Track 01 乱調でスタンダード
霧澤タクトは格納庫にいた。昨日届いた最新鋭の戦闘機をこの目で確認するためだ。
「…これがVOX(ヴォクス)……。」
戦闘機の名は「VOX(ヴォクス)」という。馬鹿みたいに大きくて、本当に飛べるのかと不思議になるくらいだった。
VOXには「アンカー」と呼ばれる戦闘機器が取り付けられている。巨大な規模を集中的に攻撃出来る、言ってみれば大きな光線銃のようなものだと甘粕が言っていた。
それを発動出来るのは、戦闘指揮教官である者のみ。
「麻黄アキラ」
その名を、タクトはすでに知っていた。顔写真入りの資料を甘粕から貰っていたからだ。
「…どうした?こんなところで。」
ふいに声を掛けられて振り返る。タクトにとって馴染み深い声だ。わざわざ振り返らずとも、声の主はわかった。
「どうしても見ておきたいものがあってね。キミこそどこへ行くんだ?」
タクトの振り返った先には、長身で黒髪の青年が立っている。タクトは背があまり高くないので、この青年の隣に並ぶのがあまり好きではない。……自分ではそのことをコンプレックスとして認めてはいないのだが……。
「俺は…山だ……。」
長身で黒髪の青年は、綺麗なガラス玉のようなスカイブルーの瞳でタクトを見ていた。背中にはリュックを背負っている。彼がLAGの裏にある山に行く時にいつも持っていくリュックだ。
「ヨウスケ、今日は朝礼があったはずだが?」
朝礼をサボろうとしているのが目に見えてわかる幼馴染に、タクトは釘をさす。
「……チッ。こんなとこにギターを持って来ているお前に言われたくない。」
タクトが手に持っているギターケースに視線を落としながらヨウスケが抗議した。
「なるほど、もっともな意見だ。」
タクトは階段に座りながらギターケースを開けると、ギターを取り出して音を確かめ始めた。
「じゃあ……俺は行く。」
ヨウスケがLAGの裏山へと去って行くのを無言で見送りながら、タクトはギターを静かに鳴らした。
「……音の響きがいつもと違う。空気が変わった?」
格納庫に響くギターの音の微かな違いに、タクトは気付いていた。それは単に新しい戦闘機が納入されたせいか、それとも……
「……新しい風の……せいかな……。」
そう呟くタクトの声は、格納庫に響きわたるギターの音にかき消されて、誰の耳にも届かなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……甘粕です。」
ノックをして声をかけたドアの向こうから「入りたまえ」という石寺の声がした。甘粕はドアを開け、一緒に来ていたアキラを中に入るように促した。
「麻黄アキラです。着任のご挨拶に伺いました。」
部屋はどうやら会議室のようで、長テーブルがずらりと並び1番前の壁には大きなスピーカーと大きなモニターが設置されている。そのモニターの隣に石寺が後ろ手に手を組んで立っていた。
「長官の石寺だ。」
そう一言言ったまま、石寺はじっとアキラを見つめたまま無言になってしまう。アキラは困惑しながら斜め後ろにいる甘粕にチラリと助けを求める視線をむけた。
「あの……私の顔に何かついてますか?」
「いや……いい目をしていると思ってな。対ナイトフライオノート戦の最前線へようこそ。どうかね、気分は。」
アキラは改めて背筋を伸ばして「問題ありません。」としっかりした口調で答えた。
「君の任は過酷でかつ、非常に重い責を問われる。神の消滅後のこの世界は、紅の世界より出でる者"ナイトフライオノート"の侵略に脅かされている。そんな侵略者から人類を守るのが、ニホン政府の特務機関である我々LAGの使命。そしてこの琉球LAGは、その防衛戦のまさに最前線。かような地で戦闘指揮官を務めることの重圧には痛み入るが、君ならやってくれると信じている。」
