鍋はあごだしに限るらしい
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疲れた。
大学生というのは、
どうしてああも自分の人生が輝いて特別だと疑わないのだろう。
どうしてああも毎日を意欲的に取り組めるのだろう。
そしてどうしてその意欲を勉学にはまるで向けないのだろう。
自分も同じ「大学生」という肩書きでいるのに
は何故かその「大学生」達の気持ちがついぞ理解できなかった。
両親の反対を押し切っての進学。
自分で選んだ道なのに、こんなにも気が重いのは何故だろう。
最近、毎日頭の中で巡る言葉をぐるぐる回し、
ぼんやりと自分の家へと足を向ける。
大学から徒歩15分。
「カナリ荘」
冗談みたいな名前のアパートに嵐は住んでいる
家賃48,000円
風呂なし、水道トイレ共同。
築四十年だと言うそのアパートは、
昭和のフォークソング時代の風景そのまんまだ
今時そんなアパートに住んでいるなんて、他の学生には考えられないことだろう。
これで、とっくりのセーターとベルボトム、
下駄なんか履いて近所の銭湯なんか向かったらと考えて、嵐は少し笑えるのだった。
しかし、学費も生活費も奨学金も全て自分でまかなっている以上、
ここ以外に住めるところなどない。
とりあえず、帰って夕食の支度だな。
そう思い、冷蔵庫には何があったかと考える。
豚バラ肉、白菜、大根‥も昨日買ってあったっけ
「今日はお鍋だな。」
冬にはまだ遠いが、夜は肌寒く何か温かいものが食べたい。
アパートの階段を上がる。
さすが築四十年だけあって、ギシギシと音を立て、今にも崩れ落ちそうだ。
嵐はいつか、この階段が抜けて死にやしないかと思っているぐらいだ。
ゆっくり慎重に階段を上りきり、自分の部屋に入ろうと鍵を出した瞬間、
声をかけられた。
「おい。」
びっくりした。
だって気配なんて全然なかったから。
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