File.03 安室宅へお泊まり
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「押入れに客用の布団とかないの?」
「客は来ないからな、買ってない」
モテるからいくらでも来そうなのに、来ないじゃなくて来させないんだろうな。
その上買ってないって…。
よくそれで私を呼べたな。
「ここで寝るの?」
「そうするしかないだろ」
「じゃあ私もここで寝る」
「は?」
ポカンと口を開いてなんともまぁ間抜けな顔をした。
寝る、と言っても零が椅子を使ってるから床に寝る事になるけど。
「掛布団引っ張って来るから一緒に寝よ?」
「俺の事は気にしなくていいからベッドで寝ろ」
「だったら泊まった意味ないじゃん」
「待て。なら沖矢昴の家に泊まってたら一緒に寝てたのか?」
「え……んー、どうだろ?」
秀一温かそうなイメージあるから寝たらポカポカしてそう。
でも意外と冷え性だったら笑える。
「どうだろ、だと?男と一緒に寝るならせめて付き合ってからにしろ!」
「あーもうはいはい。取り敢えず寝よ?私明日朝からバイトなの」
「俺もだ」
だったら早く寝ようよ。
今度は私が零の腕を掴む番。
そして引っ張る。
「トイレは開けるのに一緒には寝れないなんて事ないよね?」
「…そうだな」
やっと折れた。
上体を起こしてから立ち上がって寝室へ入って行った零を追い掛ける。
バッと掛布団を捲って入れと顎で言われた。
私が奥の壁側…逃げ道なしか。
泊まりは零から誘ったものの、寝るのは私から誘ってしまったので、気恥ずかしい。
だけどここで入らなかったら余計に入り辛くなる。
勇気を出してベッドに上り、ゴロンと横になると零も隣に寝た。
それから布団を掛けてお互い反対を向く。
「狭い……」
「お金あるんだからもっと広いベッド買えばいいのに」
「安室透にはそんな金ないからな」
確かに探偵業とポアロのバイトじゃあ安定しない。
でも、誰もこの家にあげる気がないのならちょっとくらいの贅沢は許されるんじゃ…なんて思った所で考えるのをやめた。
零に言った所で聞く耳持たないんだろうな。
「なぁ、沖矢昴の事本当に好きじゃないんだよな?」
「何度も言ってるけど好きだけど付き合うとかそんなのじゃないってば」
「なら、赤井はどうなんだよ」
「もーっ!しつこいって!」
ぐわっと零の方を向くと、いつの間にこっちに向いていたのか目があって固まった。
その真剣な瞳に捉えられると逸らせない。
「…言えないのか?」
「秀一も昴さんと同じだよ」
ひょっとして、と思ったけど、私なんかよりも零の方が寂しいんじゃないのか。
零から直接は聞いてないけど、警察学校時代の仲の良かった友達は死んでる。
「零は、寂しい?」
「…もう慣れた」
「寂しいって慣れないよ、寂しさに慣れるなんて事はないよ」
よしよしと頭を撫でると零は何も言わずに受け入れた。
髪柔らかいな、シャンプーのいい匂いがする。
すると、少し下に潜った零は体を密着させて来て、背中に腕が回った。
「落ちるからこうやって寝かせてくれ」
胸元に顔を埋めるようにして寝ようとしているので恥ずかしいけど、甘えてくる零も珍しいから今日くらいいいかと許す事にした。
「…変な所触ったら殴るから」
「まさか妹には手は出さないよ」
ははっと笑って安心するように言ってくれた言葉は、深く胸に突き刺さった。
