オンボロアパートの自室の扉に到着した時
ホッとしている自分に気づく。

やっと帰ってきた。
大学生活も3年目に差し掛かるが、慣れるということは一向に訪れず
なんというかいつも“戦闘体制”が解けない。

それでなくとも今日は、
まさに怒涛の１日だった。


戸の鍵穴に鍵を差し込み、右に回した時、
いつもはカチャリと音を立てるそれが
今日は空回りしたことに違和感を覚える。

しまった。出かける時に鍵をかけ忘れていたようだ。

不用心だ。気をつけなきゃ。
そう自分を律し
まぁ、こんな古ぼけたアパートに
空き巣など早々あるわけないだろうと思いながらもおそるおそる扉を開けた。

とその時、あってはいけない光景が広がっていた。

「よ。」

手をひらひらさせて出迎えるそいつは、

あの名もなき中国人
人の心に土足で上がり込む失礼な隣人

「何やってんですか！」

「いや、管理人からまだ連絡つかないね。
困たなーと思って、お前の部屋に行ったらたまたま空いてた。ものは試しね。」

「そんなもん試さないでくださいよ。」

「まぁ、そんなとこで突っ立ってないで
ささと入るね。茶くらい入れてやる。」

「誰のうちだと思ってるんですか」


私は脱力し、自室の玄関で呆然とする。