石寺はアキラから視線を外すことなくそう言った。重みのある、なんだか懐かしささえ感じさせる声色だとアキラは思った。
「頑張ってくれ、期待しているよ。」
「はい。ありがとうございます。」
期待しているよと言った石寺の瞳が、少し切なそうな色を帯びたことに、甘粕だけが気付いていた。
「さて、赴任早々で悪いのだが、君にはすぐに教官の任に就いてもらいたい。甘粕、後は頼んだぞ。」
そう言って石寺はアキラと甘粕に背を向けた。
部屋から出た甘粕は、腕時計を見た。
「ではこれから早速、受け持っていただくライダーたちに会っていただきたいのですが……決めておいた朝礼の時間まではまだ時間があるようですね。どうしますか?しばらく自由時間にしましょうか?」
甘粕の提案に、アキラは乗ることにした。まだ施設内をちゃんと見て回れていないから少し歩き回りたいと言うと、甘粕は快く快諾してくれた。
「さてと。格納庫はこっち、だったかな?」
甘粕と別れたアキラは、格納庫に向かった。別れ際に甘粕から「新しい新兵器が届いている」と聞いたから一目見ておこうと思ったのだ。
頭の中に叩き込んだ施設内の見取り図と、ついさっき甘粕から聞いた格納庫への道順を思い出しながら歩くと、さほど迷いもせずに格納庫へと辿り着けた。
格納庫の扉を両手で押し開けると、少しひんやりとした空気が流れ出てきた。
「これがVOX。ナイトフライオノートと戦うための新兵器。」
アキラが格納庫の1番下へと降りるために階段の近くまで行くと、突然楽器の音が鳴り響いた。
「……ギター?」
不思議に思ってそっと階段の上から見下ろすと、中腹辺りに人影が見えた。色素の薄い肌の色に、同じく色素の薄い長髪の後ろ姿だった。身体つきから男であることがわかる。
「……なにか用ですか?」
アキラが声をかけようか迷っていると、男の方から話しかけてきた。
「あっ、ごめんなさい。邪魔しちゃった?」
「質問しているのは僕だ。なにか用かと聞いている。」
チラリと振り返った男は、冷たい目で、冷たい声色でアキラに言った。
「…その態度……ちょっと失礼じゃない?」
確かに邪魔をしたのは自分かもしれないが、見知らぬ人にそこまで冷たく言われる筋合いはアキラにはない。見たところ歳も同じくらいだ。少しムッとした態度をとってしまう。
「ふん、確かにそうだな。上官に対する態度ではないな。最低限ではあるが、その程度の事柄を正確に把握する能力はあるということか。」
タクトはギターを片手に立ち上がり、振り返って真っ正面からアキラを見た。
「麻黄アキラ。10歳で国立大学に入学し、15歳で大学院を首席で卒業。その後16歳でLAGに研究者として招かれるが、特性、能力が認められ、スカーレッドライダーの指揮官として最前線へと送り込まれることになった。」
自分のデータを早口で的確に言う男にアキラが怪訝な表情をすると、見透かしたように男が続けて言った。
「必要最低限の認識だ。何者かもわからない人間を受け入れるほど、僕は浅はかじゃないんでね。」
男はアキラを小馬鹿にしたように、相変わらず冷たい視線を投げてくる。
「受け入れる…?じゃあ、もしかしてあなた……。」
「……霧澤タクト。第六戦闘ユニットISのツァール・アインだ。自分の受け持つライダーの顔と名前も把握してなかったらしいな。その神経……理解しかねる。」
タクトは冷たい視線をアキラからギターケースに移し、丁寧にギターを片付け始めた。
「ごめんなさい。ここには着いたばかりで、何も聞かされてなかったから。」
「言い訳に責任転嫁か。なるほど。優秀な教官が着任してくれたらしい。」
アキラが努めて明るく振る舞うのに対し、タクトの冷たさは氷のごとく、だ。
「ありがとう!優秀だなんて、嬉しいな!」
