陰と陽

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朝になり、アラームが鳴って私は目を覚ます。

今朝は冬の訪れを告げるような寒さで肩がすくむ。

床に目をやると、布団はきちんと畳まれて、昨日と同じくそこに彼はいなかった。

彼の不在に落胆する自分に気づく。

振り切るように起き上がり、いつものように朝食をとる。

いつものように。いつものように。

今日の授業は2限からだ。

テレビで天気のチェックをし、しばらく微睡んでから服を着替え、外に出る。

彼の部屋になんとなく視線を向ける。

やはりそこは静まり返り、
人の気配はない。

「どこ行っちゃったんだろ。」

何を言っているんだろう。
どこに行ったっていいじゃないか。

彼と私はただのお隣さん。
そして、たまたま代行の講師だ。

昨日完成させた課題を入れたか確認して、学校に向かう。

何人もの生徒とすれ違いながら掲示板を確認する。

「あ、休講。」

空きができてしまった。

「やりぃ。パチンコ行こう。」

「お茶しよう」
という声が聞こえ、
皆足早に何処かへと消える。

その時ばかりは楽しみがあっていいなと他の生徒が羨ましくなる。

私は暇をつぶすものがない。

仕方がないので図書館にでも寄ろうと決める。

ギィッと重たい扉を開けると、暖かい空気が包んでくれる。

広い絨毯貼りの部屋に、机がいくつか点在し、それを取り囲むようにたくさんの本が棚の中に置かれている。

レポートをまとめる者、仮眠をとる者、読書する者。

その中で、自分は何をしようかと考える。

本‥あまり読まないんだけど。

手持ち無沙汰で色んな棚を物色する。

ティーン向け雑誌、エッセイ、恋愛、古代史、美術史、そこまで物色し、
やはり興味のそそるものがないと諦める。

参考書でも探すか‥。
そう思い、心理学、哲学とプレートが貼られた本棚に向かう。

どうせ、私にはこれしかすることがない。

ずっと前からの夢なのだ。
空いている時間にも、知識を蓄えなくては。


そこで一つの本に目が止まる。

「‥このマーク。」

あのライターに掘られていたマークがその表紙に大きく書かれている。

「陰陽家と中国哲学」と書かれたその本。

「中国哲学か。」
聞き覚えはあるが、詳しくは知らないとページをめくる。

1ページ目には、大きくそのマークが描かれており、その下に説明書きがされている。

「太陰太極図」(たいいんたいきょくず)
この図は古代中国において流行し、道教のシンボルとなった。
白黒の勾玉を組み合わせたような意匠となっており、中国ではこれを魚の形に見立て、陰陽魚と呼んでいる。
黒色は陰を表し右側で下降する気を意味し、白色は陽を表し左側で上昇する気を意味する。


次のページをめくると
そこは目次になっていて、
儒家、墨家、法家、道家、農家、名家
と見なれない文字が並ぶ。

最後の行に「陰陽家」と言うものがあり、その項を開いてみる。


陰陽家(いんようか)は諸子百家の一つで、六家の一つに数えられる思想集団である。世界の万物の生成と変化は陰と陽の二種類に分類されると言う陰陽思想を説いた。代表的な思想家として騶衍(すうえん、(鄒衍と表記する場合もある)や、公孫発などが挙げられる。後、戦国時代末期に五行思想と一体となった陰陽五行思想として東アジア文化圏に広まった。

と書いてあった。

なんだかよく分からずに本を閉じる。

このマークは彼と何か深い関係があるのだろうか。

あの悲しそうな顔と涙を思い浮かべ、そう考える。

いや、そこまで踏み込む道理は何もない。
そう思い、本を元の場所に返そうとする。

が、やっぱり気になって気づけば貸出コーナーに向かいその本を借りてしまった。
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