File.02 貴方の番犬になる
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降谷side
朝、四時に目が覚めてしまいもう少し眠ろうとしたが眠れなくなったので掃除をする事にした。
二泊目なのにも関わらずベランダの外で静かに座っている彼女がいて、寝ているのかとも思ったがそれは違うようで俯いていた顔をチラと上げた彼女のその瞳と目が合った。
そして聞こえているかは分からないがおはようございますと挨拶をして笑えば彼女は口を開く事は無かったがコクと頷きだけ返してくれた。
早めに朝食を作り、出来た頃合に彼女を呼べば静かに椅子へと腰掛けて箸を手にしてくれる。
パパっと食べ終わり食器を片付けているとポアロの事を思い出し、手帳に挟んであった紙を彼女へと渡す。
「それはポアロのシフト表です、夜には帰るので」
それだけ言ってポアロへと出勤したのだが、その途中であっと声をあげてしまった。
シフト表と言ったが今頃何の事か分からず紙は放置されてるだろう。
おそらく日付も見方も分かっていない筈だ。
「おはようございます、安室さん」
「梓さん、おはようございます」
にこりと笑い合い朝の挨拶を終えると早速仕込みに入る。
今日はマスターは休みか。
慣れた手つきでせっせとカレーを煮込んだりケーキを作り、焼いてる間にプリンも作る。
昨日卵が安かったので沢山買ったと梓さんが言っていたので丁度いい。
カランカランと今日初めての客が来たのでにこりと営業スマイルをして接客にあたる。
今日もポアロでの一日が始まった。
そして少し手があけば不思議な事で今家にいるだろう彼女の事が頭に浮かぶ。
外に出してやりたいが中々機会も無ければまだ常識のない彼女を一人で出歩かせるのも心配だ。
コナン君も平日は学校があり、赤井もどこで何をしているかは知らない。
やはりこのメンバーだと限界がある。
だからと言って他に協力者を要請するのもな。
どうしたものかと頭を悩ませる。
「いらっしゃい」
忙しい時間帯に入り、少しすると学校帰りだろうコナン君がランドセルを背負って入店したので声を掛けた。
カウンター席に座ったコナン君にオレンジジュースを出し、何故この時間なんだと聞くと今日は学校が昼までだったらしい。
そしてコナン君に本題とも取れる、どうかと聞かれた。
「今頃ドリルでもしてるんじゃないかな」
「ドリル?」
「ああ、平仮名とか時計の読み方とか色々ね」
ははっとコナン君は乾いた笑いをしていた。
そして考えるのは今日の晩ご飯は何にしようかという事。
彼女は何を好むだろうか。
まだ三日では流石に分からない。
「困った事とかってないの?」
「困った事……飲み込みも早いし、強いて言うなら結構自由で野性的な所があるかな」
「野性的って……まぁ犬だから?」
「寝るのも警戒してるようでベランダで座ったまま目を閉じてるよ」
まぁ、眠ってはないらしいが。
流石にそれはなんとかしたい所だ。
だが、そこは言っても譲らなさそうだし正直参っている。
はぁと溜め息を漏らせばコナン君は大変だねと他人事のように呟いた。
元を辿れば赤井が保護なんてしなければこうはならなかった。
いや、引き取ると言った自分が悪いのか。
凶暴でもないし言い付けは守っているから何とかやって来れた。
それはあのトイレに閉じ込めた時に思った。
家にある物は壊すなと言ったのを彼女は律儀に守った。
扉や壁は壊される覚悟だったが、彼女はベルトを噛みちぎって外そうとしていただけだった。
「知らない単語は多いみたいだけど言葉は通じるから普通の犬よりは賢いよ」
「まぁ、一応半分は人間だし」
物凄く小さな声でコナン君は呟いた。
ガヤガヤとした店内でせっせと料理を作りながらの会話だけど、聞き耳を立てている人はいない。
梓さんもにこにこと接客をしているので聞こえてはいない。
「何とか生活出来てるみたいで良かった」
「このまま何事も無ければいいけどね」
まだニュースでは狼騒ぎが静まっていない。
更にそこに彼女の耳でも晒せばそれこそややこしくなるだろう。
流石に公安の力でも限界がある。
「悩みは耐えないよ」
「ごめんね、安室さん」
だけど宜しくと笑ったコナン君はどこか黒いものがあった。
