File.07 大好きだと叫びたい
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降谷side
俺はどうすればいいんだ。
あの時、ハニートラップの話をしていてシャワーの後にでも手取り足取り教える予定だったが、「妹だなんて言わないで、一人の女として見てほしい…」そう言われて好きだと伝えられてしまえば兄として固まるのは当然。
そして違うのかと思う。
本気の告白ではなく、ハニートラップのつもりなのかと思った。
だが、梅の表情を見てすぐにハニトラではないと気付いた。
今にも泣き出しそうでぐっと涙が零れるのを耐えていた。
鞄片手に家を出て行った梅に、やっと動いた体はその後を追った。
道路まで出てどっちへ行ったのかと右と左を見たが梅の姿はもうない。
大通りへと向かい、辺りを見ながら走ったが一向に見つかる事はなかった。
家に戻ったかと梅の家へ行くと当たり前に鍵が掛かっていたのでいつも財布に入れている合鍵で中に入り、さっき履いていた靴がなかったので戻って来ていないのかと溜め息を吐いた。
中へ入り、梅の帰りでも待とうかと思って部屋を見回していると、床が少し上がっていたのでまさかと思い、中を確認した。
さっき二人で家を出る時確かに梅はここにパソコンを仕舞っていた。
それがない。
一台だけではなく三台ごっそりと。
USBのケース事だ。
これを徒歩で運ぶのには骨が折れるからおそらく車移動か。
そうなれば探せない。
クソっと舌打ちをしてから梅に電話を掛けた。
だがその携帯は電源を切っているのか繋がらない。
力任せに壁を殴ってしまい、凹んだ所を確認してからやってしまったと後悔した。
後で何を言われるか分かったもんじゃない。
いや、後で言ってくれるのならなんだっていい。
それから何度も電話をした。
メールも送り、もうすっかり暗くなってから家に帰ろうと彼女の部屋を出た。
「何やってんだ俺は」
今日は三日月か。
空に浮かぶ月に笑われている気がしてならない。
何度も電話をして、漸く呼出音が聞こえた。
出るか……出てくれっ!
その心情も虚しくブツっと切られる。
また舌打ちが漏れる。
そしてまた電源を落とされた。
家に帰ってシャワーを浴びてから髪を乾かすより先に携帯を耳に当てる。
もう一度と電話を掛けると、長いコール音の後に、繋がった。
「梅かっ!どれだけ心配してると思ってるんだ!」
『彼女は預かっているよ』
「赤井っ!」
この世で最も聞きたくない声が電話越しに聞こえて吐き気がする。
それに今こいつはなんて言った?
梅を預かってる?
どういう事だ。
『随分泣いていたんでな、返すのも可哀想になったから泊める事にした』
「ふ、ざけるな!」
『彼女がそれを望み自らここへ来たんだ』
なんで梅は俺から逃げた。
なんでこんな奴を頼った。
なんで……。
ああ、全部俺が悪いんだ。
なんとなく、梅の想いは分かってた。
だがそれを見ないように、知らないようにしていた。
「梅に代われ」
『彼女ならもう寝ているよ』
「なら、場所を言え、迎えに行く」
『それは出来んな。この隠れ家は見つかりたくないんでね』
取り敢えず今の所彼女はここにいるから安心しろと言って電話は切れた。
クソっ、なんであいつはあんなに上から物を言うんだ。
これから本庁に行かなくてはならないし果たしてこの思考のまま仕事が捗るのかどうか。
いや、きっと捗らない。
このモヤモヤした気持ちを全て消したくて長い溜め息が漏れる。
空を仰いでから相棒に乗って夜の道を駆けた。