思いもよらぬアキラの反応に、タクトは文字通り目を丸くした。
「この局面でありがとう、だと?…理解できない。確かに優秀だとは言ったが、なんだその反応は?どう考えても不自然に極まる。」
信じられないといったタクトの表情に、アキラは困惑した。
「え?ごめんなさい……」
「素直に落ち込みすぎだ!どうしてそう人の言ったことを言葉のまま受け止める?…貴方のような人は初めてだ。…調子が狂わされる…。」
タクトは溜め息をつきながら続けた。
「……やはり今回のLAGの判断には疑問を抱く。虎の子の新兵器を委ねるだけの資質が、貴方にあるようには思えないのだが。……まぁいいだろう。貴方が教官だというのなら、それを否定する権利は僕にはない。共に戦う同士として歓迎するよ。貴方のことをね。」
おおよそ歓迎しているようには思えない態度のまま言うタクトに、アキラはめげなかった。
「そう、よかった。期待を裏変わらないように頑張るから!」
にこやかなアキラに、タクトはこれまでよりより一層冷たい視線を向けた。
「ふん……安心してくれ。その必要はない。貴方が僕たちの教官であることは認める、が、そんなものはただのお飾りだ。現場の指揮は、実際に最前線で戦う僕には任せておけばいい。わかるかな?」
タクトは早口でまくし立て、片付けたギターケースを持ち上げる。
「勘違いしているようだから言っておくが、僕ははじめから貴方になんの期待もかけていない。かけてもいない期待を裏切ることは不可能だろう?だから貴方のそれは……杞憂だよ。」
タクトからの全力の拒否反応に、アキラは咄嗟に反応出来なかった。
「……ふん。では僕は失礼する。空気が悪くなってしまったこの場所では、いい音が奏でられないのでね。」
そう言い残して、タクトは足早に去って行ってしまう。その後ろ姿をただ目で追うしか出来ず、その場に残されたアキラは先行きの不安さしか感じられなかった。
「…これがVOX(ヴォクス)……。」
戦闘機の名は「VOX(ヴォクス)」という。馬鹿みたいに大きくて、本当に飛べるのかと不思議になるくらいだった。
VOXには「アンカー」と呼ばれる戦闘機器が取り付けられている。巨大な規模を集中的に攻撃出来る、言ってみれば大きな光線銃のようなものだと甘粕が言っていた。
それを発動出来るのは、戦闘指揮教官である者のみ。
「麻黄アキラ」
その名を、タクトはすでに知っていた。顔写真入りの資料を甘粕から貰っていたからだ。
「…どうした?こんなところで。」
ふいに声を掛けられて振り返る。タクトにとって馴染み深い声だ。わざわざ振り返らずとも、声の主はわかった。
「どうしても見ておきたいものがあってね。キミこそどこへ行くんだ?」
タクトの振り返った先には、長身で黒髪の青年が立っている。タクトは背があまり高くないので、この青年の隣に並ぶのがあまり好きではない。……自分ではそのことをコンプレックスとして認めてはいないのだが……。
「俺は…山だ……。」
長身で黒髪の青年は、綺麗なガラス玉のようなスカイブルーの瞳でタクトを見ていた。背中にはリュックを背負っている。彼がLAGの裏にある山に行く時にいつも持っていくリュックだ。
「ヨウスケ、今日は朝礼があったはずだが?」
朝礼をサボろうとしているのが目に見えてわかる幼馴染に、タクトは釘をさす。
「……チッ。こんなとこにギターを持って来ているお前に言われたくない。」
タクトが手に持っているギターケースに視線を落としながらヨウスケが抗議した。
「なるほど、もっともな意見だ。」
タクトは階段に座りながらギターケースを開けると、ギターを取り出して音を確かめ始めた。
「じゃあ……俺は行く。」
ヨウスケがLAGの裏山へと去って行くのを無言で見送りながら、タクトはギターを静かに鳴らした。
