act.07 無くなったモノ
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赤井さんあんた何て事してくれてんだ。
赤所か行き過ぎてるわ!
色が紫に近い。
家に帰って鏡の前に立つとそれは見事に降谷さんの上から付けられているではないか。
もう降谷さんのふの字もないくらいに真っ赤なそれは一週間は消えなさそうだ。
これが赤井さんにされたモノだと知れば絶対対抗心で何かしらしてくる。
そうなれば嬉しいけど気持ちが入ってない限り嫌だな。
引き篭もってやると丸一日本当に家から出る事なく過ごし、二日目に差し掛かった今日は朝から気分転換に髪のメンテナンスへ出掛けてトリートメントでツヤツヤにしてもらった。
そろそろ髪も染めに行かないとな、なんて思いながら帰宅した所で電話が鳴った。
『ねぇ、ちょっと出て来れない?』
「なんで…」
『学校で足怪我しちゃってね、迎えに来てほしいんだ』
「抱っこで帰っていいのなら…」
うん、お願いねなんて言って電話を切られた。
電話は勿論コナン君からだ。
学校で足怪我したなら先生に送ってもらえばいいのに。
きっと私の事を引き篭もりだと思ってるな。
「引き篭もってると思ったけど意外と元気そうで良かった」
ほら見ろ、会うなり言われた第一声だ。
足の怪我はどうした。
嘘か。
私を引き篭もりからさよならさせようとした嘘か。
もう何があっても迎えに行かないとぶつぶつ言っていると、車が隣に止まった。
その車はベンツで、乗っていたのはジョディさん。
ああ、なるほど、凄く帰りたい。
だけど名台詞も聞きたい。
空気になろう、今回は本当に空気だ。
コナン君に腕を引かれやっぱり私も乗車した。
「あなたはお花見の…」
「やっほー」
軽い挨拶をするとなんであなたがと言いたそうな顔を向けないでくれ。
「あらあなたBoyfriendいるのね」
それはそれはまだまだ真っ赤なキスマークを見てジョディさんが聞いて来たので即行で否定をした。
「意外と結構なplayerなの?」
「誰が遊び人だ!逆に遊ばれたんだよ!」
あんたの元カレにね!と叫びそうだったけど我慢した。
それを隣のコナン君はまぁまぁと馬でも宥めるかのように苦笑いで声を掛けてくる。
「それでさ、楠田陸道の話だけど」
「楠田陸道?ああ、水無怜奈の病院に潜入してた組織のスパイね」
やっぱりその話は84巻の最後のやつだ。
そうなればもうすぐ緋色シリーズが始まってしまう。
私もコナン君の仕掛けた監視カメラ弄って家でお酒片手に様子見ようかな。
「それにもう一つ、もしかしたらあの安室って男……」
そこまで言ってジョディさんの携帯が音を立てた。
なんてタイミングだ高木刑事。
澁谷夏子が突き落とされたという事で急いで現場である杯戸公園前へ行く事になった。
二人は車から降りたけど、私はちょっと気分が悪いからと車に残る。
何もする事がなく携帯ゲームに明け暮れていると二人が戻って来た。
コナン君の手にはミルクティーが握られていて椿さんにとくれたのでありがとう!可愛い可愛いと抱き着いてよしよしよしと頭を撫でた。
そしてお金はきちんと返す。
年下の学生からお金なんて取れないよ。
「今から杯戸小学校に行くんだけど大丈夫?」
「うん!私は空気になるから気にしないで」
「あなたってハッカーだから頭いいのよね?」
バカだとでも言いたいのか。
これでもあなたよりは賢い自信がある。
でもハッカーだから頭がいいはまた違う。
化学は出来るけど地理は出来ないみたいな感じでパソコンは得意だけど全ての事が頭に入ってると思わないでいただきたい。
そんな事を一人悶々と考えていると杯戸小学校へと着いた。
車から降りると高木刑事と目暮警部が居たのでぺこりとお辞儀をしてから職員室に入り、皆は事件について話し合っている。
キャメルと視線が合うと、ああ、彼女はシュウの知り合いよとジョディさんが言ってくれたので彼は近付いてくる。
「アンドレ・キャメルだ」
「椿でいいよ」
大っきいな、顔四角いななんて失礼な事を思っているとにこりと彼は笑ってくれる。
あ、チョロそう。
ダメだ、彼に対しては残念なイメージしかないのでマイナスな所しか出て来ない。
「赤井さんと知り合いなのか?」
「一度手合わせ願いたいものだなとは言われてる、截拳道の」
そうかと悲しそうな顔をするキャメルに少し心が傷んだ。
ドライブテクニックは凄いけど本当にFBIでやっていけるのか心配になる。
キャメルから離れ、誰の椅子かは知らないけど適当に座り窓側でクルクルと回ったり外を眺めたりしていると、大好きな声が聞こえた。
「仕方ありませんよ、彼女にストーカー被害の依頼を受けていたんですから…遅くなりました、探偵の安室です」
そこまで言った所でバチッと視線が合った。
ああああ、なんだその服かっこいい。
思い切り視線を逸らし窓を向いて両手をほっぺたに当て顔を挟む。
降谷さんにしてみればなんでここにいるんだと言いたいんだろうけど、コナンくーん!
