丹桂王国の妹姫
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「お姉さま」
瓦礫、炎、見知った人たちの屍。
「このままじゃ、みんな殺されてしまいます。お願い、ここから逃れて」
美しかった宮殿は、見る影もなくなった。
ほんのわずかの間に起こった出来事を、まだ完全に飲み込めてはいない。急速に近づいてくる滅びだけは感じ取れて、私は白い手にすがった。
「ここにいちゃ、ダメ……お姉さまに何かあったら、本当に全部終わっちゃう。──太陽系、青い星──『希望の光』を、見つけて」
お願い、火球おねえさま。
気力を振り絞って言葉を紡ぐと、触れていた手が強く私の手を握り返した。
優しい炎の色をした瞳が苦しげに歪む。それでもしっかりと頷いてくれたことにほっとして……気持ちが緩んだせいか、瞼が落ちてゆくのを、もう止められそうもない。
きっと大丈夫。なんとかなるよ。
ファイターも、ヒーラーも、メイカーもいる。
目には見えなくなっても、私だって一緒にいる。
お姉さまは一人じゃない。
本当は、そう伝えたかった。
◇
目覚めると、優しいまなざしとぶつかった。
リボンが解けるように、心配そうに曇った表情が緩んで、長い指がそっと目元を撫でて離れていく。
「おはよう」
「おはようございます、おねえさま……」
また泣いていたことを知って、発言に反することは理解しつつ、寝台の深くに潜り込もうと試みた。お姉さまが掛布をめくり上げてそれを阻む。
一度滅ぼされたこの星は、火球お姉さまと守護戦士たちを筆頭に、皆の尽力によって。
落命した人々は、混沌を祓った最強のセーラー戦士と、月のプリンセスがもたらした奇跡によって甦り、こうしてまた大切な人と日々を生きることができている。
その幸福の中にあっても、灼き付いた悲しみはそうそう消えてくれないらしい。
あの日の夢を見ては、泣きながら目を覚ます。私の意思にかかわらず、そういうことが繰り返されていた。
まるで幼い子供のようで、恥ずかしい。
たとえ全てが元に戻っても、「何もなかったこと」になるわけじゃない。
頭の中に、ファイターの姿が浮かんだ。
地球での戦いを経て帰星した、お姉さまも含めた四人はみんなどことなく変わったような感じがあったけれど、彼女の変化は目に見えていた。
ヒーラーとメイカーが言っていた。
ファイターは、セーラームーンに恋をしていたんだって。
でも、お姉さまはこう言った。
ファイターは、セーラームーンと恋をしていたんだ、って。