Schneeweißchen
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まだ眠りの余韻が抜けない、重たい瞼を持ち上げると、寄りで見ても文句のつけようなんてないくらい綺麗な顔が飛びこんできた。
ぼんやりとだけど、目が覚める直前の感覚が残っている。
……いっくんって、寝込みを襲うタイプだったんだ。でも、そういえばむかしから、私がいないとか、いるけど意識がない状況での『デレ』目撃情報はけっこう多かったっけ。
「……ふふふ、白雪姫みたい……♪」
「……どっちかというと眠り姫でしょ、この場合」
居直ったいっくんが「狸寝入りだったわけ?」とやや不機嫌に責めてくる。照れくさいらしい。自分でしたくせに。
「目が覚めるとき、感覚が先に戻ってくることってない?」
「……知らない」
つんとそっぽを向く頰がちょっと赤らんでいて、「かわいい」と思う気持ちを──本人に伝えたら確実に、わりと本気で怒られてしまうので──心のなかにそっと留めた。
「私、さっきまで夢の中で白雪姫だったの」
「……れおくんが変な渾名で呼ぶから。まぁ、いつもみたいなセンス皆無のダッサイやつよりはましかもしれないけど」
「あ、それもあるのかな。直接の原因はたぶん、こっちだと思うけど」
いったい何の撮影だったのか、はっきりとは思いだせないけど、小学生のときに白雪姫の扮装をした写真。
お母さんが送ってきた画像をしばらく眺めたあと、いっくんが尋ねる。
「その夢、俺はちゃんと出てきたの?」
「……たぶんいなかった……と思う。あの話、王子さまは最後に出てくるだけだし」
正直な魔法の鏡はすずちゃんで、見逃してくれる猟師は、なぜか子供時代のなるくん。小人はいま一緒に仕事をしている『ユニット』の子たち。
「ちょうど林檎を齧ったあたりで目が覚めたから、一瞬、本当に白雪姫の気分だった……♪ でも、王子さまのいっくんを見逃したのは、残念だったな」
「……寝惚けたこと言わないでよねぇ。まだ目ぇ覚めてないの?」
「そんなふうに見える? ……じゃあ、もう一回起こしてくれてもいいよ……?」
実際のところ、そんなことないのはいっくんだって承知しているはずだ。本当に寝惚けていたら、自分の発言が恥ずかしくなって目を逸らしたりするなんてことはなさそうなものだし。
寝惚けている、という建前で積極的なことを言ったりして、たまには主導権を取りたかったのにすっかりおじゃんだ。
「──しょうがないなぁ。目、閉じなよ」
私の様子を見ていたいっくんは、すっかり持ち直してしまった。
かるく肩を押されて、新雪みたいにふわふわな寝心地のベッドに逆戻り。
言われたとおりに目を閉じても、どきどきして、とても白雪姫になりきれる心境じゃない。
(あぁでも、血のように赤い頰、ってところだけは、地でいける気がする……いまなら)
火照った頬に触れる指先。
早鐘のように打つ心臓を身のうちに抱えて、私は、王子さまの口づけを待った。
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