File.01 拾われました
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「明日から学校ですよ」
「は……?」
ある日突然言われた言葉。
それは本当に唐突で、ドンと目の前に置かれた教材やランドセルに目を見開いた。
まさかこの年になって小学校に通えと言うのか。
いや、バーボンは私がいい大人なのを知らないけれど、それでも何故今更学校になんて。
「暇でしょう?ずっと家にいても」
「夢で遊んでるから忙しい」
「なんですかその言い訳」
ここに住み出して一週間程経っただろうか。
その間に携帯も買ってもらったしお小遣いも欲しい時にくれると言ったけど、家から出ない上に、買い物も一緒に行くので結局お金を使う場面に出くわさなかった。
「帝丹小学校に通って下さいね」
どっかで聞いた名だと思ったけど、あの工藤新一、基、江戸川コナンが通っていた所か。
「私何年生?」
「一年生にしておきました」
一年生に、した?
その言い方は…。
「…私の事調べたの?」
「ええ、残念ながらあなたの名前はありませんでした」
探したようだけど、当たり前だ。
私の戸籍はない。
こっそり産まれて育てられて幼くして捨てられて、拾ってもらって…病院は組織の傘下がある所に行っていたし、学校になんて通った事は勿論なかった。
なのに、バーボンはどんな手回しをして私を学校に入れたのか。
「私は、忌み子で戸籍なんてないよ」
「忌み子……」
「母親にこっそり産み落とされた」
ペラペラと用意してもらった教科書に目を通す。
どれも簡単で授業中寝てしまうだろう、なんて考えているとバーボンに抱き締められた。
咄嗟の事に教科書を落としてしまい、驚きで体は固まった。
「…同情ならいらないから」
「いえ、同情ではなく、もっと甘えてください」
体を離してにこりと笑う安室透と言う男。
これも偽物かと思った。
頭のキレるバーボンがあっさりと名前を言うわけがない。
本名は隠すだろう。
そうただの推測であって勘だけど。
「なら、本名、教えて」
「……本名、ですか?」
「安室透は偽名だよね?」
「何故そう思います?」
「なんとなく、勘」
確かバーボンと一緒にいたライも諸星大と言う名前で偽名だったっけ。
本名は赤井秀一だったし、その彼女もまたシェリーの姉、宮野明美という名だった。
本名を名乗る方が珍しく思える。
「残念ながら本名ですよ」
苦笑いにはどういった意味があるのか。
そう、とだけ返事をして明日の時間割りを確認した。
教科書やノートをランドセルに詰めて小学一年生の準備をする。
筆箱を開けると中は今時の小学生が喜びそうな鉛筆や消しゴム、キャラクター柄のものさし等が入っていた。
「コレ…一人で全部用意してくれたの?」
「まぁ大体は…」
そこは嘘を吐かないのか一人ではないらしい。
どういった関係の人かは知らないけど私の為に選んで買ってくれたんだ、お礼の一つくらい言える機会があればいいけど。
「ありがとう、本当に良くしてくれて」
「いいえ、僕がしたいだけですから」
この一週間で分かった事。
彼は凄く面倒見がよくて完璧主義者だ。
何から何まで見てる限り全てを熟す。
その上手際も良くてきっちりしている。
面倒臭いな、なんて口で言ってる時もあるけど、結局は口だけで、行動に移すと直ぐにやってのけてしまうんだ。
(パパと呼んでも…?)
(やめてください)
(じゃあ、ママ?)
(返事しませんよ?)
(お兄ちゃん…)
(…悪くはないですね)
