act.05 桜色の季節
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深呼吸を数回して落ち着いて来た頃、そろそろお花見行かないとと思っていたら、目の前でジンが煙草を捨てて靴ですり潰した。
「ちょっ、ポイ捨てコノヤロウ!」
新しい煙草を吸おうと咥えたのでそれをバッと手に取った。
「こっちが先だよホラ、処理して」
原型のなくなった煙草を拾い上げてジンに差し出す。
「いらねぇ」
「いらないとかそんな問題じゃないんだよね、自分の車に灰皿あるでしょ?そこまで持って行けって言ってんの」
「てめぇがやれ」
「テメェって言うなテメェ」
「やんのかクソガキ」
ジャキっと額に当てられたベレッタに対し、同じく身長差からジンの顎に上向きに押し付ける愛銃。
ギロっと見下すように睨まれる。
「やめてくだせぇって二人共っ!」
ちっと舌打ちをしてジンが先に銃を仕舞ったのを見て私も仕舞った。
そして行くぞと言ってジンはウォッカを連れて行ってしまう。
結局手元には吸殻がある。
溜め息を吐いて愛車に乗り、灰皿に押し込んでからエンジンを切り、没収したジンの煙草に火をつけて吸った。
そこで思う、間接キスではないか。
煙草と言えど。
なんてこった。
これが降谷さんなら嬉し過ぎて踊るけど煙草も吸わなければ間接キスなどというのはきっと夢のまた夢だ。
携帯を取り出しジンにメールでそのうちまたイメチェンするからとだけ送っておいた。
そして暫くしてからパソコンでコナン君の位置を把握し、車を降りて桜を見ながら歩いた。
小さな橋の上で足を止めて、手すりを掴んで散った桜が水と共に流れて行くのを見つめる。
溜め息が漏れた。
思ってた以上に彼の事が好き過ぎてすっかり溺れてしまっている。
どうしようかと答えのない考えに陥っていると足はいつの間にかコナン君の所についていたようで会えた事にホッとした。
「コナン君ーっ!」
たまたま一人でいたので見えた背中にガバッと抱き着く。
「えっ、椿さんっ?髪色変えたの?」
会えた事の安堵か抱き締めてる温かさからなのか涙が零れた。
ズビッと鼻を吸った事からコナン君の体は固まる。
「大丈夫か?」
心配する声に大丈夫じゃないかもと言い、場所を変えようと手を引かれて人気の少ない所まで来た。
そして桜の木の下に座り込みコナン君を抱き締める。
「何があった?さっき電話してた時は普通だっただろ?」
「安室さん好き過ぎて病んでる」
「ああ、またそれかよ」
完全に呆れられている。
ぎゅうっとコナン君を抱き締める腕に力が篭った。
さっきの事を思い出すと胸が痛くなる。
「私も安室さんの頬っぺた触りたい、触れたいすりすりしたい」
変装メイク術でも覚えようかな。
なんて思いながらコナン君を離してあげて桜を見上げる。
そしてコナン君とも一週間ぶりだなぁなんて思った所でそう言えばと口を開く。
「和田幸雄、覚えてる?」
「ん?ああ、椿さんが撃った…」
殺したと言わない所をみると遠慮してるんだな。
「殺そうとしたけど最終的に引き金を引いたのは本人だから」
「え……」
なんだ、それなら良かったと安堵の息を吐いていた。
それから私はもう大丈夫だから皆の所戻っていいよと言えば、じゃあ戻るけどよ、本当に大丈夫か?とまた心配と気遣いを見せてくれる。
大丈夫だから行ってらっしゃいと手を振って見送った。
そして暫く桜を見つめた後、コナン君を探す。
すると、ジョディさんが丁度話し掛けている所に首を突っ込んでしまった。
「だぁれ?」
「あ、この人は椿さん、天才ハッカーだよ」
「ハッカー…へぇ…」
物珍しそうにじろじろと見られた後に自己紹介をされ、FBIだという事も聞いた。
