鍋はあごだしに限るらしい
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「はっ!なっなんでしょう!」
動揺して、声がうわずる。
「お前、ここ住んでるか?」
不自然なその話し方に、
すぐにこの国の人間でないことが分かる。
見た感じからして中国系だろうか。
落ち着いてその男の外観を見ると、
なかなか綺麗な顔立ちをしていた。
背は自分よりやや低いが、
サラサラの黒髪に、尖ったような鋭い瞳はさして大きくもないのに吸い込まれそうだ。
髪も瞳も、自分と同じ色なのに
それぞれの顔の細かい造形で、
やっぱりこの人は日本人ではないと思った。
そこまで考えて、我に帰る。
「あの、住んでますが何でしょうか。」
自分はこの男に面識はないつもりだし、
万が一あったとして記憶にはない。
「私を訪ねた友人」と思いたいが、
自分の大学における姿勢を一から回想して見てそんな人物は居るはずないと思い直す。
男はずっとこっちを見つめ、
黙りこくっている。
何かを考えているようだ。
正直気まずいし、早く部屋に入ってあったまりたい。
今日はお鍋なのに。
「あの‥」
我慢できなくなり、声をかける。
何か用ですか。
と聞こうとしたが、彼には自分の言う言葉の続きを理解したらしく
「ああ、ワタシ鍵落としてしまたね。」
と言った。
ということは、
このアパートに住んでいるのか。
若いのにこんなところに住むなんて、自分以外いないと思っていたので驚きだった。
この人もお金がないのだろうか。
だとしたら、紛失時、鍵を新しく変更することで発生する料金は手痛いだろうと想像する。
「はぁ、それは御愁傷様で。」
とりあえず同情する。
「でもなんで私の部屋の前にいるんですか?」
そして思っていた疑問をとりあえず返す。
だって怖いし。
「管理人に連絡しても、留守電で出ないね。ここ開かないと入れない。」
と指差した扉は、私の隣の部屋だった。
「え、ここに住んでらっしゃるんですか?」
「そうよ。」
と一瞬怪訝そうな顔をして、彼は答える。
全然気づかなかった。
だって、トイレでも廊下でもすれ違ったことなど一度もない。
「それでお前、今晩泊めてくれないか。」
「え。」
今なんと言ったのだろう。
「今晩泊めてくれないか。と言たね。」
今度ははっきり聞こえたので、こちらもはっきりと返す。
「無理です。見ず知らずの男性を部屋に上げることは出来かねます。」
それはそうだ。
学校の中には、簡単にそういうのを許す人も少なくないが、
##NAME1##自身名前も知らない男をあげる義理も度胸もない。
しかし、野放しにするにはいささか良心が痛むので
「他を当たったらどうですか。
下の階の人とか。」
と提案してみる。
この古ぼけたアパートにでも住民の1人や2人ぐらい居るだろう。
見たことは一度もないが。
「このアパート、お前とワタシしか住んでないね。」
と彼が話す。
やっぱりか。
案の定の答えが返ってくる。
ていうか、ここの経営大丈夫なのか。
「では、友人や恋人の家にでも。」
と再び提案。
「そんなもの居ないね。」
と返される。
「ネカフェや、カプセルホテルなんてどうでしょうか。」
「金ないね。」
玉砕。
八方塞がりとはこの事である。
いい加減に疲れと寒さでどうにかなりそうだ。
自分の良心と手足のかじかみを天秤にかける。
(神のご加護があらんことを‥。)
かじかみの方が勝った様だ。
自分も随分優しくないな。
申し訳なさを少し持ちつつ、
会釈して自分のドアを開ける。
と、背後に気配。
さっきよりもずっと近い。
「あの‥」
「ワタシ、この国、知らないね。
名もない中国人ね。」
「名前ぐらいあるでしょう。」
さっきより言葉が話せてない。
これもわざとだ、きっと。
「右も左もわからないね。」
「それが分かるからここに居るんですよね。」
なんて図々しい。
「きっと明日になれば、全てが解決する筈ですから!
それではおやすみなさい!」
と言って扉を開け、素早く自分だけ入ろうとする。
ガッ!
という音が聞こえたかと思うと、
ドアを閉めることを片腕で阻止されていると気づく。
この人‥力強い‥。
「ちょ!やめてください!
