「水曜日まで来れない」という彼の宣言通り、特別講義はおあずけとなった。

今日はその水曜日。
彼の授業がある日だ。

アラームが鳴り、
いつもように起きようとしても、
身体が重くて起き上がれない。

そのまま布団で考える。

あれから学校や銭湯へ行く時、あの小さな人影を探したけれど見つけることはできなかった。


自分でも矛盾している自覚はある。
けれど似た様な人を見ると確認せずにはいられない。

それ以外にもあの手の感触や、顔が何をしている時もチラつく。

「なんなのよ。」

一体何者なのだろう。

仕事はちゃんとしてるって言ってたけど、講師以外にも何かしていることがあるのだろうか。
年齢不詳だし。

それに、どうして彼は私に色んなことを教えてくれるのだろうか。

自分が詳しいから？
暇だったから？

なんなんだ。

ここ二日、そんなことばかり考えている。
最後にあの涙を思い出して
その回想は終了する。

気になるなら聞けばいいのに。

いっそ今度聞いてみようか。

そう思い、やめる。
彼には踏み込めない何かがある。
それに、自分は他人に踏み込む様なことはしたくない。

出会って一週間ほどしか経ってないのにな。

これ程まで誰かのことが気になることなんてなかったのに。

なんでこんなに
悩まなくちゃいけないんだろう。

嫌だな。

気づけば、もう3時間もそうしていた。

朝ごはんでも食べようと、
のそりと起き上がる。