「……音の響きがいつもと違う。空気が変わった?」
格納庫に響くギターの音の微かな違いに、タクトは気付いていた。それは単に新しい戦闘機が納入されたせいか、それとも……
「……新しい風の……せいかな……。」
そう呟くタクトの声は、格納庫に響きわたるギターの音にかき消されて、誰の耳にも届かなかった。
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「……甘粕です。」
ノックをして声をかけたドアの向こうから「入りたまえ」という石寺の声がした。甘粕はドアを開け、一緒に来ていたアキラを中に入るように促した。
「麻黄アキラです。着任のご挨拶に伺いました。」
部屋はどうやら会議室のようで、長テーブルがずらりと並び1番前の壁には大きなスピーカーと大きなモニターが設置されている。そのモニターの隣に石寺が後ろ手に手を組んで立っていた。
「長官の石寺だ。」
そう一言言ったまま、石寺はじっとアキラを見つめたまま無言になってしまう。アキラは困惑しながら斜め後ろにいる甘粕にチラリと助けを求める視線をむけた。
「あの……私の顔に何かついてますか?」
「いや……いい目をしていると思ってな。対ナイトフライオノート戦の最前線へようこそ。どうかね、気分は。」
アキラは改めて背筋を伸ばして「問題ありません。」としっかりした口調で答えた。
「君の任は過酷でかつ、非常に重い責を問われる。神の消滅後のこの世界は、紅の世界より出でる者"ナイトフライオノート"の侵略に脅かされている。そんな侵略者から人類を守るのが、ニホン政府の特務機関である我々LAGの使命。そしてこの琉球LAGは、その防衛戦のまさに最前線。かような地で戦闘指揮官を務めることの重圧には痛み入るが、君ならやってくれると信じている。」
石寺はアキラから視線を外すことなくそう言った。重みのある、なんだか懐かしささえ感じさせる声色だとアキラは思った。
「頑張ってくれ、期待しているよ。」
「はい。ありがとうございます。」
期待しているよと言った石寺の瞳が、少し切なそうな色を帯びたことに、甘粕だけが気付いていた。
「さて、赴任早々で悪いのだが、君にはすぐに教官の任に就いてもらいたい。甘粕、後は頼んだぞ。」
そう言って石寺はアキラと甘粕に背を向けた。
部屋から出た甘粕は、腕時計を見た。
「ではこれから早速、受け持っていただくライダーたちに会っていただきたいのですが……決めておいた朝礼の時間まではまだ時間があるようですね。どうしますか?しばらく自由時間にしましょうか?」
甘粕の提案に、アキラは乗ることにした。まだ施設内をちゃんと見て回れていないから少し歩き回りたいと言うと、甘粕は快く快諾してくれた。
「さてと。格納庫はこっち、だったかな?」
甘粕と別れたアキラは、格納庫に向かった。別れ際に甘粕から「新しい新兵器が届いている」と聞いたから一目見ておこうと思ったのだ。
頭の中に叩き込んだ施設内の見取り図と、ついさっき甘粕から聞いた格納庫への道順を思い出しながら歩くと、さほど迷いもせずに格納庫へと辿り着けた。
格納庫の扉を両手で押し開けると、少しひんやりとした空気が流れ出てきた。
「これがVOX。ナイトフライオノートと戦うための新兵器。」
アキラが格納庫の1番下へと降りるために階段の近くまで行くと、突然楽器の音が鳴り響いた。
「……ギター?」
不思議に思ってそっと階段の上から見下ろすと、中腹辺りに人影が見えた。色素の薄い肌の色に、同じく色素の薄い長髪の後ろ姿だった。身体つきから男であることがわかる。
「……なにか用ですか?」
アキラが声をかけようか迷っていると、男の方から話しかけてきた。
「あっ、ごめんなさい。邪魔しちゃった?」
