File.02 貴方の番犬になる
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「ノック?」
「NonOfficialCoverです」
「待って無理、覚えらんない」
帰って来るなりふーっと息を吐いてから安室さんはシャワーをすると言って浴室へと行き、ものの数分で出て来た。
そして夕餉をパパっと作った安室さんの前に座り一緒にご飯をいただいていたのだが、またよく分からない単語を言われた。
「スパイの事ですよ」
「安室さんが組織にいるのもスパイだったような……コナンから聞いたような……」
「なら話は早いですね」
何でも今安室さんであるバーボンにはノックの疑いが掛かっているらしい。
先日にあった東都水族館という所の観覧車の爆発事件でそのノックの疑いは晴れたものの一時凌ぎに過ぎないとの事。
なのでそのうち帰って来られない事が急にあるかもしれないと。
突っ込み所があり過ぎてもう右から左の単語も多かったけれど、今日見たベルモットも何かしら関係があるのだろうか。
それに、帰って来れない事とはやはり命の危険な状態にあるという事か。
「これ、持っててください」
食べ終わったくらいに机に出されたのは携帯だ。
安室さんの物と同じだという事は分かるのだが……果たして私に使いこなせるだろうか。
携帯を手にしてジーッと見つめる。
裏返すと安室さんの携帯と似たような柄が入っていた。
何だっけ、これ、確か前にかごめとトランプとかいうやつで遊んだ時にあった柄で……ダイヤ、だったかな?
「連絡手段がないのは困るので」
「これって、なんだっけ……アベック、だっけ?」
「言い方が古いですね……誰に聞いたんですか」
「かごめの爺ちゃんが言ってた」
「誰ですか」
誰と言われても困る。
それ以上に説明のしようがない。
それにしても…これは今日買った物ではないのかな。
「お揃いとかそんな感じでいいですよ、カバーはストックしてあった物で悪いですが呉々も握り潰さないように肌身離さずお願いしますね」
カバー?ストック?
そして握り潰すとは……。
私が何かを握り潰してる所なんて見た事ない筈なのに……失礼だな。
「出来るだけ大事にするね」
「出来るだけってなんです?」
笑っているのに目は笑っていない。
器用だな安室さんは。
「物なんて大事に持った事ないから……ずっと一緒だったのは刀くらいだよ」
「刀?それはどうしたんですか?」
「刀々斎って言う刀鍛冶に預けた所でこっちに来たから持ってない」
大事かと言われるとそうでもないけれど肌身離さず持っていた物は刀だけだ。
それも、今は持ち合わせていない。
刀は腰に掛けれたけれど携帯は気にしていないと忘れそうだな。
「ここでは刀は目立つのでないに越した事はないですが……体術は出来ます?」
「さぁ?負けはしないんじゃない?」
「因みに負けた事は?」
「生きてるから負けてないよ」
「そういう問題なんですね」
はぁーっと長い溜め息を吐かれた。
負けるとかそんなぬるい事言ってられない所で生きてたから。
あるのは生か死だ。
ご馳走様でしたと箸を置いてお茶を一気飲みした後で携帯を再び手にした。
まず、どうやったら画面がつくんだ。
最終使い方が分からなくてその辺に放り投げてしまいそうで怖い。
「電源はここです、僕の番号とアドレスは既に入れてあるので」
食器を片付けながら携帯の説明をしてくれる安室さん。
電話が掛かって来ると画面に通話と切断が表示されるとか、メールが来るとアイコンの所に数字が表示されるとか。
アイコンはこの四角いのだとか言われても覚える事が多過ぎて頭に入りきるのか。
今は洗濯物を畳んでいる安室さんを正面に捉えながら部屋の隅で携帯と睨めっこしたり安室さんを観察したりしている。
「これって安室さんが買ったくれたんだよね?」
「僕が払いましたけど店に行ったのは部下ですよ」
なるほど、今日ずっと尾けてたからいつ買ったのかと思ったけれどそういう事か。
あの風見とか言う人間にでも買いに行かせたのか。
「ありがとう……お揃い、大事にするね」
操作は難しくて少しずつでないと慣れないだろうけれど、これがあればいつでも連絡が出来ると思えばやはり嬉しい。
頬を綻ばせていると目の前からの視線が気になり首を傾げる。
「なに?」
「いえ、今凄く人間ぽかったので」
人間ぽい?
そんな事したのか言ったのか。
お礼を伝えただけなのだがとまた首を傾げてしまった。
再び携帯を見つめ充電の仕方や電池の見方も教えてもらい、一応防水だがなるべく水に晒さないようにと説明を受け一日一度は電源を落とす事と細かく分からない所は紙に書いた。
「コナンやライにもこれで連絡出来る?」
「ええ、まぁ、赤井は不本意ですが」
やったーと喜んだ所で先にお風呂入ってくださいと言われたので携帯を置いて浴室へと向かった。
今日一日も色々あったな。
明日から携帯を持って安室さんの後を追う事に決め、入れる所もないので常に手に持って移動かと思えば眉が寄ったけれど、お揃いだと思うとまた頬が緩む。
こんな所が妖怪にはあるまじき感情だなと自嘲した。
