おまけ


「あ、そういうところはあるかも。無理に新しい恋をしなくても、まどかちゃんがめいっぱいお姫さま扱いしてくれたし。一緒にいると、なぜか男の子に声をかけられることもすくなくて済んだし」
「……まぁ、相手があんな『女の子の理想の王子さま』みたいなのだと、現実の男はちょっと分が悪いよねぇ……」
「いっくんがすごく苦い顔してる……」
「うるさい。ゆいかがあんまりあっさり認めるから、ちょっと複雑なだけ」
「……まどかちゃんがいなかったら、ほかの男の子にフラフラしてたのかもしれないよ？　よくある恋愛ものの主人公みたいに」
「あんたの良いところは、アホみたいに俺に一途なところでしょ？」
「他には？」
「折れずに努力をつづけられるところ。見かけによらずけっこう根性があるところも好きだし、俺とちがって誰とでもそれなりに上手くやれるところとか──って、ちょっと。何言わせるわけぇ？」
「えへへ。他でもないいっくんに『一途』って言ってもらえるの、格別に嬉しい。真っ直ぐ生きてきて良かったぁ……♪」
「むしろ、そうじゃないゆいかとか想像がつかない。絶対に見たくないけど」
「私も、『いっくんじゃない男の子を好きになる自分』は上手く想像できないままだったなぁ。『まどかちゃんと仲良く暮らす未来』とかなら、けっこうイメージできるんだけど」
「弱ったところにまんまと付けこまれて、押しに負けて付きあって、何だかんだ情が移るまで余裕で想像できるよ、俺は」
「いっくん、私のことそんな女だと思ってるの……!?　た、たしかにちょっと押しには弱いかもしれないけど。でも、失恋してつらいからって、他の男の子に甘えたりなんて……！　家族とか、女の子の友達ならともかく」
「ふぅん？　優しい言葉をかけられて泣きついたりしなかったの？　よくある恋愛ものの主人公みたいにさ」
「……そういうずるいことしちゃったら、二度といっくんに近寄れない気がしたから」
「……何ていうか……口ほどにもないよねぇ、あんた。いや、俺にとってはめちゃくちゃ都合がいいんだけど。ふつうに大好きじゃん。いっつも思うけど」
「こんなに大好きなのにがんばって忘れようとしてたの、すごいと思わない？」
「涙ぐましいよねぇ。何もかも、無駄な努力だったとしても」
「ふふふ。……嬉しい？　いっくん」
「……うん。チョ～嬉しい」