act.06 月夜の遊び
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降谷side
次に会った時の彼女の反応が楽しみだとは思ったが、まさか昨日の今日でポアロに来るとは。
それも男連れときた。
さらにはその男と手を繋いで入店してきた。
見掛けない顔だが彼女とはどんな関係なのか。
梓さんは気まずそうな顔で自分を見てきて、彼女とも目が合ったのでにこりと笑っていらっしゃいと言った。
すると彼女は彼の手を離し全力で顔を覆う。
隠れてない耳は真っ赤だ。
その事にくすくすと笑ってしまっていると梓さんは二人分のお冷を入れている。
彼に腕を引っ張られて外の見えるテーブル席へと移動した二人に梓さんはお冷を持っていく。
「誰ですか?このイケメンは」
流石俺の事を応援すると言っていただけあって梓さんは俺が聞きたい事を聞いてくれた。
すると彼女は戸惑って口篭っている。
紹介出来ない何かが彼にあるのか、それとも二人の関係にあるのか。
「知ってる事全部言ったらいいじゃねぇか」
頬杖をついて堂々としている彼にじゃあ遠慮なくと口を開いた彼女は男の名前や誕生日、血液型にそれだけに留まらず好物や嫌いなものまで言ってのけた。
「あとはー…超絶頭いいよね?」
「ん?ああ、まぁな」
彼も自信家か。
椿さんが彼の事を超絶をつけて頭がいいと言ったので相当頭が切れるのだろう。
黒羽快斗…。
彼について考えていると話はキスマークへといっているようで、答えに悩んでいる彼女と視線があった。
「二人は恋人ですか?」
梓さんは彼がキスマークを付けたと思っているのか二人の関係性を聞いた。
「俺は別にいいけどな」
「適当な男はモテないよー?」
棘のある言い方に昨日の自分が蘇ったが、あれは決して適当で付けたわけではない。
バーボンとしてハニートラップは山のようにして来たがキスマークを付けた事など一度だってない。
そこまで考えてから、じゃあ何故彼女には付けたのかと疑問に思った。
一方的なキスはダメだと口は彼女の首筋にいっただけで…ああ、かなり好きなんだろうな、彼女の事が、誰にも取られたくないくらいに。
「快斗はただの同業者だよ」
「同業者ねぇ」
はははっと笑った彼女に対してニヤリと彼は笑っている。
同業者とはどういった意味なのか。
あの若さでハッカーなのか、それとも組織にいるのか、俺の知らない何かで繋がっているのか。
兎に角彼に対しての疑問はやまない。
梓さんも疑問に思って口に出してはいたが、その事に対して彼女は聞こえないふりを決め込んでいる。
「チョコパフェお願いします」
「じゃあ俺も」
梓さんがキッチンへと戻ってきて聞こえていたが一応注文を聞く。
チョコレートパフェが二つ。
それを作り出した所で彼女がカウンターまで駆けて来て、手に持っていた紙袋を受け取った。
「ポアロの皆さんで食べて下さい」
にこりと笑ったのでそれに答えるように笑い返し、お湯を沸かそうとしていた梓さんへ渡すとキッチン裏へと紙袋を持って行った。
すると、彼女からもう一つ紙袋を渡された。
中身を見るといつか貸した服が透明の袋に入れられていて、それと包装紙の箱が入っている。
「これは?」
「遅くなったんですけど、洗ったら血が取れたので一応と思いクリーニングにも出しました。本当に遅くなってすみません」
そっちじゃないんだがな。
中身はなんなんだと首を傾げる。
すると彼女に昨日のお礼だと言われた。
「お礼はあれでいいと言ったのに不満でしたか?」
眉を八の字にすると彼女は消えた。
いや、カウンターから覗き込めば顔を覆ってその場に蹲っていたので苦笑いが漏れる。
すると彼は素早く近寄ってきて回収と言い腕を掴んで立たせようとしたが、彼女が立つことはなく、溜め息を漏らした彼はひょいと見事に彼女を横抱きにしていた。
席に戻る際、一瞬目が合った。
「ちょっ、ここ店内だからっ」
「腰抜かしてるやつが言うセリフか?」
店外だったらいいのか。
今のは誤解を生む言い方だ。
そして彼女も彼の首に腕を回してしがみついている。
ダメだ。
見てるとまた何かを割ってしまいそうだ。
だが気になるから見てしまう。
「安室さん、顔が怖いですよ?」
いつの間にか戻って来ていた梓さんに指摘を受けた。
まずいな、安室の顔が怖いとは。
そんな事ないですよと梓さんには笑っておいたが、あの白い紙袋はなんだ。
以前花見会場へ行った時もジンから何か貰っていたな。
中には何が入ってるんだ。
嬉しそうに抱えてトイレに入った彼女を見送ってから一人分出来たチョコレートパフェを梓さんに持って行ってもらった。
お礼を言って受け取った彼は立ち上がって店に置いてある今日の新聞を掴み席に戻ると、彼女もトイレから戻って来たので彼女の分のパフェも持っていく。
トイレへ入る前は確かにあった紙袋が今はペタンと潰されていてその紙袋を鞄にしまった彼女。
見た感じどこも変わった様子はないのだが、一体何を貰ったんだ。
キッチンへと戻り新しいケーキでも作ろうと材料をボウルに入れていく。
「かっこいいよねー怪盗キッド」
ああ、それは昨日警視庁の屋上で聞いたな。
「だよなー本当憧れちまうぜ」
「昨日中森警部家帰ってないんじゃない?」
「ああ、青子がまたやられたから始末書終わらないって嘆いてたな」
青子とは?
