海
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いつか家具を買いに行った時のように彼は迷ったりせず、
知っている道だというみたいに、
すいすい車を進めていった。
そうして着いた場所は
「さむ‥」
「そうだな。」
海だった。
冬の海は初めてだけど、
そこには案の定誰1人としておらず、
灰色の空をそのまま反映させたように濁った水面が揺らいでいる。
冬の海は風が強い。
それなのに彼は、
寒さも風も感じないみたいにただひたすら歩いていく。
私も負けじと着いていくけれど、
彼と同じペースでは到底歩けそうにない。
浜辺の中腹まで来たあたりで、
ようやく彼は立ち止まった。
誰もいない海。
そう聞けばロマンチックだろうけど、
このロケーションはどちらかといえば
武士が決闘をする時に近い気がする。
「ここに来るのは3回目ね。」
彼が海をじっと見ながら口を開いた。
「嵐に会てから2回目だな。」
海から目を離さずに話す彼は、
私に対してというよりも
自分に向かって確認するみたいな口調をしていた。
彼のその眼差しは、
口にするのも胸が痛むぐらい寂しそうだった。
もしかしたら、
“会いたい奴”を思い出しているのかもしれない。
海を見ながらなんてなんてドラマみたいな奴だと心の中でからかってみるものの、
そんなことより、
“その相手”を思って傷ついている自分への情けなさが強まった。
再び黙ってしまった彼をよそに
私は考えを巡らせていた。
その人との思い出の場所なのだろうか、
それとも彼が母国にいた頃だろうか。
そもそも、
どうして私を連れて来たのだろう。
告白への同情?
それともしばらく一緒にいた情かしら。
「百面相。」
何度目かの同じ台詞を口にして、
彼はまた笑いかける。
切なそうな彼の顔。
彼の表情が中途半端に分かってしまう自分が歯痒かった。
誰かがいるかもしれないのに、
どうして私に笑うのだろう。
「嵐。」
もうそんな声で、
私を呼ぶのはやめてほしい。
思わず下を向いた私に、
続けて彼は声をかける。
「本当は連れて来るつもりなかた。」
私はそっと顔を上げる。
風のせいで髪がなびいて、
彼の顔がよく見えた。
細くて綺麗な眉、鼻の形、
パッと見では分からないけど、
それはサラリとさりげなく美しい。
「ーけど、ワタシ。」
その顔が歪み、彼は再び言葉を失う。
まただ。
彼は、何と闘っているのだろう。
何をそんなに耐えているのだろう。
この表情を私はいつ見ても慣れることができない。
彼の辛さの比ではないが、
その塊が私の胸にも飛び込んで来たように苦しくなってしまう。
それでも彼は闘って、
何かを言葉にしようとしている。
もう耐えられない。
無理なんてしないでほしい。
「宿題、まだでしたよね。」
何も言わなくていい。
私のせいでそんなに苦しそうな顔をするのなら
はぐらかして、からかって、
笑ってくれる方がよっぽどいい。
そうして彼の言葉を遮ることが
正解だったのかは分からないけど。
「そうだたな。」
そう言って、
彼は少しだけ笑ってくれた。
暫くの間、しゃがんだり歩いたりしながら2人で海を見つめた後で、
「帰るか。」と彼は言った。
結局何の為に来たのか分からず仕舞いだったなと腰を上げ、
車を停めた場所へと歩き出す。
歩きながら彼は何でもないというように話した。
「その宿題のことだけどな。」
「はい。」
「教えてやるの時間掛かりそうね。
だから、待てろ。」
その言葉が少し引っかかったが、
私は何にも言わなかった。
その後で、何故ちゃんと聞いておかなかったのかと後悔することになるなんて、
その時の私はちっとも思っていなかった。
知っている道だというみたいに、
すいすい車を進めていった。
そうして着いた場所は
「さむ‥」
「そうだな。」
海だった。
冬の海は初めてだけど、
そこには案の定誰1人としておらず、
灰色の空をそのまま反映させたように濁った水面が揺らいでいる。
冬の海は風が強い。
それなのに彼は、
寒さも風も感じないみたいにただひたすら歩いていく。
私も負けじと着いていくけれど、
彼と同じペースでは到底歩けそうにない。
浜辺の中腹まで来たあたりで、
ようやく彼は立ち止まった。
誰もいない海。
そう聞けばロマンチックだろうけど、
このロケーションはどちらかといえば
武士が決闘をする時に近い気がする。
「ここに来るのは3回目ね。」
彼が海をじっと見ながら口を開いた。
「嵐に会てから2回目だな。」
海から目を離さずに話す彼は、
私に対してというよりも
自分に向かって確認するみたいな口調をしていた。
彼のその眼差しは、
口にするのも胸が痛むぐらい寂しそうだった。
もしかしたら、
“会いたい奴”を思い出しているのかもしれない。
海を見ながらなんてなんてドラマみたいな奴だと心の中でからかってみるものの、
そんなことより、
“その相手”を思って傷ついている自分への情けなさが強まった。
再び黙ってしまった彼をよそに
私は考えを巡らせていた。
その人との思い出の場所なのだろうか、
それとも彼が母国にいた頃だろうか。
そもそも、
どうして私を連れて来たのだろう。
告白への同情?
それともしばらく一緒にいた情かしら。
「百面相。」
何度目かの同じ台詞を口にして、
彼はまた笑いかける。
切なそうな彼の顔。
彼の表情が中途半端に分かってしまう自分が歯痒かった。
誰かがいるかもしれないのに、
どうして私に笑うのだろう。
「嵐。」
もうそんな声で、
私を呼ぶのはやめてほしい。
思わず下を向いた私に、
続けて彼は声をかける。
「本当は連れて来るつもりなかた。」
私はそっと顔を上げる。
風のせいで髪がなびいて、
彼の顔がよく見えた。
細くて綺麗な眉、鼻の形、
パッと見では分からないけど、
それはサラリとさりげなく美しい。
「ーけど、ワタシ。」
その顔が歪み、彼は再び言葉を失う。
まただ。
彼は、何と闘っているのだろう。
何をそんなに耐えているのだろう。
この表情を私はいつ見ても慣れることができない。
彼の辛さの比ではないが、
その塊が私の胸にも飛び込んで来たように苦しくなってしまう。
それでも彼は闘って、
何かを言葉にしようとしている。
もう耐えられない。
無理なんてしないでほしい。
「宿題、まだでしたよね。」
何も言わなくていい。
私のせいでそんなに苦しそうな顔をするのなら
はぐらかして、からかって、
笑ってくれる方がよっぽどいい。
そうして彼の言葉を遮ることが
正解だったのかは分からないけど。
「そうだたな。」
そう言って、
彼は少しだけ笑ってくれた。
暫くの間、しゃがんだり歩いたりしながら2人で海を見つめた後で、
「帰るか。」と彼は言った。
結局何の為に来たのか分からず仕舞いだったなと腰を上げ、
車を停めた場所へと歩き出す。
歩きながら彼は何でもないというように話した。
「その宿題のことだけどな。」
「はい。」
「教えてやるの時間掛かりそうね。
だから、待てろ。」
その言葉が少し引っかかったが、
私は何にも言わなかった。
その後で、何故ちゃんと聞いておかなかったのかと後悔することになるなんて、
その時の私はちっとも思っていなかった。