数日のあれこれ
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いつの間にか夜になり、
今日も今日とて“特別講義”
今日の献立は関西風(奴の指示で。)きつねうどんとおむすびだ。
「こないだまでは陰陽マークのあれこれについて話したな。覚えてるか。」
「はい。相互依存の関係にあって、バランスが大事でっていうアレですよね。それと、昨日のが五行思想の仕組みのあれこれ、本来土曜が休みだったとかなんとか。」
「大まかすぎるけど、まぁいいね。
お前意外と飲み込み早いな。」
というか毎日なのだから忘れるわけない。
「ま、今日はちょと脱線して別の話するね。」
そう言って、うどんをズルズル啜り、油揚げを噛み取る。
「脱線してもいいんですか。」
「ワタシも同じ様な話ばかりは疲れるね。」
「それはどうもすみません。」
うどんを2人で啜る。
「お前、悩みあるか。」
丼から顔を上げて彼が言う。
「なんですかいきなり。
そりゃ、ないと言えば嘘になりますけど‥。」
「じゃ、哲学とは何かわかるか?」
「え、なん‥でしょう。」
「人は考える葦(あし)である。」
「パスカルですね。」
「そうね。人間は脳味噌がでかい分考える頭が身についた。
それは“悩む能力がついた”と言える。」
「世の中には
悩まないと言う人も居ますが。」
おむすびにパクつきながら話す。
具はたらこだ。
「そうね、本来悩みなんて実在しないね、ヘビが自分のとぐろの巻き方について絶望するか?アリが自分の小ささに悲観するか?」
「それは‥どちらにもなったことがないので分かりません。」
「ハハ、面白い答えね。
実際ワタシも分からない。」
何が言いたいんだ。
「でもきと“どうして”と思うことなんて、人間以外にはない能力ね。
どうして生まれてきたのか
どうして生きていけばいいか
他の動物なら“生殖活動”
これ一つで片付いたりすることが人間には難しい。」
「はぁ。どうしてでしょうか。」
「それを考えるのが“哲学する”てことね。まぁ暇人の遊びよ。人間の奢りね。実際死ぬ目にあたらそんな事考える暇なんてないね。」
そう言う彼の目に、一瞬暗い色が宿った気がした。
「哲学は奢りだと?」
「いや、そう言うわけではないね。
お前は中間であることを覚え方がいいね。」
彼が三つ目のおむすびを頬張る。
「‥中間?」
「あれがダメ、これがイイということではないてこと。」
どうやら具は梅干しだったようで「すぱい」と顔を歪めた。
「はぁ。」
「ごちそさん。」と言って例のごとく流し台へと運ぶ。
彼が食べ終えたら講義が終わるというルーチンがどちらかともなく身についた。
「なんだかわからなくなってきちゃいます。」
自分の分を食べ終えたので、
流しに持っていく。
「ハハ、お前は若いね。
別にそんなの考えなくてもいい。」
と言ってまた私の頭を撫でる。
体に似合わず大きな白い手。
「だから何歳なんですか。」
恥ずかしさでヤケになり尋ねる。
「教えてほしいか?」
ニヤリとムカつく笑顔を向ける。
「まぁ、割と。」
「気が向いたら教えてやる。」
と流された。
なんで全然教えてくれないんだろ。
まぁ、別にいいか。
「じゃ、帰るね。」
「あ、どうもお気をつけて。」
と一応玄関まで見送る。
扉を開けた時「あ、そだ。」と何か思い出したように振り返る。
「次の水曜まで、ワタシ家来れないね。」
「仕事か何かですか。」
「ま、そんなとこね。」
と何か歯に挟まる言い方をした。
何だろう。
どうしたのか聞こうとするが、やめる。
彼はただのお隣さん。
たまたま講師で、たまたま色んなことを教わっているだけ。
そう自分に言い聞かせる。
自制心自制心。
黙りこくっている私に
「さみしいか?」
と彼が意地悪そうに笑う。
その顔を見ていると心の中がざわざわして、口が勝手に動いてしまう。
「さみしいのかもしれません。」
これには自分でも驚いた。
彼も面食らった顔をしている。
鳩が豆鉄砲を食らった様な。
「フッ!アハハ!」
初めて見る彼の表情に思わず吹き出す。
「なっ何がおかしいか。」
動揺した顔、ますます笑える。
「いや、だって!びっくりした顔、初めてみたから!アハハッ似合わないっ!」
笑いすぎて目に涙を浮かべながら答える。
「ムカつく奴ね。」
そう言いながら、私の頬を両手で包んだ。
また心臓が軋む。
冷たい彼の筋張った手。
動悸が激しくなる。
それから急に、頬を左右に引っ張られる。
「いひゃいでふ。」
「ハハ、変な顔。」
優しい顔で微笑む彼。
笑うと眉間のシワも無くなる。
綺麗な顔だな。
彼の手を掴み引き剥がす。
