File.04 ジンもバーボンも心配性です
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時間と場所が送られて来たので一人で堂々とホテルに入った。
指定された部屋までの道で思い出したのはバーボンの事。
本当に彼は心配性で優しい。
「本当に一緒に行かなくてもいいんですか」
「ホテルまで送りましょうか」
「帰りは言ってくれれば迎えに行きますよ」
全てにおいて断って来たけど、それでもまだ何か言いたそうにしていた。
今日はバーボンは深夜に組織の仕事が入っているらしく、私が帰ったくらいにバーボンが出掛けそうなのでジンとの事はまた今度話す事になりそうだ。
部屋まで来て扉をトントントンと三回ノックをした。
覗き穴を手で隠してニヤリと笑っていると扉が開く。
ジンは私の姿を見るなり目を見開いていて、そして次の瞬間には睨み付けるように見下して来る。
私は久しぶりに見たジンの姿に歓喜余って泣きそうになった。
だけど嬉しくて嬉しくてその足にぎゅっとしがみつくと、思い切り振り払われた。
「いや、感動の再開じゃん」
コロンと転がってしまえばジンに首根っこを持たれ中へと放り投げられた。
クルンと受け身を取って態勢を立て直し、ジンは奥へと歩いて行ったのでその後について行く。
そしてベッドに腰を掛けて睨んで来た。
幾分か低くなったジンに威圧感が少しはマシになったかと近くにあった椅子に座る。
「なんだそのふざけた姿は」
「色々あって……懐かしいでしょ?」
私の幼少期を知っているジンだからこそすぐに本人だと分かったようだ。
まさか大人がこんな姿になってるなんて普通は思わないよね。
それに警戒心の強いジンなら尚更。
「話せ、全てだ」
「ええー……怒らない?」
「……………ああ」
「結構間があったから怒る気だよね?」
ムッとしてジンを見ると長い腕も足も組んでじっとこちらを見てくる。
機嫌も決していいとは言えないので渋々話す事にした。
「組織から逃げたくて、死ぬつもりで薬飲んだの」
気が付いたら親切な人に拾われていて、今はその人の家でお世話になってる。
そこまで話すとジンは目を閉じた。
何かを考えているようだったけど、特に口を開く事はなかった。
「ジンが嫌いとかじゃなくて、組織に居ると自由なんてないんだろうなぁってそんな感じで」
ははって笑うとジンはゆっくりと立ち上がり座っている私の目の前まで来た。
その背の高いジンの顔を見上げる。
首が凄まじく痛くなって改めて背が高いんだなと思った。
そしてあろう事かジンは膝をつき、私の小さい体を抱き締めた。
「どれだけ探したと思ってんだ」
ジンの消え入りそうな声に息を飲んだ。
珍しい事もあるもんだ。
こんな弱々しいジンは初めて見る。
「こんなジンが見れるならまた心配掛けたくなるね」
笑って言えばふざけんなと言われた。
やっと、笑ってくれたジンに嬉しくなってジンの頬を両手で挟んで視線を合わせると、ジンも何も言わずジッと見詰めてくる。
「ただいま」
「………おかえり」
初めて聞いたジンのおかえりに胸が温かくなった。
嬉しくてその頭をよしよしと撫でる。
すぐに手を払われまたベッドに戻って行ったけれど、さっきまでの不機嫌なジンとは違い、どこか嬉しそうだ。
「私今小学生なんだよ?」
「あ?まさか、通ってんのか?」
「うん、帝丹小学校の一年生」
そう言うと声を出して笑われた。
うん、絶対組織のメンバーにはバレたくない事だよね。
絶対バカにさせるのは目に見えている。
ふあっと欠伸を漏らせば泊まっていくかと言われたのであっさりと断った。
私には今第二の家がある。
この体で帰るのはあのバーボンの待つ家だ。
最初さえ居心地があまり良くないと思ったけど、今は凄く心地いい空間。
「もう帰るね」
「送ってく」
「いや、いいよ体は子供だけど中身は変わらないし身体能力も鍛えてるから平気」
銃も撃てるし受け身も取れる。
だから平気だともう一度言えばジンは懐に手を入れた。
「だったら、コレ持ってけ」
「ん?え………コレ……」
差し出されたのはジンの使ってる愛銃であるベレッタだ。
「今はコレしか持ち合わせてねぇからな」
ジッとそれを見てたけど、中々受け取らない私にジンは胡乱な顔をした。
「どうした」
「本当にこれ私が持ってていいの?」
「ああ」
ほらよとさらに差し出されると受け取るしかなくなった。
嫌とかではないけど、ジンの愛銃を貰ってもいいものか。
ダメならジンは渡さないけど、それでもと思う所はある。
だから、大事にしよう。
「ありがとう、じゃあ帰るね」
変な感じだ。
前まで帰る所はジンの所だったのに、今は違う。
一緒に帰ろうとかは言ったけど、帰るね、なんて。
私の手には大き過ぎる銃は鞄へと仕舞った。
そして足は扉へと向かう。
(気を付けて帰れよ)
(この年の差ならジンお父さんだね)
(…………)
(銃無しのジンなんて怖くないよね)
(……るせぇ、とっとと帰れ)
(ベレッタありがとう、愛してるー)
