そこまで食って委員会
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
2人分のお茶を淹れ、適当に買って置いたお菓子もつけて運ぶ。
そういえば、
こんなことをしたのは初めてだと気づく。
私には家を訪ねる友人も恋人もいない。
誰かと食事をしたのだって、昨日の鍵事件で久しぶりのことだった。
「できましたよ。」
それらを机の上に置く。
彼はそれに気づく様子もなく、さっき私が差し出したライターを見つめている。
「そのライター。
なんか大切なものなんですか。」
気になって尋ねる。
それで、漸く私の存在に気づいたのか、顔を上げる。
「いや、別に。もうオイルもないしね。」
と言いながらパキンッと音をさせてそれをつけてみせる。
親指で何度擦りあげても、それは乾いた音がするだけだ。
「じゃあ、
なんでそんなに見つめてるんですか。」
ますます疑問だ。
しかし、彼はそれには答えず、
茶の方へ目をやる。
「うまそね。」
「あ、どーぞ。それ飲んでちゃちゃっと出てってくださいね。」
と念を押す。
「冷たい女は嫌いね。」
と彼は茶を啜りながら言う。
「嫌われれば本望ですので。」
ピシャリと言い、
それから課題を片付けてしまおうと机の半分を使う。
それに彼は目を向ける。
「そか、お前私の授業の生徒だたね。」
「正確には“代行してる授業”でしょう。」
こいつが本教授だったらこの授業は取らなかった。絶対に。
「ハハ、可愛げないね。」
「あ、お茶飲みました?
それではさようなら。」
「おかわり。」
それには無視して黙々と作業を始める。
「お前、心理学に興味あるか。」
と茶受けの饅頭を口にしながらそう呟く。
「ええ、カウンセラーになりたいので。」
手を動かしながら、簡潔にそう説明する。
どうせ彼も
「なれっこない」などと言うのだろう。
だが、そんな台詞は嫌という程聞いてきた。
「お前なんかになれるわけない。」
「あなた、お金がかかるのよ?
どこか手堅いところで働いて、
結婚するのが1番幸せなのよ?」
みんな口々にそう言うのだ。
どうしてそんなこと
言われなくちゃならないの?
昔のじめじめした思い出が頭に浮かんで、気が重くなりペンを置く。
「どした、疲れたか。」
と言って饅頭を差し出す。
私はそれを奪って、尋ねてみる。
「なれっこないとか言わないんですか。」
「なぜか?」
彼は不思議そうに私を見つめ、それから急須に手を伸ばし、茶を注ぐ。
「なぜって‥。みんなそう言うから。」
小さくそう呟く私を、
彼は目を離さず見ている。
「お前がなれるかどかなんて、
ワタシに分からないね。」
「それはそうですけど。」
「ま、頑張るといいね。」
そう言って、二つ目の饅頭を口に入れながら、「甘すぎる」と顔をしかめる。
嫌なら食べなければいいのに。
ふーん。
言わないんだ。
「頑張るといいね。」か。
ふむ。
黙りこくってなかなか饅頭に手をつけない私の口に、
「早く食え」と言って彼は無理やり押し込む。
驚きながらも咀嚼したそれは、
優しく丸い味がした。
そういえば、
こんなことをしたのは初めてだと気づく。
私には家を訪ねる友人も恋人もいない。
誰かと食事をしたのだって、昨日の鍵事件で久しぶりのことだった。
「できましたよ。」
それらを机の上に置く。
彼はそれに気づく様子もなく、さっき私が差し出したライターを見つめている。
「そのライター。
なんか大切なものなんですか。」
気になって尋ねる。
それで、漸く私の存在に気づいたのか、顔を上げる。
「いや、別に。もうオイルもないしね。」
と言いながらパキンッと音をさせてそれをつけてみせる。
親指で何度擦りあげても、それは乾いた音がするだけだ。
「じゃあ、
なんでそんなに見つめてるんですか。」
ますます疑問だ。
しかし、彼はそれには答えず、
茶の方へ目をやる。
「うまそね。」
「あ、どーぞ。それ飲んでちゃちゃっと出てってくださいね。」
と念を押す。
「冷たい女は嫌いね。」
と彼は茶を啜りながら言う。
「嫌われれば本望ですので。」
ピシャリと言い、
それから課題を片付けてしまおうと机の半分を使う。
それに彼は目を向ける。
「そか、お前私の授業の生徒だたね。」
「正確には“代行してる授業”でしょう。」
こいつが本教授だったらこの授業は取らなかった。絶対に。
「ハハ、可愛げないね。」
「あ、お茶飲みました?
それではさようなら。」
「おかわり。」
それには無視して黙々と作業を始める。
「お前、心理学に興味あるか。」
と茶受けの饅頭を口にしながらそう呟く。
「ええ、カウンセラーになりたいので。」
手を動かしながら、簡潔にそう説明する。
どうせ彼も
「なれっこない」などと言うのだろう。
だが、そんな台詞は嫌という程聞いてきた。
「お前なんかになれるわけない。」
「あなた、お金がかかるのよ?
どこか手堅いところで働いて、
結婚するのが1番幸せなのよ?」
みんな口々にそう言うのだ。
どうしてそんなこと
言われなくちゃならないの?
昔のじめじめした思い出が頭に浮かんで、気が重くなりペンを置く。
「どした、疲れたか。」
と言って饅頭を差し出す。
私はそれを奪って、尋ねてみる。
「なれっこないとか言わないんですか。」
「なぜか?」
彼は不思議そうに私を見つめ、それから急須に手を伸ばし、茶を注ぐ。
「なぜって‥。みんなそう言うから。」
小さくそう呟く私を、
彼は目を離さず見ている。
「お前がなれるかどかなんて、
ワタシに分からないね。」
「それはそうですけど。」
「ま、頑張るといいね。」
そう言って、二つ目の饅頭を口に入れながら、「甘すぎる」と顔をしかめる。
嫌なら食べなければいいのに。
ふーん。
言わないんだ。
「頑張るといいね。」か。
ふむ。
黙りこくってなかなか饅頭に手をつけない私の口に、
「早く食え」と言って彼は無理やり押し込む。
驚きながらも咀嚼したそれは、
優しく丸い味がした。