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Track 00 オープニング・ナンバー

昔、「本能に支配された紅の世界」と「理性を司る青の世界」のこの両極端のふたつの世界は元はひとつだった。それを支える「柱」があった頃の話だ。
「柱」は絶妙な位置とバランスで成り立ち、世界を守っていた。だから「柱」は「神」と呼ばれていた。
しかしいつの日か、突然その「柱」は崩壊してしまい、世界が分裂してしまった。「神」がいなくなった後、「本能に支配された紅の世界」と「理性を司る青の世界」が誕生した。ふたつの世界は両極端ゆえ、互いに理解し合えない。本能だけで生きる赤の世界の住人は、闘争本能のままに青の世界を侵略しようとしてしまう。その侵略から青の世界を守るのがLAGの使命だ。
紅の世界からの侵略者を倒すため、紅の世界の住人に協力してもらうという不自然な戦い方ではあるが、理性というたがのないナイトフライオノートの戦闘力は青の世界の人間を凌駕する。現状、対抗するためには敵と同じ本能の力をぶつけるしか青の世界には策がないのだ。
本来は敵である者の力を借りるというリスクはある。だが………

「あのトカゲの尻尾はな、ずっと前からリッケンが大事にしていた宝物なんだ。」

レスが言った。

「うおぉぉぉぉぉぉん!そうだったのか、リッケン!!!ごめんよぉ!!!」

それを聞いたフェルは、謝りながらリッケンにトカゲの尻尾を返した。

「うむ、儂も異論はない。それはお前の宝だ、リッケン。」

ディバイザーはうんうん、とうなづく。

「よかったわね、リッくん♡」

デュセンはトカゲの尻尾が戻ってきて嬉しそうなリッケンの頭を優しく撫でている。

「彼らは、ただ純粋なだけなのですよ。純粋ゆえに好奇心旺盛。その好奇心旺盛ゆえに僕たち人間に興味を持ち、自ら歩み寄ってきた。いわば純粋さこそが、彼ら"サブスタンス"と侵略者"ナイトフライオノート"との違いなのです。彼らが決して悪い奴でないことは、僕が保証しますよ。」

甘粕の口調は変わらず冷静だったが、サブスタンスたちのやりとりを見つめるその眼差しはまるで弟たちを見つめるような優しさそのもので、アキラには甘粕の言いたいことがなんとなく伝わってきたような気がした。目の前でのサブスタンスたちのやりとりは、姿は違えど本当に人間と変わらない。

「うん……わかるよ。ねぇ、リッケン…でいいのかな?さっきはごめんね。もしよかったらその尻尾、改めて貰ってもいいかな?食べるのはちょっと無理だけど。」

「ひょひひょんひぇ!」

アキラが差し出した手に、リッケンがトカゲの尻尾を渡した。

「まぁ、リッくんが喜んでいるわよ。」

デュセンも嬉しそうにしている。

「…ねぇ、甘粕くん。私もサブスタンスのみんなのこと信じてみようと思う。」

アキラは純粋にそう思っていた。

「…そうですか。それはよかった。いずれにしても彼らは戦闘ユニット"IS"の一員です。コミュニケーションをとることで戦闘指揮教官として得るものもあると思います。ですから気が向いたら気軽にこのメンテナンス室に立ち寄って下さい。…まぁ、赤ん坊のお守りでもすると思って。」

「お守りか…。ずいぶん巨大な赤ちゃんだね…。でもなんか、やっていけそう。みんな人間と変わらない感じだし。」

にこやかに言うアキラに、甘粕は真面目な視線を向ける。

「そうですね。…しかし、完全に心を許すこともお勧めできません。彼らの力を借りる「レゾナンス」にはリスクが伴いますから。…ですがそれについてはまた後ほど。今日はこの辺にしましょう。本当に大変なのは明日以降になります。慣れない環境ですし、今日はゆっくり休んで下さい。」

甘粕はアキラから視線を外し、窓の外に広がる青空を見上げた。外からまた大きな音が聞こえる。

「…最新鋭のVTOL機が届いたようですね。」

それは教官であるアキラや第六戦闘ユニットのメンバーが搭乗する戦闘機だ。
着々と、戦いの準備が整ってきている。
甘粕は自分の心がざわつくのを感じ、それを止められないでいた。
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