それに彼は中森警部と面識があるのか。
ぷっと笑ってご愁傷様と言う彼女は中森警部で遊んでいるのは丸分かりだ。
笑顔で食べ進めているので拒食症はもう治ったのか疑問に思う。
「あ、ねぇ白馬探って今日本にいる?」
その名前は聞いた事がある。
確か探偵をしていて白馬警視総監の息子だった筈だ。
「いや、アイツなら今ロンドンだな、たまーに無駄な電話寄越しやがるが…紹介はしねぇからな」
年も同じくらいだし同級生の線が強いか。
そうなると青子と言っていたのも中森警部の娘か何かか。
なるほど、彼女の意図がやっと分かった。
警察の上層部と親しくなろうとしているのか。
何の為かは知らないがまぁ知り合いにしといた方が動きやすいのは確かだ。
「おめぇ人脈増やす気だろ、白馬警視総監は面倒臭いからやめとけ」
さらにその狙いがトップか。
やめとけと言われた彼女はちっと舌打ちをしていた。
バリバリと底に入ってるフレークを彼女が食べていると、彼は外を見てからやべっと声を漏らす。
なんだと思い外を見たが特に変わった様子は見られない。
「残念、詰めが甘かったね」
さっきの仕返しとばかりにニヤリと笑っている彼女。
彼は焦りながらもチョコレートパフェを口に含んでいる。
「逃走するなら今のうちだよ?」
「ああ、そうするぜ」
ご馳走さんと言って綺麗に食べ終えたパフェのグラスをそのままに逃げるかのようにポアロから出て行った。
そんな姿を彼女は笑いながら見送っていた。
すると入れ違いで少年探偵団が入店してきたのでいらっしゃいと声を掛ける。
「あー!椿お姉さんだ」
子供達に見つけられて彼女は手を振ると4人共そのテーブル席へと座った。
梓さんは洗い物をしてくれていたのでケーキをオーブンに入れた所でお冷を5人分持って行く。
それを机に置いてから彼の食べたグラスを片付ける。
「あれ?誰かと一緒だったの?」
コナン君の疑問に若いイケメンと答えた彼女。
それは俺が年のいったイケメンだとでも言うのか。
男は三十からだと言うので気にはしないが、もしかすると彼女は年下好きなのか。
コナン君以外の子供達からは彼氏なのかどんな人なのかと疑問がとんだが、ふと見つけられた首筋の赤に子供は純粋に疑問を口にした。
「姉ちゃんここ噛まれてるぞ?」
「この時期まだ蚊はいないですよね?」
「椿さん…だっ」
何かを言い掛けたコナン君は強制的に彼女によって黙らされている。
ひょいと抱き上げてコナン君を膝の上に座らせたのだ。
ギロっと睨んでしまったのかコナン君はビクリと肩を揺らすとゆっくりと視線が合った。
いけないいけない。
「昨日ね、安室さんの車乗ったんだけどその時にでっかい虫がいて…」
虫か。
どんな虫だったか詳しく聞きたいものだな。
純粋な子供達は未だに疑問をぶつけている。
居たたまれなくなったのか彼女はコナン君を膝から下ろし、チョコレートパフェを完食してからその場に札を置いて逃げるかのように去っていった。
いや、逃げた。
子供と大人の立場上、ましてや親じゃないから本当の事は答えられないだろうな。
その様子に笑ってしまうとコナン君は首を傾げて見つめていた。
ああ、次、二人きりになる機会があれば少し遊んでやろうか。