act.06 月夜の遊び
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降谷side
ベルモットと楠田陸道について話したい事があったので助手席へ乗せてホテルまでの道を走っていた。
そんな時、バックミラーに映ったのは見知った車。
サイドミラーで確認すると腕を出して煙草を吸っている彼女が見えた。
少し走った所で左の車線へ移動した彼女に、家とは方向が違う為これから何処へ行くのかと思考を巡らせるが答えは出て来ない。
二車線道路を真っ直ぐに走行しているとやがて信号で停まった時丁度彼女の車と並んだ。
「あら、何処まで行くの?」
思っていた事をベルモットが聞いてくれた。
チラッと彼女と目が合ったがあくまで仲はそこまで良くないようにしないといけない。
にこりとも笑わずに彼女の様子を窺う。
ベルモットの問いに対して彼女は何かを話していたが、エンジン音が煩くここまでは届かない。
「山?こんな時間に?」
なるほど、彼女は今から山へ行くのか。
何をしに。
こんな真っ暗で星も出ている時間に山で何をするのか。
するとベルモットが物騒だと言ったのでおそらく表立って出来ない事でもやるのか。
そう考えていると今度は酒が強いと褒めていた。
信号が変わり発進させようとした時、銃声が聞こえ赤信号から車が飛び出して来て前方を走って行く。
その際に警察の先頭車が横転して残りの車は動けなくなった。
勢いよく車を急発進させると、隣の車も同じく走行している。
「知らないわよ、バーボンに言ってちょうだい」
両手を返してふぅと息を吐くベルモット。
相手は拳銃を所持していて犯人が何人いるかは分からないので一発で決めないといけない。
相棒には悪いがまた修理をする事になりそうだ。
だが、それをするには左隣にいる彼女の車が邪魔だ。
チラと彼女を確認すると器用に口と片手で愛銃にサイレンサーを装着していた。
そして速度をあげ体を窓から乗り出した。
何をする気だと叫びたかったが、ここから撃つには少し的が小さ過ぎる。
「あなた、まさかこの距離を撃つ気?」
集中しているのか聞こえていないのかベルモットの声に反応する事もなく、ベレッタは火を吹いた。
二回だ。
キュルキュルとタイヤの音がした為彼女はあの位置からタイヤを撃ち抜いたのだと気付く。
確かに自分だったらタイヤを撃っているだろう。
だがそれはもう少し距離が縮まっていて片側しか動いていない状況でだ。
お互いが動いていてあの距離を撃ち抜くのは余程の自信がない限りまずしない。
「見事ね、あのジンがお気に入りにするのも分かるわ」
ドォンと音がして前方の車がクラッシュして止まった。
ボンネットの所からは煙が上がっている。
ここまでいけば後は警察が何とかするはずだ。
右へウインカーを出すとベルモットはふふっと笑った。
「またね、子猫ちゃん」
ヒラリと彼女に手を振った所でベルモットは窓を閉める。
そう言えば彼女から、今朝ジンとウォッカの写真が送られて来たが未だに返事はしていない。
何か返さなければと思いつつもあの写真のみが送られて来た為に返事に困った。
二人並んでハムサンドを食べていたな。
あれはてっきり椿さんとジンの分だと思っていたがやはりまだ彼女は食べられない状態なのか。
ふぅと息を吐くとベルモットはあらやだ溜め息?なんて大袈裟に言ってくる。
「彼女、これから山で撃つらしいわ」
「撃つ?銃ですか?」
「ぶっ放しにって言ってたからそう取ったけど…違うの?」
「いえ、まぁそうでしょうね」
こんな時間に一人なのか?
そうだとすると危険過ぎるだろ。
一体彼女は何を考えてるんだ。
ジンは確か仕事だとベルモットが言っていたから奴は誘っても行けないだろうし、赤井でも誘う気か。
もしそうなら何故俺じゃない。
忙しいから。
彼女なら言い兼ねないが…まぁ外れてもない。
「それより最後のピースはどうなってるの?」
「ええ、それでしたら着実に進んでますよ」
もうすぐで片がつく。
そう、椿さんに聞かなくても証拠を掴んで赤井を追い詰めてやる。
ホテルに着き、玄関前でベルモットを降ろして少し走った所で盗聴器がないか確認をしてから本庁へと向かった。
仕事を全て終わらせようと気合いを入れる。
「お疲れ様です」
「お疲れ」
車を定位置に止め、口々に挨拶をされる。
そして人が少なくなっていくので静かで捗るかとも思ったが、そうも中々行かず、今日はあまり進まなかった。
何度も休憩を挟んだが目だけが疲れていく。
手が進めば時間も早く感じるものを、今は進み具合も悪く、時間が経つのも遅い。
やっと仕事を終えた所で風見のいる公安部への書類をまわす為、外へ行けば辺りはもうすっかりオレンジ色で陽は沈もうとしていた。
「降谷さん!今日はこっちだったんですね」
「ああ、やっと終わった」
風見のデスクに持ってた書類の束を置いた。
そこで隣の椅子が誰のモノかは知らないがもう帰っていて居ないようだったので座らせてもらう。
「昨日の事件知ってるか?」
「昨日、ですか?」
「警察が追ってた銃を持った犯人の車だ。両後輪のタイヤがパンクしてクラッシュした筈だが…」
ああ、と思い出したかのように風見は口を開く。
どうやら二人組みの男が銀行に押し入り一千万程鞄に詰めて逃走していたようだ。
たまたまあの場に居合わせた犯人も運が悪かったな。
「後輪のタイヤは二つとも銃によってパンクさせられていたようで、その犯人を見つけるのに捜査が難航しているそうですよ」
彼女の事だから防犯カメラを書き換えるなんて朝飯前だろうな。
「このままいけばお宮だそうです」
迷宮入りか。
そうしてもらった方がありがたい。
特に犯人に手助けしたわけでもないが拳銃を所持してるだけで捕まる。
「あれは彼女が撃った」
「彼女…ってまさかっ」
「ああ、怖いくらいの腕前だ」
くくっと笑いが漏れた。
そんな時、放送が流れる。
これは緊急を要するもので風見の眉間も険しくなった。
なんでも中森警部が今日も怪盗キッドを追っているようでそのキッドが女性を連れ去りわざわざ本庁の屋上に降り立ったらしい。
キッド逮捕と女性の保護協力を願いたいようだ。
「どうします?」
「どうもこうもコソ泥に興味はない」
公安ともあろう自分が何故怪盗の事でたかが警部の協力要請を受けなければいけない。
とは思ったのだが、何故か足は屋上への階段を上り始めている。
「ふ、降谷さん?」
「一度見てみる」
額に手を置いた風見は後をついてくる。
怪盗キッドには興味がないのは確かだが、怪盗が何故女性を連れ去ったのかには興味がある。
ただそれだけ、少しの興味が引き合わせてくれただけだ。