部屋に戻り、2人で温め直した親子丼をゆっくりと食べる。

「うまい。」
彼は大きな口でそれを頬張る。

元気になって良かった。
そう思って私も笑顔になる。

どんな夢を見ていたのか、それはやはり聞かない方がいいだろう。

「じゃ、やるか。」

「何をですか。」

「講義に決まてるだろ。
その為に飯、喰わせてもらてる。」

当然の筈のその言葉に、
どうしてだか胸に靄がかかる。

「そう‥でした。」

本当にそうだ、なのに何だろう。
ただ、そこに居るのが私には当たり前になっていた。

「何からだたか。」

そう言われ、頭を切り替えて、言葉を返す。
「えっと、こないだは脱線して哲学が何であるかとかそういうこと。
その次は私が泣いてしまって‥。」

昨日の失態を思い出し、羞恥が込み上げる。

「ハハ、そだた。あれはちょとだけ焦たな。」
と面白そうにあの時のことを掘り起こそうとする。

「やめてくださいって。」

「今日は本筋、“中国哲学”についてね。中国哲学はそれよりも中国思想の見方から話した方が難しくないし、きと面白い。」

と彼の講義が始まる。