コナン君が大雑把に、組織の事は知ってるから大丈夫だよとジョディさんに言っていて、原作通りの会話が始まった。
「ベルモット本人が赤井さんに成り済ましてたみたいだけど…」
「あの列車爆破も組織の仕業だったの?あの火傷の彼が組織の仲間だったのなら…やっぱりシュウは本当に……」
じわっと涙を滲ませるジョディさん。
赤井さんの事大好きだもんね。
そりゃあ死んだってなると泣くよ。
私も降谷さんが死んだとなれば泣きまくりの毎日で一生立ち直れないくらいにドン底に落ちて最終自殺するかな。
「安室透って名乗ってて、毛利探偵事務所の下のポアロって喫茶店でバイトしてるから…」
「待った待った!コナン君!それどこで入手した!」
携帯の画面には降谷さんがポアロでバイトしている時の写真。
そんな貴重なモノ…。
「頂戴っ!送って!転送して!」
「え、い、いいけど…」
今すぐに早く!と急かすと分かったから落ち着いてと言われ、待ったをしている犬が如くコナン君の身長に合わせて踞んだ。
「それで、それをFBIに探ってほしくて、彼の目的は達成された筈なのに何故まだポアロに留まっているのかを…椿さんは知らない?」
「んー、そんな話しないからなぁ」
ブブッと携帯が震えてメールを見るとコナン君から降谷さんの画像が来た。
嬉しくて頬が緩む。
かっこいいかっこいいかっこいい!
即保存して待ち受けだ。
そしてパソコンも待ち受けだ。
分割して全部降谷さんでいっぱいにしてやる。
携帯もパソコンも開ける度ニヤけるではないか。
そんな時、座っていた所に影が差した。
「あれ?あなたもしかして…」
この声はと顔を上げる。
このガラガラ声はどこから出しているんだ、そしてよくここまで顔が変わるもんだ。
ダメだ、面白い。
でもコナン君もジョディさんもいる手前笑ってはいけない。
携帯を顔の前に持っていき声を押し殺して笑う。
変装してる降谷さんからの視線を感じるけど笑ってしまうものは仕方ない。
確か名前は弁崎桐平だったはず。
「2、3日前に見かけたもんでね…」
ガシッと弁崎さんはジョディさんに腕を掴まれていて、その隙に盗聴器を袖の中に押し込んだのが見えた。
この位置からだと丸見えだけど、私だったら言わないとでも思っているのか。
「どこ?どこで見掛けたの?」
「答えなさい!」
戸惑っている弁崎さんになんだこの演技凄いなと感心したものの笑ってしまった。
私は腰をあげて財布を出して小銭を抜き取り、近くの自販機に行こうとした時。
「スリよー!スリがいるわよー!」
走ってくるおばさんに物の見事にぶつかった。
その反動で体が後ろに飛ばされたけど、弁崎姿の降谷さんに支えてもらいなんとか転ばなくて助かった。
「大丈夫ですか?」
「はい、すみません」
ガラガラ声で心配の声がとんだけど、なんとか笑わずに返事をし、そしてやられたと思った。
財布がなくなっている。
まさか自分が黒兵衛のスリに合うとは。
どうしようか、特に見られて困るものはないけど、財布を取られるのは誰だって嫌だろう。
すぐにその場を離れた黒兵衛。
後を追おうと一歩足を出した所でスっと手に触れた手。
褐色の肌を隠しているとはいえ体温は降谷さんのものだ。
気の所為かなとも思ったけど、行ってはいけない何かがあるのか。
ここで腕を掴めばコナン君やジョディさんに怪しまれるから触れるだけにした、とか。
「もういいわ!思い出したらここに連絡くれる?」
ジョディさんが名刺を渡していて、弁崎は去っていった。
そしてすぐに携帯が震えたので確認すると、降谷さんからメールで「なるべくコナン君から離れないように、一人にはならない方がいい」とのこと。
ああ、そういえばベルモットがいたんだと意図を読んだ。