丹桂王国の妹姫
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セーラースターファイターは、お姉さまの守護戦士の一人。
強くて真っ直ぐでキレイで、子供の悪戯に付き合ってくれるようなお茶目なところもあって、スターライツの中では、一番表情豊かな人だった。
私が語ることができるのは、この星が平和だった頃のファイターだけ。
お姉さまを追って地球に赴き、帰ってきてからの彼女は、時々、私の知らない顔をする。
胸が締め付けられるような表情で遠くを見ていることが増えた。
声をかければいつもの顔で振り向いてくれるけど、それがなんだか切なくて。
以前のような屈託のない笑顔は、もうずっと見ていない。
私が淋しいのだから、ヒーラーとメイカー、お姉さまは、もっとそうだったに違いない。
ファイターにしてあげられることを、ずっと考えていたのだと思う。
「地球のセーラー戦士の皆様に、御報告と、改めて御礼を。あなたの護衛に、セーラースターファイターを付けます」
「お姉さま……!?」
ファイターの心の一部は、きっとまだ彼の星に残っている。
もう一度会えたら、元気になってくれるだろうか。
考えたことは、もちろんあった。
だけど、セーラームーンにはもう決まった相手がいるから、余計に苦しむだけになることも十分有り得るって、メイカーが。
「正直、どういう結果になるかは、わたしにも分かりません。もしかすると、ファイターをいっそう傷つけるだけかもしれない……。だからこそ、あなたに共に行ってほしいのです」
私が言葉をまとめられずにいるうちに、お姉さまはそう続けた。
「ど、どうして。面識のない私より、お姉さまが同行された方が、先方も嬉しいのでは──」
ようやく落ち着いてきたばかりの国を空けるわけにいかないとはいえ、「あなたに」という部分に何か意味があるように思えてならない。
繕いきれず、やや上ずった声で返すと、お姉さまはきょとんとした様子で首を傾げた。
「もしもファイターが傷つくことがあれば、傍にいたいでしょう? あなた、昔から大好きなのだから」
「……!?」
予想だにしなかった指摘に、なぜそれを、と口を突く。
実際には息が詰まって、初めの一音しか声にならなかった。
瞬く間に体中の熱が集まっていく顔を、慌てて両手で覆い隠す。
なんで知ってるの。
どうして分かったの。
いつから気づいてたの。
今日まで誰にも打ち明けたことなかったのに。
「大切な妹のことですもの。見ていれば分かるわ」
玉を転がすような美しい声が、ほんの少し笑みを含む。
「そう、秘密事だったのね。ヒーラーやメイカーも知っているようだから、二人には話しているのかと思った」
「……ウ、ウソ……」
誰にも打ち明けたことはなかったのに、身近な三人にはあっさり見抜かれていた。
他に優先して考えるべきことがいくらでもあるのに、衝撃で、うまく頭が回らない。
お姉さまの呼ぶ声も次第に遠くなっていき、情けないことに、そのまま気を失ったらしい。
次に目を開けた時には、これ以上はないのではというほどに呆れた顔のヒーラーが、私の傍に付いていた。