それから、「もう他に教える気になれない」と彼がすね出し、特別講義は休講となった。

ゆっくりと粥を食べ、微睡む。

彼も「今日は疲れた。」と言ってタバコを吸っている。

そんな彼の背中に
「童顔ですね。」
と言ったら、「うるさい」といって睨まれた。

だけど全然怖くない。

少しだけ、彼が近くなった気がして自然に頬が緩む。

そこで始まる「なぜなにどうして」

その時、彼が私に渡すものがあったことを思い出す。

「あの、そういえば、渡したいものってなんですか。」

もう何本目かのタバコに火をつける彼に聞く。

「ああ、あれは‥。」
と彼は何か歯に絹を着せる。

「何ですか？」
彼はこっちを一向に向かうとしない。

「だから、その、あれね。
教室出る時、あまりにも辛気臭そな顔してたから。」

「してたから？」

「その‥。
後で喝いれてやろと思たら失敗した。」

「はぁ？」
何だそれは。

「それって、元気付けようとしてくれたって事ですか。」

いつもならきっと怒るはずなのに、
素直に返してしまう。


「‥ま、そね。」

そう言ってガチガチとライターを擦り上げるが火は一向に出てこない。

「もしかして照れてるとかないですよね。」

「馬鹿嵐。」

彼がポツリとそう言って、漸くライターに火が灯る。