「痛いですってば。」
ゴツゴツした彼の手の感触に、
ますます胸が痛くなった。
今日も今日とて“特別講義”
今日の献立は関西風(奴の指示で。)きつねうどんとおむすびだ。
「こないだまでは陰陽マークのあれこれについて話したな。覚えてるか。」
「はい。相互依存の関係にあって、バランスが大事でっていうアレですよね。それと、昨日のが五行思想の仕組みのあれこれ、本来土曜が休みだったとかなんとか。」
「大まかすぎるけど、まぁいいね。
お前意外と飲み込み早いな。」
というか毎日なのだから忘れるわけない。
「ま、今日はちょと脱線して別の話するね。」
そう言って、うどんをズルズル啜り、油揚げを噛み取る。
「脱線してもいいんですか。」
「ワタシも同じ様な話ばかりは疲れるね。」
「それはどうもすみません。」
うどんを2人で啜る。
「お前、悩みあるか。」
丼から顔を上げて彼が言う。
「なんですかいきなり。
そりゃ、ないと言えば嘘になりますけど‥。」
「じゃ、哲学とは何かわかるか?」
「え、なん‥でしょう。」
「人は考える葦(あし)である。」
「パスカルですね。」
「そうね。人間は脳味噌がでかい分考える頭が身についた。
それは“悩む能力がついた”と言える。」
「世の中には
悩まないと言う人も居ますが。」
おむすびにパクつきながら話す。
具はたらこだ。
「そうね、本来悩みなんて実在しないね、ヘビが自分のとぐろの巻き方について絶望するか?アリが自分の小ささに悲観するか?」
「それは‥どちらにもなったことがないので分かりません。」
「ハハ、面白い答えね。
実際ワタシも分からない。」
何が言いたいんだ。
「でもきと“どうして”と思うことなんて、人間以外にはない能力ね。
どうして生まれてきたのか
どうして生きていけばいいか
他の動物なら“生殖活動”
これ一つで片付いたりすることが人間には難しい。」
「はぁ。どうしてでしょうか。」
「それを考えるのが“哲学する”てことね。まぁ暇人の遊びよ。人間の奢りね。実際死ぬ目にあたらそんな事考える暇なんてないね。」
そう言う彼の目に、一瞬暗い色が宿った気がした。
「哲学は奢りだと?」
「いや、そう言うわけではないね。
お前は中間であることを覚え方がいいね。」
彼が三つ目のおむすびを頬張る。
「‥中間?」
「あれがダメ、これがイイということではないてこと。」
どうやら具は梅干しだったようで「すぱい」と顔を歪めた。
「はぁ。」
「ごちそさん。」と言って例のごとく流し台へと運ぶ。
彼が食べ終えたら講義が終わるというルーチンがどちらかともなく身についた。
「なんだかわからなくなってきちゃいます。」
自分の分を食べ終えたので、
流しに持っていく。
「ハハ、お前は若いね。
別にそんなの考えなくてもいい。」
と言ってまた私の頭を撫でる。
体に似合わず大きな白い手。
「だから何歳なんですか。」
恥ずかしさでヤケになり尋ねる。
「教えてほしいか?」
ニヤリとムカつく笑顔を向ける。
「まぁ、割と。」
「気が向いたら教えてやる。」
と流された。
なんで全然教えてくれないんだろ。
まぁ、別にいいか。
「じゃ、帰るね。」
「あ、どうもお気をつけて。」
と一応玄関まで見送る。
扉を開けた時「あ、そだ。」と何か思い出したように振り返る。
「次の水曜まで、ワタシ家来れないね。」
「仕事か何かですか。」
「ま、そんなとこね。」
と何か歯に挟まる言い方をした。
何だろう。
どうしたのか聞こうとするが、やめる。
彼はただのお隣さん。
たまたま講師で、たまたま色んなことを教わっているだけ。
そう自分に言い聞かせる。
自制心自制心。
黙りこくっている私に
「さみしいか?」
と彼が意地悪そうに笑う。
その顔を見ていると心の中がざわざわして、口が勝手に動いてしまう。
「さみしいのかもしれません。」
これには自分でも驚いた。
彼も面食らった顔をしている。
鳩が豆鉄砲を食らった様な。
「フッ!アハハ!」
初めて見る彼の表情に思わず吹き出す。
「なっ何がおかしいか。」
動揺した顔、ますます笑える。
「いや、だって!びっくりした顔、初めてみたから!アハハッ似合わないっ!」
笑いすぎて目に涙を浮かべながら答える。
「ムカつく奴ね。」
そう言いながら、私の頬を両手で包んだ。
また心臓が軋む。
冷たい彼の筋張った手。
動悸が激しくなる。
それから急に、頬を左右に引っ張られる。
「いひゃいでふ。」
「ハハ、変な顔。」
優しい顔で微笑む彼。
笑うと眉間のシワも無くなる。
綺麗な顔だな。
彼の手を掴み引き剥がす。
「痛いですってば。」
ゴツゴツした彼の手の感触に、
ますます胸が痛くなった。