「質問しているのは僕だ。なにか用かと聞いている。」
チラリと振り返った男は、冷たい目で、冷たい声色でアキラに言った。
「…その態度……ちょっと失礼じゃない?」
確かに邪魔をしたのは自分かもしれないが、見知らぬ人にそこまで冷たく言われる筋合いはアキラにはない。見たところ歳も同じくらいだ。少しムッとした態度をとってしまう。
「ふん、確かにそうだな。上官に対する態度ではないな。最低限ではあるが、その程度の事柄を正確に把握する能力はあるということか。」
タクトはギターを片手に立ち上がり、振り返って真っ正面からアキラを見た。
「麻黄アキラ。10歳で国立大学に入学し、15歳で大学院を首席で卒業。その後16歳でLAGに研究者として招かれるが、特性、能力が認められ、スカーレッドライダーの指揮官として最前線へと送り込まれることになった。」
自分のデータを早口で的確に言う男にアキラが怪訝な表情をすると、見透かしたように男が続けて言った。
「必要最低限の認識だ。何者かもわからない人間を受け入れるほど、僕は浅はかじゃないんでね。」
男はアキラを小馬鹿にしたように、相変わらず冷たい視線を投げてくる。
「受け入れる…?じゃあ、もしかしてあなた……。」
「……霧澤タクト。第六戦闘ユニットISのツァール・アインだ。自分の受け持つライダーの顔と名前も把握してなかったらしいな。その神経……理解しかねる。」
タクトは冷たい視線をアキラからギターケースに移し、丁寧にギターを片付け始めた。
「ごめんなさい。ここには着いたばかりで、何も聞かされてなかったから。」
「言い訳に責任転嫁か。なるほど。優秀な教官が着任してくれたらしい。」
アキラが努めて明るく振る舞うのに対し、タクトの冷たさは氷のごとく、だ。
「ありがとう!優秀だなんて、嬉しいな!」
思いもよらぬアキラの反応に、タクトは文字通り目を丸くした。
「この局面でありがとう、だと?…理解できない。確かに優秀だとは言ったが、なんだその反応は?どう考えても不自然に極まる。」
信じられないといったタクトの表情に、アキラは困惑した。
「え?ごめんなさい……」
「素直に落ち込みすぎだ!どうしてそう人の言ったことを言葉のまま受け止める?…貴方のような人は初めてだ。…調子が狂わされる…。」
タクトは溜め息をつきながら続けた。
「……やはり今回のLAGの判断には疑問を抱く。虎の子の新兵器を委ねるだけの資質が、貴方にあるようには思えないのだが。……まぁいいだろう。貴方が教官だというのなら、それを否定する権利は僕にはない。共に戦う同士として歓迎するよ。貴方のことをね。」
おおよそ歓迎しているようには思えない態度のまま言うタクトに、アキラはめげなかった。
「そう、よかった。期待を裏変わらないように頑張るから!」
にこやかなアキラに、タクトはこれまでよりより一層冷たい視線を向けた。
「ふん……安心してくれ。その必要はない。貴方が僕たちの教官であることは認める、が、そんなものはただのお飾りだ。現場の指揮は、実際に最前線で戦う僕には任せておけばいい。わかるかな?」
タクトは早口でまくし立て、片付けたギターケースを持ち上げる。
「勘違いしているようだから言っておくが、僕ははじめから貴方になんの期待もかけていない。かけてもいない期待を裏切ることは不可能だろう?だから貴方のそれは……杞憂だよ。」
タクトからの全力の拒否反応に、アキラは咄嗟に反応出来なかった。
「……ふん。では僕は失礼する。空気が悪くなってしまったこの場所では、いい音が奏でられないのでね。」
そう言い残して、タクトは足早に去って行ってしまう。その後ろ姿をただ目で追うしか出来ず、その場に残されたアキラは先行きの不安さしか感じられなかった。