をすり替えた。
「別に。どれもバイトみたいなもんね。」
「どんな仕事してるんですか。」
「お前、今日は何かいろいろ聞いてくるね。」
「巧言令色ですから。」
あれはそういう意図で言ったわけではないと分かっていたが、
何か返したくなったのだ。
「‥嫌なこと教えたね。」
と言いながらも、
彼の言葉は少しも暗さを帯びていなかった。
「どんなて、色々ね。文章書いたり、
市民講座したり、あとお前の大学。
空きコマの時、講義したり。」
だから、水曜以外も学校にいたのか。
「他にも授業持ってたんですか。」
「いや、たまによ。
お前のとこ国際科あるだろ。」
「成る程。」
「あっちで大学行ってたんでしょう?」
公に講義をするぐらいだ、
心理学を専攻しているんだろうと
当然の質問をしたつもりだった。
しかし、彼はこう告げた。
「学校、ワタシ行たことないね。」
「え?本当ですか?」
まさか。
今の時代、そんなのってあり得るのだろうか。
「そんなの嘘ついてなんの得になるか。」
「まぁ、そりゃそうですけど。
心理学か何か、
専攻してると思ってましたから。」
それには答えず、「窓、開けるね。」
と私に指示した。私もそれに応じる。
夜の風はさっきよりも冷たくて、静かだ。
彼はタバコに火をつけてから一息つき、
それから口早に言った。
「ワタシ17まで施設で育た。
そこでちょと習た。あとは独学。」
端的に言う彼の表情は暗がりであまりよく分からない。
施設、17、独学。
その単語が頭を巡り、私は何も言えなくなる。
沈黙を破るように彼は明るく声を出した。
「日本人、資格があれば信頼するな。
ユー●ャンは便利ね。」
「どこの回しもんですか。」
ていうか、それだけで簡単に雇ううちの大学って‥。
「でも、教授の知り合いって。」
「ああ、あれ嘘ね。
ただ呑み屋で知り合ただけ。
代講見つからんて言うからそれで。」
‥大丈夫なのか、うちの学校。
それにしても、彼は何故日本に来たんだろう。
彼がこんなにも影を落とすのはどうして何だろう。
1つ分かれば疑問が増える。
「さ。もう寝るね。」
と言ってタバコを消し、再び床に伏せた。
「おやすみなさい。」
私もそう言って、窓を閉めた。
また例のごとく彼は床にゴロンと寝転んだ。
いつもなら、
そこからすぐ寝息が聞こえてくる筈だったが、
今日はそれは聞こえてこない。
「眠れませんか?」
私はベッドに横たわったまま、
暗い部屋の中で声を出す。
それを聞き、
目の端に小さく動く影と衣擦れの音が聞こえた。
「さき寝たからね。多分。」
やはり、彼は起きていた。
「いつも‥」
あの歌を歌うんですか、と言おうとしたが、
やっぱり何故か切り出せない。
「‥仕事、大変なんですか。」
と私は質問をすり替えた。
「別に。どれもバイトみたいなもんね。」
「どんな仕事してるんですか。」
「お前、今日は何かいろいろ聞いてくるね。」
「巧言令色ですから。」
あれはそういう意図で言ったわけではないと分かっていたが、
何か返したくなったのだ。
「‥嫌なこと教えたね。」
と言いながらも、
彼の言葉は少しも暗さを帯びていなかった。
「どんなて、色々ね。文章書いたり、
市民講座したり、あとお前の大学。
空きコマの時、講義したり。」
だから、水曜以外も学校にいたのか。
「他にも授業持ってたんですか。」
「いや、たまによ。
お前のとこ国際科あるだろ。」
「成る程。」
「あっちで大学行ってたんでしょう?」
公に講義をするぐらいだ、
心理学を専攻しているんだろうと
当然の質問をしたつもりだった。
しかし、彼はこう告げた。
「学校、ワタシ行たことないね。」
「え?本当ですか?」
まさか。
今の時代、そんなのってあり得るのだろうか。
「そんなの嘘ついてなんの得になるか。」
「まぁ、そりゃそうですけど。
心理学か何か、
専攻してると思ってましたから。」
それには答えず、「窓、開けるね。」
と私に指示した。私もそれに応じる。
夜の風はさっきよりも冷たくて、静かだ。
彼はタバコに火をつけてから一息つき、
それから口早に言った。
「ワタシ17まで施設で育た。
そこでちょと習た。あとは独学。」
端的に言う彼の表情は暗がりであまりよく分からない。
施設、17、独学。
その単語が頭を巡り、私は何も言えなくなる。
沈黙を破るように彼は明るく声を出した。
「日本人、資格があれば信頼するな。
ユー●ャンは便利ね。」
「どこの回しもんですか。」
ていうか、それだけで簡単に雇ううちの大学って‥。
「でも、教授の知り合いって。」
「ああ、あれ嘘ね。
ただ呑み屋で知り合ただけ。
代講見つからんて言うからそれで。」
‥大丈夫なのか、うちの学校。
それにしても、彼は何故日本に来たんだろう。
彼がこんなにも影を落とすのはどうして何だろう。
1つ分かれば疑問が増える。
「さ。もう寝るね。」
と言ってタバコを消し、再び床に伏せた。
「おやすみなさい。」
私もそう言って、窓を閉めた。