どちらもあるからそれが有る
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フライパンからチリチリと音がして、鯖が焼ける匂いが漂う。
今日は鯖のムニエルとパスタ。
昨日買ったしめじを使っておきたいからだ。
「うまそね。」
彼が横から私の手元を除く。
「あっちで待っててもらえますか。」
「お前、飯作るのだけはうまいな。」
と失礼発言を繰り出す。
「だけって何ですか。だけって。」
「ハハ、
眉間に皺、寄せると運気が逃げるね。」
と自分のこめかみを指して言う。
「自分はどうなんですか。」
よく皺、寄せるくせに。
「それぐらいで逃げる運気なんか逃しとけばいいね。」
「では、私も逃します。」
そう言うと、可愛くないと言って部屋に戻る。
そしてさっき彼が投げたあの本を取る。
「お前、これどこで知た。」
どきりとする。
あのライターから気になったなんて絶対に言えない。
「いえ、別に何となく気になったんです。」
我ながら下手くそな嘘だと思うが彼にはバレず「そか。」と一言言われただけだった。
そうこうしてるうちに、料理が出来る。
インスタントのスープもつけて、机に運ぶ。
「じゃ、食いながらでも話してやるね。」
と言って
それから謎の講義が始まる。
「お前、どこまで知てる。」
パスタをフォークに綺麗に巻きつけながら彼は言う。
机の横にはあの本が広げられている。
「どこまでって、そのマークの名前と、中国哲学にはいろいろあるってことぐらい。あとは半分も理解できてません。」
もぐもぐと鯖を食べながら答える。
「ま、お前にはそれは早すぎるからな。」
本を顎で指して言う。
どういう意味だ。
「とりあえず、陰陽マークの意味ぐらいから話すね。」
そう言って本を寄せ、あのマークが大きく書かれたところを見せる。
「これは名前の通り、
陰と陽が描かれてる図ね。中国では割とポピュラーなマークよ。
下に下がてる黒の部分が陰。
上に上がる白いほうが陽。
それぞれプラスとマイナスだと考えれば分かりやすいね。」
「この真ん中の小さな丸はなんなんですか。」
白の部分には黒、黒の部分には白の小さな点があることに疑問を持ち尋ねる。
「いい質問ね。」
鯖を突き刺して、うまいと一言付け足す。
「これは、いわば相互依存の関係にあると言われてるね。」
「相互依存‥ですか。」
「この黒と白を日常のものに置き換えて考えてみるね。
例えるなら、
夜と昼、奇数と偶数。
夜が暗いから朝が明るいと思うし、
奇数がなければ偶数という概念も生まれないだろ。」
なんとなく理解できた。
「で、これはそういうのを表したマークなんですか?」
しめじを掬い、口に運ぶ。
「世の中には全てバランスがあると説いたマークね。
どちらもなくてはどちらの存在もなくなる。」
コンソメスープをズルズル啜り、彼が話す。
「自分よりチビを見ると、自分がデカく感じたりするだろ。
もしこの世にワタシしかいなかたら、チビと言われることもなくなるね。」
なんだその例え。
やっぱり背が低いの気にしてたんだ。
でも、さっきの本よりも分かりやすい。
そこは講師だな。と素直に感心する。
「じゃ、今回はここまで。」
と言って皿を流し台に運んでいく。
いつの間に食べ終えたのだろう。
ジャーっと水を流して皿を洗っている。
そこは割と行儀がいいのだ。
「もっと教えてくれないんですか。」
もっと込み入った話をするのかと思っていたので拍子抜けだった。
「意欲的な姿勢は感心するね。
けど詰め込みすぎると訳わからなくなる。お前馬鹿だしな。」
忘れていた、こいつを見直す必要はない。
そうして彼を睨む。
彼は私の方に近づき、
「ハハ、また明日ね。」
と行って頭に手を置き、
ポンポンと軽く上下させる。
その時、心臓が音を立てる。