私、今日お鍋なんですから!」
「ハハ、ワタシもお鍋好きよ。
出汁はあごだしで取るといいね。」
「いや、知らないっていうか入ってる!足入ってる!」
せき止められた扉の隙間から、ぐんぐん侵入してくる彼。
はたから見たら、セールスマンとそれを断る主婦と言ったところか。
「お前、曲がりなりにもワタシお隣さんよ。
このまま放置してワタシが死にでもしたら
一生のろて毎晩お前のベドに出てやるね。」
と物凄い剣幕で言われる。
そんな顔で言うと、
なんか本気で呪われそうだ。
怖い哀しい辛い顔。
動揺して、声がうわずる。
「お前、ここ住んでるか?」
不自然なその話し方に、
すぐにこの国の人間でないことが分かる。
見た感じからして中国系だろうか。
落ち着いてその男の外観を見ると、
なかなか綺麗な顔立ちをしていた。
背は自分よりやや低いが、
サラサラの黒髪に、尖ったような鋭い瞳はさして大きくもないのに吸い込まれそうだ。
髪も瞳も、自分と同じ色なのに
それぞれの顔の細かい造形で、
やっぱりこの人は日本人ではないと思った。
そこまで考えて、我に帰る。
「あの、住んでますが何でしょうか。」
自分はこの男に面識はないつもりだし、
万が一あったとして記憶にはない。
「私を訪ねた友人」と思いたいが、
自分の大学における姿勢を一から回想して見てそんな人物は居るはずないと思い直す。
男はずっとこっちを見つめ、
黙りこくっている。
何かを考えているようだ。
正直気まずいし、早く部屋に入ってあったまりたい。
今日はお鍋なのに。
「あの‥」
我慢できなくなり、声をかける。
何か用ですか。
と聞こうとしたが、彼には自分の言う言葉の続きを理解したらしく
「ああ、ワタシ鍵落としてしまたね。」
と言った。
ということは、
このアパートに住んでいるのか。
若いのにこんなところに住むなんて、自分以外いないと思っていたので驚きだった。
この人もお金がないのだろうか。
だとしたら、紛失時、鍵を新しく変更することで発生する料金は手痛いだろうと想像する。
「はぁ、それは御愁傷様で。」
とりあえず同情する。
「でもなんで私の部屋の前にいるんですか?」
そして思っていた疑問をとりあえず返す。
だって怖いし。
「管理人に連絡しても、留守電で出ないね。ここ開かないと入れない。」
と指差した扉は、私の隣の部屋だった。
「え、ここに住んでらっしゃるんですか?」
「そうよ。」
と一瞬怪訝そうな顔をして、彼は答える。
全然気づかなかった。
だって、トイレでも廊下でもすれ違ったことなど一度もない。
「それでお前、今晩泊めてくれないか。」
「え。」
今なんと言ったのだろう。
「今晩泊めてくれないか。と言たね。」
今度ははっきり聞こえたので、こちらもはっきりと返す。
「無理です。見ず知らずの男性を部屋に上げることは出来かねます。」
それはそうだ。
学校の中には、簡単にそういうのを許す人も少なくないが、
##NAME1##自身名前も知らない男をあげる義理も度胸もない。
しかし、野放しにするにはいささか良心が痛むので
「他を当たったらどうですか。
下の階の人とか。」
と提案してみる。
この古ぼけたアパートにでも住民の1人や2人ぐらい居るだろう。
見たことは一度もないが。
「このアパート、お前とワタシしか住んでないね。」
と彼が話す。
やっぱりか。
案の定の答えが返ってくる。
ていうか、ここの経営大丈夫なのか。
「では、友人や恋人の家にでも。」
と再び提案。
「そんなもの居ないね。」
と返される。
「ネカフェや、カプセルホテルなんてどうでしょうか。」
「金ないね。」
玉砕。
八方塞がりとはこの事である。
いい加減に疲れと寒さでどうにかなりそうだ。
自分の良心と手足のかじかみを天秤にかける。
(神のご加護があらんことを‥。)
かじかみの方が勝った様だ。
自分も随分優しくないな。
申し訳なさを少し持ちつつ、
会釈して自分のドアを開ける。
と、背後に気配。
さっきよりもずっと近い。
「あの‥」
「ワタシ、この国、知らないね。
名もない中国人ね。」
「名前ぐらいあるでしょう。」
さっきより言葉が話せてない。
これもわざとだ、きっと。
「右も左もわからないね。」
「それが分かるからここに居るんですよね。」
なんて図々しい。
「きっと明日になれば、全てが解決する筈ですから!
それではおやすみなさい!」
と言って扉を開け、素早く自分だけ入ろうとする。
ガッ!
という音が聞こえたかと思うと、
ドアを閉めることを片腕で阻止されていると気づく。
この人‥力強い‥。
「ちょ!やめてください!
私、今日お鍋なんですから!」
「ハハ、ワタシもお鍋好きよ。
出汁はあごだしで取るといいね。」
「いや、知らないっていうか入ってる!足入ってる!」
せき止められた扉の隙間から、ぐんぐん侵入してくる彼。
はたから見たら、セールスマンとそれを断る主婦と言ったところか。
「お前、曲がりなりにもワタシお隣さんよ。
このまま放置してワタシが死にでもしたら
一生のろて毎晩お前のベドに出てやるね。」
と物凄い剣幕で言われる。
そんな顔で言うと、
なんか本気で呪われそうだ。
怖い哀しい辛い顔。