act.06 月夜の遊び
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「あ、あの…椿さん、それ…」
メニューを梓さんから受け取り、快斗と見ていると控えめに言われたのはキスマークの事。
指で自らの首を差したのでなんて答えようかと考えていると、梓さん越しに降谷さんと目が合った。
「二人は恋人ですか?」
ん?手が快斗と私を行ったり来たりしている。
ああ、なるほど、このキスマークは快斗が付けたと思ってるのか。
「俺は別にいいけどな」
「適当な男はモテないよー?」
「え、じゃあ違うんですか?」
「快斗はただの同業者だよ」
はははって笑った私に対して同業者ねぇと呟く快斗はニヤリと笑っている。
なんだ、私が同業者だと不服か。
手品は出来ないけど、犯罪者同士じゃん。
「同業者?」
梓さんからの疑問はやまないらしい。
仕方ないのでこの話はもう終わらせようと、聞こえなかった事にしてチョコパフェを頼めばじゃあ俺もと便乗して来た。
それよりこれ渡さなくていいのか?と視線を紙袋へと向けた快斗。
そうだったと思い出し袋を両手に持ってカウンター席まで行き降谷さんに声を掛ける。
「あの、これ……」
パフェの底の部分を作っていた降谷さんが顔をあげて、すぐ様手を洗いタオルで拭いてから紙袋を受け取ってくれた。
ポアロの皆さんで食べて下さいと言えば、降谷さんはそれを梓さんに渡していた。
嬉しそうにお礼を言ってバックヤードへと入った梓さんを見送り、降谷さんにはもう一つの紙袋を渡す。
「これは?」
「遅くなったんですけど、洗ったら血が取れたので一応と思いクリーニングにも出しました。本当に遅くなってすみません」
「いえ、そうではなく、この包みの方なんですが…」
紙袋を広げて中を見ている降谷さんは首を傾げている。
今日も可愛い。
「昨日のお礼です、お口に合うか分かりませんけど」
「お礼はあれでいいと言ったのに不満でしたか?」
頑張って正常を保っていたけど、無理だ。
今すぐここから離れたい。
全力で顔を覆いその場に蹲る。
「はいはい、回収ー」
快斗が腕を掴んで立たせようとしてくれたけど、腰が抜けた。
いや、人生で初めて腰が抜けたよ。
それを見越して快斗にひょいとお姫様抱っこをされた。
「ちょっ、ここ店内だからっ」
「腰抜かしてるやつが言うセリフか?」
慌てて首に腕を回してしがみついたけど今は空を飛んでないので落ちても問題ないと手を離した時には元の位置に下ろされていた。
そして水を一口飲むと目の前に出されたのは白い紙袋。
そんなの持ってたっけ?と疑問に思ったけどああ、彼の得意技だったと納得した。
物も神出鬼没か。
もうこの人の場合なんでもありだな。
「これ…」
「ああ、言ってたやつ」
「ありがとう!」
中を見ると如何にもプレゼントですと可愛くラッピングされてはいたけど、、この重さは大切な愛銃のモノだ。
ちょっとお手洗い行って来ると紙袋を抱えて入り、ラッピングを解いて愛銃を確認してから内ポケットへと仕舞う。
そして席に戻るとチョコパフェを食べながら新聞を読んでいる快斗の姿があった。
ポアロの新聞かと思った所で降谷さんが私の分のパフェを持って来てくれて、お礼を言うとキッチンへと戻って行ってしまった。
その背中を見送ってから快斗に視線を戻すと昨日の怪盗キッドの記事を見ている。
「かっこいいよねー怪盗キッド」
チョコパフェの一番上に刺さっていたホワイトチョコをパリパリと食べる。
美味っ!ただのチョコなのに美味しい!
「だよなー本当憧れちまうぜ」
自分で言ったな。
それとも先代の事か?
「昨日中森警部家帰ってないんじゃない?」
「ああ、青子がまたやられたから始末書終わらないって嘆いてたな」
ぷっと笑ってしまった。
ご愁傷様だ。
毎度始末書書いてるのかあの人。
チョコアイスを口に入れるとそれはもう降谷さんどんな作り方してるんだと言いたくなるくらいに美味しい。
このアイス買ったやつじゃないのかな?
今の所胃が落ち着いてるから吐き気もないし今日は好調だ。
「あ、ねぇ白馬探って今日本にいる?」
「いや、アイツなら今ロンドンだな、たまーに無駄な電話寄越しやがるが…紹介はしねぇからな」
「まだ何も言ってないのに…」
「おめぇ人脈増やす気だろ、白馬警視総監は面倒だからやめとけ」
ちっと舌打ちが漏れた。
警視総監は知り合いになっとけば後々その地位は役に立つかもしれないと思ったのに、快斗がこの状態ならきっと何言っても無駄だ。
底にあるフレークをバリバリと食べていると快斗が外を見てやべっと声をあげた。
「残念、詰めが甘かったね」
ニヤリと笑ってやる。
哀ちゃん以外の少年探偵団の4人で歩いて来るのが見えたので目の前の快斗は焦っていた。
コナン君の家に行くのはあまり考えられないのでおそらくポアロへ来る筈だ。
「逃走するなら今のうちだよ?」
「ああ、そうするぜ」
じゃあな、ご馳走さんと言って快斗は綺麗に食べ終えたチョコパフェのグラスをそのままに逃げるかのように走ってポアロから出て行った。
勿論元あった場所に新聞を戻す事を忘れずに。
そんな姿に笑っていると少年探偵団が入店した。
いらっしゃいと降谷さんと梓さんが声を掛けている。
「あー!椿お姉さんだ」
歩美ちゃんに発見されたので手を振ってみると近付いて来て隣に腰掛けた。
それに続きコナン君は歩美ちゃんとは逆隣に、光彦くんと元太くんは前に座った。
待てこれ私が奢らないといけないやつじゃないか。
「もう具合いいの?」
「具合?」
「ほら、あのお花見の時、凄く気分が悪そうだったので」
「それならもうバッチリ」
笑顔で答えてあげると良かったーと純粋な笑顔を向けられた。
降谷さんはお冷を持って来てくれた代わりに快斗が食べ終わったグラスを下げてくれる。
「あれ?誰かと一緒だったの?」
「うん、若いイケメンとね」
「え……」
それって誰?とコナン君は聞こうとしたんだろうけど、それよりも早く皆は口々に喋っていく。
「えぇー椿お姉さんの彼氏ー?」
「どんな人なんですかー?」
「それより姉ちゃんここ噛まれてるぞ?」
「本当だー」
「この時期まだ蚊はいないですよね?」
「椿さん…だっ」
誰にやられたのと言いたかったのか口を塞ぐかわりにコナン君をひょいと抱き上げて膝の上に座らせる。
「昨日ね、安室さんの車乗ったんだけどその時にでっかい虫がいて…」
その虫どうしたんですか?とか大丈夫だった?とか聞かれたけど、もうここに居たくないと逃げる事にしよう。
コナン君を私が座っていた位置に下ろし、チョコパフェを完食してからその場に万札を置いて早々に去った。
え、もう行くの?とか歩美ちゃんの可愛い声が聞こえたけどごめんね、用事あるからと逃げた。
「それで着いた先がここか」
「そう仰らず」
米花デパートに寄ってから手土産を持って来ただけ偉いと思ってほしい。
「赤井さんも虫に噛まれればいいのに」
「言ってる意味が分からんな」
着くなり昨日の事を話し、ポアロにいると少年探偵団が来たと簡潔に述べた。