「漫画読めよ。」
と言ってパタンと扉が閉まった。
彼が行ったあとも、
その音は全然鳴り止まなかった。
今日は鯖のムニエルとパスタ。
昨日買ったしめじを使っておきたいからだ。
「うまそね。」
彼が横から私の手元を除く。
「あっちで待っててもらえますか。」
「お前、飯作るのだけはうまいな。」
と失礼発言を繰り出す。
「だけって何ですか。だけって。」
「ハハ、
眉間に皺、寄せると運気が逃げるね。」
と自分のこめかみを指して言う。
「自分はどうなんですか。」
よく皺、寄せるくせに。
「それぐらいで逃げる運気なんか逃しとけばいいね。」
「では、私も逃します。」
そう言うと、可愛くないと言って部屋に戻る。
そしてさっき彼が投げたあの本を取る。
「お前、これどこで知た。」
どきりとする。
あのライターから気になったなんて絶対に言えない。
「いえ、別に何となく気になったんです。」
我ながら下手くそな嘘だと思うが彼にはバレず「そか。」と一言言われただけだった。
そうこうしてるうちに、料理が出来る。
インスタントのスープもつけて、机に運ぶ。
「じゃ、食いながらでも話してやるね。」
と言って
それから謎の講義が始まる。
「お前、どこまで知てる。」
パスタをフォークに綺麗に巻きつけながら彼は言う。
机の横にはあの本が広げられている。
「どこまでって、そのマークの名前と、中国哲学にはいろいろあるってことぐらい。あとは半分も理解できてません。」
もぐもぐと鯖を食べながら答える。
「ま、お前にはそれは早すぎるからな。」
本を顎で指して言う。
どういう意味だ。
「とりあえず、陰陽マークの意味ぐらいから話すね。」
そう言って本を寄せ、あのマークが大きく書かれたところを見せる。
「これは名前の通り、
陰と陽が描かれてる図ね。中国では割とポピュラーなマークよ。
下に下がてる黒の部分が陰。
上に上がる白いほうが陽。
それぞれプラスとマイナスだと考えれば分かりやすいね。」
「この真ん中の小さな丸はなんなんですか。」
白の部分には黒、黒の部分には白の小さな点があることに疑問を持ち尋ねる。
「いい質問ね。」
鯖を突き刺して、うまいと一言付け足す。
「これは、いわば相互依存の関係にあると言われてるね。」
「相互依存‥ですか。」
「この黒と白を日常のものに置き換えて考えてみるね。
例えるなら、
夜と昼、奇数と偶数。
夜が暗いから朝が明るいと思うし、
奇数がなければ偶数という概念も生まれないだろ。」
なんとなく理解できた。
「で、これはそういうのを表したマークなんですか?」
しめじを掬い、口に運ぶ。
「世の中には全てバランスがあると説いたマークね。
どちらもなくてはどちらの存在もなくなる。」
コンソメスープをズルズル啜り、彼が話す。
「自分よりチビを見ると、自分がデカく感じたりするだろ。
もしこの世にワタシしかいなかたら、チビと言われることもなくなるね。」
なんだその例え。
やっぱり背が低いの気にしてたんだ。
でも、さっきの本よりも分かりやすい。
そこは講師だな。と素直に感心する。
「じゃ、今回はここまで。」
と言って皿を流し台に運んでいく。
いつの間に食べ終えたのだろう。
ジャーっと水を流して皿を洗っている。
そこは割と行儀がいいのだ。
「もっと教えてくれないんですか。」
もっと込み入った話をするのかと思っていたので拍子抜けだった。
「意欲的な姿勢は感心するね。
けど詰め込みすぎると訳わからなくなる。お前馬鹿だしな。」
忘れていた、こいつを見直す必要はない。
そうして彼を睨む。
彼は私の方に近づき、
「ハハ、また明日ね。」
と行って頭に手を置き、
ポンポンと軽く上下させる。
その時、心臓が音を立てる。
「漫画読めよ。」
と言ってパタンと扉が閉まった。
彼が行ったあとも、
その音は全然鳴り止まなかった。