act.05 桜色の季節
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ベルモット、ベルモット、ベルモットと頭の中がぐわんぐわんし出したのでコナン君を掴まえて抱っこする。
「本当、これするの椿さんくらいだからね」
「うん、ありがとうコナン君」
ぎゅうっと抱き締める。
「いつもなの?」
ジョディさんに聞かれるのでこれしてたら落ち着くのと言って笑顔を向けるも、きっといつものようには笑えていない。
情緒不安定だと呟けばコナン君には苦笑いを貰った。
「落ち着くってあなた精神疾患か何か持ってるの?」
「病気じゃないよ、至って健康だけど」
精神疾患とは…確かに不安定過ぎるから一度病院に行くのも悪くないかも。
そんな時、コナン君のポケットで携帯が震えた。
下ろしてと言われたのでストンと地面に足をつけてあげる。
そうだ、すっかり忘れてたけど私の財布!
コナン君とジョディさん、それに少年探偵団の皆が走って殺人現場へ行ってしまった。
そうだ、これも忘れてた。
黒兵衛、殺されるから、事前に防がなければならなかったのに…出来なかった。
側にあった桜の木に寄り掛かり、膝を抱くようにして顔を埋めて座った。
「大丈夫ですか?」
「その声で話し掛けないで」
ガラガラ声ではなくいつもの声が聞きたいのに。
それにベルモットが見てるかもしれないのに私に話し掛けてもいいのか。
ダメだ、顔を上げられなくなった。
「そもそも盗み聞きなんて悪趣味過ぎる…誰が精神疾患だバカ野郎、薬飲んでないよ」
悪態はつくものの全く覇気のない話し方で棒読みに近い事は自分でも分かってるけど、どうしても顔を上げたくない。
変装しててベルモットもいる中で大丈夫かと声を掛けてくれた事に嬉しくて泣いてしまった。
「椿さーん!大変なんだ!ちょっと来て!て、おじさんなんでここにいるの?」
来た助け船。
「彼女が具合が悪そうだったから…」
「椿さん、まだダメなの?」
覗き込むようにして様子を見てくるコナン君に腕を伸ばして抱き締める。
「当分立ち直れないかもっ」
グズッと漸く鼻を啜った。
降谷さんからは見えないけど、これだけ鼻の音がすれば泣いてる事はバレている。
「取り敢えず泣き止んで?椿さんに殺人の容疑が掛かってるんだ」
「無理だ泣き止めない」
ほら、ハンカチと言って思い切り涙を拭かれてから鼻を拭われる。
「ひどいコナン君、化粧落ちるじゃん!」
「いつもよりマシだろ」
そうだけどと口篭る。
結構降谷さんの事で泣いて来たのでそれはもう酷い顔は見飽きているようだ。
目の前でハンカチを反対向けてまだ拭いてくれているコナン君にそう言えばと殺人容疑って何?と聞いた。
「椿さん財布掏られたでしょ?」
「あ、うん、あのクソババアに」
「言い方……それで、その人亡くなったんだよ」
だから取り敢えず警察もいるけど来てとの事。
仕方ないと立ち上がるとコナン君はおじさんもなんだと弁崎さんにも言っていた。
今この人の隣に立つのは気まず過ぎるのでコナン君を抱っこする。
「なんで?」
「心細いのですみませんお願いしますどうかこの通り!」
スライディング土下座でもしようかと言えばもういいよと諦めて抱っこされてくれた。
そして殺人現場へ戻ると取り敢えず五円玉を出せと言われたのでポケットの中から三つ出す。
何故抱っこされているんだね。
何故抱っこ?
なんて目暮警部と高木刑事が言っていたけど気にしない。
「取り敢えず、あなた方のボディーチェックと所持品と携帯電話を調べさせてもらいましょうか」
目暮警部が鋭い目付きで言ってくる。
いや待て、全てに置いて引っ掛かる。
殺人犯ではないけど明らかにボディーチェックも所持品も引っ掛かる。
そして携帯電話も降谷さんが待ち受けだからきっと怪しまれる!
「椿さんは犯人じゃないよ」
「そうね、私たちとずっと一緒にいたし」
「アリバイがあるんですね」
よ、良かった助かったとコナン君の頭をよしよしよしよしと撫でまくっていると、こんな行動を取ったものだからもう大丈夫だなと言って腕から抜けられた。
そして弁崎さんを見ると堂々とボディーチェックを受けていて流石だと声が漏れそうになる。
そんな時、ジョディさんの声が耳に届いた。
「わざと携帯を落として拾わせたでしょ?」
楠田陸道の話。
それをコナン君は声を荒げで遮っていて、本当に演技下手だなと思ったけど、人の事は言えないので考えるのを止めた。
それから暫くして阿笠博士による推理ショーが始まり、女性が逮捕された。
高木刑事に財布を返してもらい、中を確認したけど、キッチリ現金は抜き取られていた。
あとのカード類は全てあるのでまぁ良しとしよう。
「一人でお花見に来たの?」
「実はお守りを買いに……」
「何のお守りですか?」
少年探偵団によって疑問を投げ掛けられている弁崎さん。
「私のお守りでしょ?この子の為のね」
にっこりと笑いながら素江が来た。
そしてお腹を擦りながら安産祈願だと言う。
演技の上手いカップルなんですね。
「家でじっとしてろって言っただろ」
「あなたが全然帰って来ないから心配で見に来たんじゃない」
偽夫婦で宜しくやってるけど顔が近いので降谷さんから離れてほしい。
耐えろ耐えるんだと悔しい気持ちを抑える。
「大丈夫?顔色悪いけど」
グイッと袖を引っ張られコナン君が声を掛けてくれた。
「ちょっと具合悪いだけだから…私そろそろ帰るね」
コナン君の頭を撫でて、隣にいる哀ちゃんをチラッと見ると警戒してたけど気にする事なく同じように頭を撫でた。
わっなんて声を上げられたけど、気にしない。
行きと同じ道を戻り、小さな橋に差し掛かった時、足を止めた。
朝よりも桜の絨毯が出来ている川は夕陽に染まって凄く綺麗だった。
「あの……」
声が掛かったので振り返ると、弁崎さんだ。
あれ?ベルモットは一緒じゃないのかと聞きたかったけど、先に口を開かれた。
「本人に財布を返していたので…良ければこれを」
それは誰の金で買ったのかは分からないアップルティーが握られていた。
ペットボトルの硬い蓋を一度開けて、そして再び閉めてから差し出されたので素直に貰って両手で握る。
温かいホットの紅茶だ。
「それでは、妻が待っているので」
スっと横を通り抜けて行ってしまった降谷さんに、目の前が涙で滲むのが分かった。
グッと涙を耐えようとしたけど、流れてしまった。
今日は本当に涙腺の緩い日だ。
明日から、また引き締め直そう。
明日から、また頑張ればいい。
明日には、きっと涙は止まってるから。