File.02 貴方の番犬になる
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安室さんには多大なる迷惑を掛けているのは分かる。
水や電気、洗濯等、何から何まで面倒をみてもらっている。
頼んでないにしろ朝餉も夕餉も寝床もくれる。
こっちの世界に早く慣れる為にも勉強道具まで買ってもらった。
新月には人間に、満月には妖怪になる事も話した。
妖怪の事も言えば安室さんは何か考えていたのでおそらく対策でも練ってくれるのだろう。
そして食べ終わった食器を片付け、いつものように出掛けて行く姿を見送ろうとしたのだが、安室さんと呼び止めた。
「なんです?」
「手、貸して」
首を傾げながらも差し出してもらった右手を掴み、器用に爪で小指の腹を少し裂いた。
痛みから安室さんの綺麗な眉が歪み、何がしたいんだと少し睨まれる。
「匂いだよ」
プクッと膨れ上がる血の匂いにクンクンと更に近付きその小指をパクっと口に入れた。
それには流石に驚いたのか安室さんの口が開いている。
「は?」
「安室さんの血の匂いを覚えただけ」
「血の匂いなんて誰しも同じじゃないんですか?」
「そりゃあ似てるやつもいるけど大体は違うよ」
口から指を取り出すともう血は止まっている。
元々そこまで深くは裂いていない。
するとハッとした安室さんは今度こそ玄関で行ってきますと言ったので、行ってらっしゃいと満面の笑みで見送った。
今日から行動に出る。
安室さんには外出禁止だとこれでもかという程言い聞かされた言葉だけど、守るわけがない。
今日から安室さんを守る為にこの世界で生きる。
すぐ様服を着替えて帽子を被りベランダから飛び出して、安室さんの後を追う。
勿論バレないようにだ。
以前乗った車の匂いも何となく覚えている。
車内の匂いも排出される体に悪そうな匂いも。
あと、独特の車の音。
それを頼りに建物から建物へと飛び回っていた。
勿論周りに注意をしながら。
まだ遠くへは行っていない筈。
すると、信号で停まっている白い車を発見した。
アレだと遠目に確認をしてから暫く後をつけていると一度来た事がある建物へと入った。
そう、警察がうじゃうじゃいる所だ。
どこかのビルから眺めて暫く、黄色い車から降りてきた子供達がゾロゾロと警察の建物に入って行くのが見えた。
その中にコナンの姿もあり出て来てから声を掛けようと決めた。
それから一時間程経ったくらいに出て来た子供達の近くに素早く下り立ち、コナンにヘラっと笑い手をヒラヒラと振った。
「柚子さん!何してんのこんな所で!」
「誰だ?この姉ちゃん」
「すっごく綺麗な人ー!」
「初めまして、ボクは円谷光彦と言います」
「柚子だよ」
何故か自己紹介が始まってしまった。
ソバカスの子は光彦、可愛らしい子は歩美、大きい子は元太、そして大人っぽい印象の子は哀。
それにしても何でこんな所に?
子供の来るような所じゃないだろうに。
「博士、俺ちょっと柚子さんに用あるからこいつら送ってってくれ」
博士と呼ばれた人は黄色い車に乗っていたおじいさん。
優しそうなその人はぺこりと頭を下げてから車は走り去っていった。
「で?裸足で何してんだよ!」
「ああ、また裸足だった……」
向こうの癖でと言えば苦笑いをされた。
「まぁ、慣れるまでしゃーねぇーけど…靴には気を付けろよ、あんまり目立つな」
本当に子供で私に怒るのコナンくらいだよ。
それよりも場所を移動しようとコナンを抱き上げて人気の少ない所まで行く。
「舌噛まないでね」
言うが早いかひょいひょいと建物の突起部分に足を掛けて登りさっきの屋上へと戻って来た。
「さ、流石半妖……死ぬかと思った…」
ぐったりとしているコナンを降ろして視線は警察の建物へと向ける。
勿論安室さんの入って行った入口にだ。
「なぁ、まさかとは思うけど安室さん追って来たのか?」
「今日から本格的に護衛しようと思って」
「いや、いらねぇだろ」
「正直に言うと家にいても暇だし何も家の事が出来ない。ならせめて安室さんを守ろうと毎日尾ける事を決めた」
「番犬かよ……尾けるって事は安室さん知らねぇんだろ?」
安室さんには家から出るなとか外出禁止とか鎖で括っとくとか色々言われている事を伝えると、小さな頭のいいコナンは溜め息を吐いた。
その言葉だけで今までして来た事が大体は分かったようだ。
「バレたらこっぴどく怒られるだろーな」
「バレなきゃいいんでしょ?」
「ぜってぇーバレるって!今のうちにやめとけよ」
ムスッとしてコナンを睨む。
何がなんでもこの決意は揺るがない。
安室さんを守る!
