act.06 月夜の遊び
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降谷side
三人で階段を下りてる最中風見はまだ仕事があると途中の階で別れ、彼女と二人駐車場まで来た。
「事情聴取ではないが個人的に全て聞きたいから話してくれ」
「それはいいんですけど私車あるので…」
「ここまではキッドと来たんだろ?」
ハンググライダーで飛んで来たと思ったが違うのかと首を傾げる。
送るのを断られたとしても何が何でも乗せる気なので助手席の扉を開けて彼女が乗るのを待った。
キッドからの予告状のあった所に車を止めてあるそうで、ここからだと結構掛かると言われた。
「特に急ぎの用もないからそこまで送られてくれ」
「俺様ですね…」
タメ口は嫌いなのかと思った所で彼女はやっと車に乗ってくれた。
運転席に自分も座る。
「…この喋り方が嫌なら「ああああ、新鮮でいいです!そのままで!特に改善とかはいらないので!」」
いつもの彼女に戻ったようで雰囲気が柔らかくなった。
そして携帯を取り出してメールを打つ彼女にコナン君かと聞けば、心配してるだろうからと画面を見つめて操作している。
仕方ないと彼女の前へ体を乗り出してシートベルトを締めた。
その事に彼女は携帯を膝の上に置いて両手で顔を覆っていたのでいつもの彼女だと笑ってしまった。
そして自分もシートベルトをしてからクラッチを踏みアクセルを踏んだ。
「椿さん、ナビの操作をお願いしても?」
「え、私が触っていいんですか?」
「触らないと場所が分からないのでお願いします」
一瞬悲しそうな顔をしたものの、首を傾げた彼女に同じく首を傾げる。
電子音を鳴らしてナビの操作を始めた彼女。
その手前でシフトレバーに手を掛けているからか何度か電子音が聞こえなくなったと思えば俺の手を見つめている彼女の姿。
なんだ、俺の手に何がある。
それとも今度はレバーを動かしたいとか言わないだろうな。
スっとシフトレバーから手を離してハンドルを持つとその視線は追い掛けて来た。
レバーに興味があるのではなく興味があるのは俺の手か。
ルート案内を開始しますとナビが伝えてくれた所で彼女はシートに深く腰掛けた。
手をシフトレバーに戻そうとした所で、その視線は再び手に向けられたのでチラと彼女を見てその手で彼女の頭を撫でてみる。
「ひっ」と引き攣る声が聞こえた。
なんなんだ。
俺の手は怖いのか苦手なのか嫌いなのか。
もういい本題に入ろうと手はシフトレバーに戻し、それで?と今日あった話を聞かせてほしいと彼女に疑問を投げた。
「コナン君から電話があって…キッドが警官に変装してるの見抜いちゃってそれで気が付いたら警察の所に」
「かなり簡潔に言いましたね」
「イチから話すと凄く長いんですよ」
目が覚めた所から話さないとと言ったのでそれは遠慮しといた。
「コナン君にはバーローと言われましたが」
可愛いと言って両手で顔を覆っている。
彼女の基準が分からない。
バーローはバカ野郎の事じゃないのか?
若者言葉とかならまだ何とかついてはいけるが、バーローは聞いた事がない。
「中森警部とは知り合いなんですか?」
「いえ、ついさっきキッドの予告したビルで会いました」
そこで自己紹介しましたとケロッとした顔で言った彼女。
「やっぱり元から知ってましたね」
「そうですね、知ってました」
にこりと笑う彼女は目を閉じて思い切り深く息を吸った。
さっきから何度かその行為を見るのだが、何か意味があるのか。
「なんで元からだと思ったんですか?」
「自己紹介をするにあたって基本係までは言わずに捜査二課で止める筈だと思ったからです」
必要でない限りまず言わないだろう。
ましてや今日会ったばかりでそれもついさっきビルでと言ったのでキッドの予告前だった筈。
そんな場面ではそんな紹介の仕方はしない筈だ。
「あそこまで言ったのはわざとで嫌味です」
嫌味とは彼女も中々の性格をしている。
そうでなければあの手帳を持ってた意味も…。
そうだ、拳銃だ。
「ベレッタはどうしたんです?」
聞いてほしくなかったのかビクリと体を跳ねさせた彼女。
凄く分かりやすいな。
赤信号で停まったので彼女の表情を窺う。
チラッとその視線は合ったがすぐに逸らされた。
彼女の向こうに見えた月は今日はくっきりと姿が見えている。
「共犯ではないんですけど、知り合いと言うかなんと言うか…」
「誰と……まさかとは思うが…」
視線が泳いだ。
あの怪盗とまさか知り合いとは。
だとしたら、ベレッタは最後に預けたのか?
身体検査をされると読んでいたと?
知り合いだとして、何故手の甲にキスをしたんだ。
いくらキザな事を言ったりしても知り合いで何もない関係だったらキスなんてしないだろう。
例え手の甲だとしてもだ。
それに薬指に指輪を嵌めていた事も気に障る。
「あのー、放送ギリギリの顔してますけど大丈夫ですか?」
「どんな顔だそれは」
「モザイク掛かりそうな感じです」
何が面白いのかヘラっと笑われた。
少し話が逸れたが、結局あの怪盗がベレッタを持っているのかと聞けば彼女は頷いた。
あれだけ大事な愛銃だと言うのに預けたのか。
その疑問も彼女にぶつける。
「なんと言うか、成り行きで掴まれて、それでするりと逃げられたと言うか…彼上手いですね色々と」
待て、今の発言はダメだろ。
何が色々と上手いんだ。
すると目的地付近へ到着しましたと機械音声が車内に響いた。
この近くかと辺りを見ると駐車場に止まった黒い彼女の愛車を見つけたのでハザードをたいてRX-7を脇に停める。
「すみません本当にありがとうございます!」
車内だと言うのにバッとこっちに向け頭を深々と下げた彼女にははっと笑ってしまった。
終いにはシフトレバーで額をゴツっと打っていて、自分の額ではなくごめんなさいとレバーを気遣っている。
声を出して笑ってしまうとキョトンとした彼女の顔は少し赤くなった。
ああ、もう可愛いな。
「そ、それじゃ、このお礼はまたさせてもらいますね!」
シートベルトを外して扉に手を掛け降りようとしたので笑いを止め彼女の右腕を引っ張った。
えっと漏れた声と振り向いた彼女は同時で、その頬に右手を添える。
「降谷さん…?」
「お礼はこれでいい」
顔を近付けたが一瞬で判断して、右手でするりと頬に滑らせ髪を退けてからその首筋を軽く吸ってリップ音をさせ、それから離れた。
固まっている彼女にまたふはっと吹き出してしまえばやっと我に返ったようで失礼しましたと車から降りていった。
そして彼女が自らの愛車に乗るのを見送ってから相棒を発進させる。
次に会った時の彼女の反応はきっと見ものだな。