act.06 月夜の遊び
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「奢られねぇから返してこい」
走ったので三分程で持ち帰る事が出来、早速朝食にしようと机の上に出しながらこれはバーボンの奢りだよと言えば前文が返って来た。
まぁ言うと思ってはいたけど。
蓋を開けると美味しそうな匂いが漂ってくる。
いただきますとジンよりも先にパクリと食べる。
「食えんのか?」
「分かんないけど食べたいから食べた」
だって降谷さんのお手製だよ?
降谷さんが触ったパンだよ?
そりゃ食べる。
なんなら手事食べたい。
そこでん?と昨日ジンに噛み付かれた事を思い出した。
降谷さんに噛み付く気はないけど、ひょっとすると似たような気持ちだったりして…。
いや、ないか。
ジンが私の事をストーカー並に愛しているとかないか。
そんな時、ピンポーンと部屋に響く呼鈴。
誰だとモニターでエントランスを確認するとそこにはウォッカの姿があった。
通話を押して開けるねと言えば颯爽と携帯を見ながら部屋へと上がって来た。
「お迎え?」
「はい、兄貴に呼ばれてきやした」
丁度良かったとリビングに連れ込みハムサンドをあげる。
「バーボンのお手製!美味しいから食べて!」
「バーボンの?」
ジンを見るとやっぱり食べていたのでニヤリと口角があがった。
前に食べたのが凄く美味しかったのだろう文句は言いつつ食べているではないか。
ウォッカにバーボンの名前を出した為、それを食べているジンを見て凄く驚いた顔をしていた。
「ゼロは食べたんですかい?」
「今拒食症だから一つだけ」
今も少し胃が気持ち悪いので薬を飲んだ。
ウォッカにもコーヒーを淹れてあげて二人並んで食べてる所をカシャーっと写真を撮った。
ダメだ可愛いな。
ぶはっと噴き出して笑ってしまえばそれはもう人一人殺せるくらいの睨みを貰った。
それをすぐ様ジンの携帯と降谷さんの携帯に送る。
目の前で携帯を確認したジンはいらねぇと呟きおそらく削除しただろう。
「そういやてめぇ待ち受けバーボンだったな?」
「えっ、あ!昨日の電話の時っ!」
見たのか恥ずかしい。
あ、それか降谷さんに対してのヤキモチだとか。
そうならそうと言ってくれれば転送したのに。
「変な考えはするなよ?脳みそぶちまけられたくなかったらなぁ?」
なんて物騒な事を言うんだ。
キッチンに立ってズズっとストレートティーを飲む。
それから完食した黒い二人はあっさりと帰って行った。
さて私は一度寝ようかとも思ったけど、眠くもなかったので出掛ける事にした。
車のナビでどこの店舗に行こうか検索してから近場でいいかと足を向ける。
向かった先はカラオケだ。
こっちの世界に来てからそこまで曲は知らないものの、向こうの世界と同じモノもあった為それでストレスを発散しようと訪れた。
勿論フリータイム。
それからあっという間に時間は過ぎる。
ガッツリ九時間も歌えば喉も少しは痛む。
だけど気にしないで運転席の窓を全開にして煙草を吸う。
一徹目だけど九時間もぶっ通し歌えば楽しかったけど目にも来る。
だらんと窓に肘を置く姿は最早おっさんだ。
左手でハンドルを握ってこのまま山に向かおうと二車線を走行していると、前に見知った車が走っていた。
夜でも光って見える白のRX-7だ。
それは車が本当に光っているからなのか私の目がおかしいのか。
まぁ後者だけど。
この道をまーっすぐ行けば左に曲がらないといけないので私は左車線を走行します。
うわあぁぁどうしよう、この車を動かしてるのは降谷さんだと思うとRX-7を凝視してしまう。
歪む事なく真っ直ぐ白線と平行に走っている。
ダメダメ、そんなに見つめると愛車が自滅してしまう。
「でもかっこいいぃぃぃ!!」
誰か助けてとイヤホンを右耳にはめて赤井さんに掛ける。
すると瞬時に出てくれた。
「ありがとうございます空気読んでくださって!」
『なんだ?』
「今ね、安室さんの斜め後ろを運命的遭遇で車吹かしてるんだけど、嬉しくて綺麗過ぎてつい電話したの!」
煙草の灰を窓からポトっと落とす。
灰はギリポイ捨てではないと思うんだけど、アウトか。
前の車が信号をギリギリで通過して行った為にRX-7の隣に自然と停止してしまう。
「横に並んでしまうっ私もう息吸えないっ」
『そうか、それは残念だ』
「え、ごめん謝るから切らなっ…」
切られた。
ひょっとして忙しいのかと思ったけどまぁ後でまた連絡しよう。
信号で止まり、ふーっと白煙を長く吐く。
「あら、何処まで行くの?」
右隣から声が聞こえた。
やっぱりベルモットも乗っていたか。
その奥には降谷さんもいる。
目が合ったけど笑ってはくれない。
「ちょっと山まで」
「山?こんな時間に?」
イヤホンを外して助手席にある鞄のポケットへと直す。
そして再びベルモットに視線を向けにこりと笑う。
「ストレス溜まってるからぶっ放しに」
「物騒ね」
クソぅ、なんでそんなに色っぽい喋り方が出来るんだ。
物騒ねだけで男を虜に出来るよ。
煙草を灰皿に押し付け、ドリンクホルダーに置いてあったビールを喉に流し込む。
「飲酒?余っ程お酒が強いのね」
ダメだ。
何を聞いても嫌味にしか聞こえない。
頭痛いとこめかみを抑えていると信号が変わり発進させようとした時、銃声が聞こえ向こうの赤信号から車が出て来て前を走って行く。
その際に警察の車の先頭車が横転して残りの車は動けなくなった。
仕方ない、ストレスもこの隣の女の所為でまた溜まってしまったので勢いよく車を出した、のだが、隣の車も同じく走行している。
「ちょっと、なんで発進したの」
「知らないわよ、バーボンに言ってちょうだい」
両手を返してふぅと息を吐くベルモット。
バーボンが車を吹かせばきっとRX-7が可哀想な事になるのは目に見えているので、私がなんとかしようと愛銃に口と右手で器用にサイレンサーを装着し、左手と左足で車を操作する。
そして速度をあげてから窓から身を乗り出す。
一度後ろを確認して警察が来ていないのを確認する。
「あなた、まさかこの距離を撃つ気?」
少し後ろから声が聞こえたけど、気にする事なく構えた。
そして、チュインと後輪に一発ずつ撃ち込んだ。
それでもまだ走ろうとする車に溜め息が出る。
まぁ長くはもたないと距離を保ちながら走行していると隣に来たRX-7。
「見事ね、あのジンがお気に入りにするのも分かるわ」
また嫌味か。
そしてなんで隣に来る。
降谷さんもベルモットのいう事なんて聞かなくていいのに。
ああもうっ!
羨ましいな助手席っ!
ドォンと音がして前方の車がクラッシュして止まった。
ボンネットから煙が上がっているけど大丈夫か。
まぁ後でどうなったかは降谷さんに聞くとして、私はナビ通り左折しようと指示器を出す。
「またね、子猫ちゃん」
ヒラリと手を振られ、先に右折していったRX-7。
なんだ、凄く負けた気がするのは気の所為か。
クソぅとこのストレスも山でぶっ放す事にした。
一日でいいからベルモットになってバーボンをふりまわしたい、切実に。
因みに今朝ジンとウォッカの写真を降谷さんに送ってからの返事は未だにない。