鍋はあごだしに限るらしい
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グツグツグツ。
冷え切った体に土鍋から上がる湯気は癒しの効果抜群だ。
「‥出来ましたが。」
「汁はあごだしか。」
「そんなものはありません。」
さっきの押し問答がどうなったかと言うと。
完全完敗不完全燃焼。
呪うぞと最低30回は脅され、挙句「部屋にあげないと明日からお前の家はめちゃくちゃになるぞ」とまで言われる始末。
こちらが折れるしかなかった。
こうして、自称名もない中国人(聞いても茶化されたのだ。)
を一晩泊めることになった。
しかも夕食付きで。
1DKというかほぼ、四畳半のこのボロい部屋は私のベットやら小さな机やらで占拠されているので広くない。
ホカホカの土鍋を手に部屋に戻る。
と、男は敷いてある座布団にも座らず私の部屋をキョロキョロ見渡している。
「あの、勝手にじろじろ人の部屋見ないでもらえますか。」
「お前の部屋。」
「‥何でしょう。」
「女の匂いしないね。」
だいぶ失礼な奴だな。
「そうですか。
では、このお鍋は私1人でいただきます。」
と勝手に1人で食べ始める。
「お前、モテたことないだろ。」
そう言いながら、机の前にドスンと座る。
本当に失礼な奴だな。
豚バラは全て私のものだ。
「ええ、
そんな経験一度もありませんが何か?」
今までそれでなんの不安も不満もなく過ごしてきたのだ。
何が悪い。
私はこれからもずっと1人で生きていきたいと思っている。
親元も離れ、一切援助を受けずに学校に通い、貧しいがそれでもこうして暖かいお鍋をつつける程度には余裕がある。
それで生きていって何が悪いのだ。
「それで生きていて何が悪いかて顔してるな。」
小皿に白菜やら大根やらをよそいながら彼は話す。
意表を突かれて内心ビビる。
‥何だこの人。
「ハハ、今度は何だこの人て顔してるね。」
「‥まさか‥超能力とか‥」
「お前、バカか。」
大きな口でそれらを放り込んで咀嚼する。
豪快なのに、綺麗な食べ方だ。
どんどん彼が野菜を奪うので、
私も応戦して具をよそる。
そしてあっという間に空になった。
最後のシメはやっぱり雑炊だ。
薄黄色の出汁をすすりながら、私は聞く。
「‥あの。さっきのことなんですけど。」
「何か。」
「いや、別に何でもないです。」
「聞きたいこと聞かないとそのうち毒が回て死ぬことになるね。」
ま、どでもいいけど。
と言いながら彼は最後のひとすくいをする。
「あー。食た食た。」
ドサッっとその場に横たわる。
と、ほぼ同時に聞こえてくる寝息。
の●太くんかお前は。
そう思いながら、食器を片付ける。
不毛な仕打ちも、
今日我慢すれば終わるのだ。
明日からは普通の毎日だ。
自分に言い聞かせ、蛇口をひねる。
その時、何かが聞こえてきた。
最初は風のようだと思った。
しかし、それは歌だということが分かった。
彼が歌っているのだ。
起きてるのかと思い近づくと、
どうやらそれは寝言だったらしい。
この場合、寝言というより寝歌だろうか。
小さく、掻き消えそうなそれは、
遥か彼方から聞こえてくる様に思えた。
窓から見える月が揺れて。
一瞬、フワッと宙に浮いた様な感覚になった。
この歌は、何だろう。
彼が歌い終わるまで、
ずっと私は聞いていた。
山青水明幽静静
湖心飄来风悴
行呀行呀 进呀进
冷え切った体に土鍋から上がる湯気は癒しの効果抜群だ。
「‥出来ましたが。」
「汁はあごだしか。」
「そんなものはありません。」
さっきの押し問答がどうなったかと言うと。
完全完敗不完全燃焼。
呪うぞと最低30回は脅され、挙句「部屋にあげないと明日からお前の家はめちゃくちゃになるぞ」とまで言われる始末。
こちらが折れるしかなかった。
こうして、自称名もない中国人(聞いても茶化されたのだ。)
を一晩泊めることになった。
しかも夕食付きで。
1DKというかほぼ、四畳半のこのボロい部屋は私のベットやら小さな机やらで占拠されているので広くない。
ホカホカの土鍋を手に部屋に戻る。
と、男は敷いてある座布団にも座らず私の部屋をキョロキョロ見渡している。
「あの、勝手にじろじろ人の部屋見ないでもらえますか。」
「お前の部屋。」
「‥何でしょう。」
「女の匂いしないね。」
だいぶ失礼な奴だな。
「そうですか。
では、このお鍋は私1人でいただきます。」
と勝手に1人で食べ始める。
「お前、モテたことないだろ。」
そう言いながら、机の前にドスンと座る。
本当に失礼な奴だな。
豚バラは全て私のものだ。
「ええ、
そんな経験一度もありませんが何か?」
今までそれでなんの不安も不満もなく過ごしてきたのだ。
何が悪い。
私はこれからもずっと1人で生きていきたいと思っている。
親元も離れ、一切援助を受けずに学校に通い、貧しいがそれでもこうして暖かいお鍋をつつける程度には余裕がある。
それで生きていって何が悪いのだ。
「それで生きていて何が悪いかて顔してるな。」
小皿に白菜やら大根やらをよそいながら彼は話す。
意表を突かれて内心ビビる。
‥何だこの人。
「ハハ、今度は何だこの人て顔してるね。」
「‥まさか‥超能力とか‥」
「お前、バカか。」
大きな口でそれらを放り込んで咀嚼する。
豪快なのに、綺麗な食べ方だ。
どんどん彼が野菜を奪うので、
私も応戦して具をよそる。
そしてあっという間に空になった。
最後のシメはやっぱり雑炊だ。
薄黄色の出汁をすすりながら、私は聞く。
「‥あの。さっきのことなんですけど。」
「何か。」
「いや、別に何でもないです。」
「聞きたいこと聞かないとそのうち毒が回て死ぬことになるね。」
ま、どでもいいけど。
と言いながら彼は最後のひとすくいをする。
「あー。食た食た。」
ドサッっとその場に横たわる。
と、ほぼ同時に聞こえてくる寝息。
の●太くんかお前は。
そう思いながら、食器を片付ける。
不毛な仕打ちも、
今日我慢すれば終わるのだ。
明日からは普通の毎日だ。
自分に言い聞かせ、蛇口をひねる。
その時、何かが聞こえてきた。
最初は風のようだと思った。
しかし、それは歌だということが分かった。
彼が歌っているのだ。
起きてるのかと思い近づくと、
どうやらそれは寝言だったらしい。
この場合、寝言というより寝歌だろうか。
小さく、掻き消えそうなそれは、
遥か彼方から聞こえてくる様に思えた。
窓から見える月が揺れて。
一瞬、フワッと宙に浮いた様な感覚になった。
この歌は、何だろう。
彼が歌い終わるまで、
ずっと私は聞いていた。
山青水明幽静静
湖心飄来风悴
行呀行呀 进呀进