助けてくれ、と一度椅子から立ち少し前に居たコナン君を抱き上げた所で視線を感じたので見上げると降谷さんはじいっと首元を見ていた。
終わった。
何かが終わった。
そしてコナン君を連れてまた椅子に戻る。
「え、何?大丈夫?」
「大丈夫なんだけどね、首見られた…」
コナン君は最早苦笑いしか返してくれない。
ぎゅーっと抱き締めていると物語はドンドン進んでいく。
「ホォー、FBIですか」
「顔がバーボンになってるかっこいい!目の色素がちょっと薄くなってない?え、ヤバくない?」
勿論小声でコナン君にしか聞こえないように言う。
するとクルッと首を反転させ見上げてくる彼は口を開く。
「ねぇ、椿さんって安室さんの事どこまで知ってるの?」
「ん?どこまで?」
ヤバいな、これはボロが出そうだ。
無視する事を決め込んで話を聞こう。
「手柄欲しさに事件現場に出ばって来てドヤ顔で捜査を引っかき回し地元警察に煙たがられて、視聴者をイラつかせる捜査官…」
「なにっ!?」
うわぁ、生で聞くと凄い嫌味だ。
私がFBIならキレてるな。
キャメルも殴らないの凄いな。
まぁ降谷さんを殴ろうとした所で私がキャメルを殴るが。
「ちょっ、椿さん、抑えてっ」
ん?とコナン君を見ると殺気立ってるよと言われた。
分かる人には分かるようで数人こちらに視線を向けている。
勘違いされたかもしれないけど、決して降谷さんに殺気立った訳では無い。
勿論キャメルにだ。
特に何もしてないけど勝手に妄想が進んでもし殴ったらと思ってしまったのが原因。
頭でも冷やそうと職員室を出る。
客室と書かれた所に入れば灰皿があった為借りる事にした。
それから二本吸った所で職員室へ戻る。
すると高木刑事に声を掛けられた。
「あれ?椿さん煙草吸うんですか?」
「臭いよね、出直して来る」
「い、いえ、そうではないですよ、見た目によらずって意味です!」
バシイッと掴まれた腕になんだそんな事かと思ってさっき座ってた椅子に座り直し、鞄から小さいスプレーを取り出し頭からぶっ掛けた。
消臭効果のある無香料の超絶効くスプレーだ。
「掛け過ぎ」
「まだ臭う?」
コナン君を抱っこして頭を差し出すと首を振ったので良かったと下ろしてあげた。
自分でも服の臭いを確認していると、あの名台詞がとんだ。
「とっとと出て行ってくれませんかねぇ…僕の日本から…」
かっこいいと椅子の上で縮こまっていると、コナン君のゼロと言う声が聞こえたので顔を上げる。
そしてコナン君は私の居る窓側に降谷さんを連れて来た。
「安室の兄ちゃんってさ、敵…だよね?悪い奴らの…」
もう名台詞飛びまくりで脳内やられそうだ。
「…君は少々僕の事を誤解しているようだ」
顔っ!素敵!
ここまで来るとコナン君が可哀想に思えて来るから味方してしまいそうになる。
彼は公安だから大丈夫だよと言ってしまいたくなる。
立ち上がった降谷さんと目が合うと彼はにこりと笑ってくれた。
「あとで話があります」
自らの首を指差している。
いや、笑っていたのはどうやら気の所為だったようだ。