Amaryllis
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星見ゆいかは、同じ事務所に所属している年下の女の子である。
今はもう国が定める成人年齢に達した一人前の女性で、『女の子』扱いは失礼なのかもしれないが、初対面時の印象がなかなか抜けない。
それどころか、初恋の男の子と復縁を果たしたここ最近は、それを強めてさえいる。
出会った頃は、美しい微笑の下に、張り詰めたものを抱いた少女だった。
どこか危うさのあったあの頃も綺麗だったけれど、今のほうが生き生きしていてずっと良い。これは、私の個人的見解だ。
「まどかちゃん、まどかちゃん」
「どうした、いやに深刻な顔をして」
「あの、よければ、参考までに教えてほしいんだけど」
「うん?」
「……あ、天城さんって、どういう下着を着けてるか知ってる……?」
「……うん……?」
恥じらいを含んだ囁きが、透き通るような彼女の声とはあまりに噛み合わなくて、思わず聞き返す。
よく見れば、彼女は腕の中に彼のひとの置いて行ったと思しき青年向けの雑誌を抱きしめていた。それか、原因は。
「まずは、私にもわかるよう説明してくれ」
「かくかくしかじか……」
「え~……ボクサーパンツを履いている男性が『節操なし』だと。……ちゃんと『個人の意見です』って書いてるじゃないか、ここに」
「そ、そう……だけど、そうじゃなくて。天城さんって、そのあたりすごくきっちりしたひとだから……あわよくば前例……みたいなものがほしくて……」
「──いっくんがボクサーパンツ派なのか?」
「し、知らない。でも、考えてみれば、いっくんほどのひとが今まで何もなかったわけないよね……!?」
「ゆいかほどの魅力的な子に何もなかったんだから、あり得ない話じゃないだろう」
「そ、そうかな。そうだったらいいなぁ……」
どうやら憂いの本当の理由は、愛しの彼の女性遍歴らしい。
先日、邂逅を果たした──銀髪の美青年を脳裏に描く。
ゆいかがこんなふうにべったり甘えてくるところを見るに、空色の瞳にちらついていた嫉妬は、どうやらうまく隠し通したらしい。
「ゆいかもだけどね、相手も相当だったのよ、ほんとに」と、いつか社長が語ったことに、あの日の私は大いに納得したものだ。
「ともあれ。いくら子供のころからの仲と言っても、下着事情までは知らないな……さすがに」
「そ、そうだよね。ごめんなさい……さっきのことは忘れて?」
「次に会ったら聞いておく」
「うん……え!?」
「冗談」
素直に見張られたおおきな瞳に、堪えきれず笑みが零れる。
彼女は決して迂闊ではない。
常日頃、自分なりに気をつけているのも感じ取れるのだけれど、根が善良なのか、何かと騙されやすくて危なっかしい一面がある。
それを思うと、ああいう警戒心の強そうな子が生涯そばにいてくれるというのは、非常に心強いことだった。
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