act.04 体調不良持続力
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
降谷side
梓さんが大尉にご飯をあげていたので店先で話していると、レシートの文字がCorpseだけ残っていたと聞き、風で飛ばされたレシートを追い掛けたが見知った姿が探し物を持っていた為走り寄る。
「椿さんっ!それ見せてください!」
グッと眉を寄せて構えた彼女に苦笑いが漏れた。
「そんなに警戒しなくても何もしませんよ」
レシートをスっと渡してくれたので礼を言う。
そのレシートを凝視して他の暗号も読み解けばコナン君が何を言いたいのかが大体は分かった。
彼女は何処かに行く予定があったのか横を通り抜けようとしたので声を掛ける。
すると、ポアロでご飯でも食べようとしていたらしく、それなら特に急ぎの用はないかと同行を求めた。
「一緒に来てください、あとでご馳走します」
彼女の腕を掴んで踵を返そうとすると、変な声で叫ばれてしまった。
ひやぁぁぁとそれはもう結構注目を浴びた。
それに対して変な声を出さないでくれと言うとセクハラですかと言われる。
なんでそうなる。
このご時世相手が嫌がればどこに触れてもセクハラになるが、顔見知りであり結構話す相手にそれは酷いだろう。
ましてやこの間の公園では酔っていたとは言え彼女から顎にキスをして来たんだ。
なのにセクハラとは笑わせる。
「急いでるので早くしてください」
少し強めの口調で言えば彼女は仕方ないと言った感じでついて来てくれた。
特に誘った事に対しては意味はないのだが、彼女は少しげんなりした顔をしている。
車まで少し走ろうと速度を上げると彼女もそれに合わせて走った。
すると後ろからくしゅんと小さなくしゃみが聞こえて来たので首だけを向けコテンと傾げる。
「風邪ですか?」
「髪濡れたまんまなんで寒いんですよ」
「何考えてるんですか!風邪引きますよ」
バカなのかと言い掛けて言葉を飲み込んだ。
あくまで彼女に対する言葉ではないだろう。
それに、きっと自分の所為でもあるのだろう。
一刻も早く盗聴器を外したくて、さらには律儀な面もあるのでそれを早く返したかったのかもしれない。
警察手帳の件は喉から手が出る程聞きたいが、今はそれよりもコナン君を優先しなければいけない。
「乗ってください」
助手席の扉を開けて彼女を乗せてから自分は運転席へと腰掛けた。
そしてエンジンを掛けて暖房を最大にする。
まだ車が冷えたままなので初めの間は冷たい風しか来ないが、そのうち暖かくなるだろう。
車を発進すると、また一つ小さなくしゃみが聞こえた。
本当に大丈夫か。
心配していると彼女から小さく呟くような言葉が発せられた。
「好きだな…」
一瞬耳を疑うも聞き返してしまった。
好き、とはなんだ。
「あ、いや、この車の匂いです」
信号で止まり携帯片手に宅配業者の車が何処の道を通っているか割り出そうとしたが、どうにも彼女の一言で脳は回らなくなった。
車の匂いが好きと言っただけ…なのだが。
俺も風邪をひいたか?
仕方ない、この道を通っているといつか宅配業者にぶち当たるだろう。
「芳香剤ももう終わるので薄くなってますし、特にこれといって車の匂いしかないと思うんですけど」
「ほら、車の匂いでも好きなのと嫌いなのあるじゃないですか」
まぁ確かに。
彼女の車に乗った時、この匂いは好きだと思った。
芳香剤もいいモノをチョイスしているし、車の匂いと混ざっても臭くはなくて、煙草の臭いも気にならなかったし、寧ろ混ざっていても好きな匂いだった。
携帯を置いて車を発進させ、辿り着いた先は住宅街。
クラクションを鳴らしてから声を掛けて車から降りる。
コナン君だけかと思えば少年探偵団の皆が車から顔を覗かせていたので宅配業者、基犯人に声を掛けた所、脅しを掛けてきたので全て言い終わる前に左手を腹にめり込ませた。
呆気ない。
すると、彼女も車から出て来て子供達に大丈夫かと声を掛けていた。
初対面だったようで色々と質問されていて戸惑ってる所をつい微笑ましく見てしまっていて、その様子をコナン君に見られていた。
「ねぇ、安室さんって椿さんの事……」
ん?とコナン君の声に耳を澄ましていると、もう一人の男が声をあげた。
「くっそ、このやろぉ!」
男はナイフを手に一番近い彼女へと駆けていた。
子供達に目を合わせていたが、すぐに振り返って立ち上がり応戦体勢に入ったものの、何故か真っ直ぐ来るナイフを避けようとしない。
それはすぐ後ろにいる子供達の為だろうと分かったが、このままだと彼女が危険だと手にしていたガムテープを捨てたが間に合わず、その切っ先は彼女の胸へと刺さった。
子供達から悲鳴が上がるも、ガチッと音がして犯人はナイフを持ったまま後方へ蹌踉け、彼女も少し後ろへ押されたが何とか踏み止まっていた。
ああ、なるほど。
あの位置にはいつも拳銃があるんだったな。
大丈夫かと彼女へ目を向けると、俯いたままで表情は見えなかった。
「……大事な、モノ…傷付いた…」
彼女が顔を上げた瞬間に空気が変わった。
これは、殺気か。
すると彼女が動いた。
怯んでいた男も再びナイフで切り掛かって来たが、パンっと左手で払い伸びていた腕の肘前後に両手を置くとボキッと鈍い音がした。
そしてその手は男の首横へ持っていき頭を抑えると腹に膝蹴りをかました。
折れた右腕からナイフが転がり、男が崩れ落ちる所をさらに彼女は回し蹴りをして、吹っ飛んだ男に勢いよく手を突き出した所で、その手を掴んだ。
「もう勝負はついてますよ」
驚きに顔を上げた彼女の瞳と目が合った。
まだやる気なのかグッと力を入れて振り解こうとしてくる。
「目潰しはダメです」
「…………」
最後の突きが決まっていたら男は確実に失明していただろう。
殺気だけでも驚いたのに、さらには腕を折り止めたとは言え目潰しもか。
ここまで体が動くとは正直思っていなかった。
「あなたは車に戻っててください」
「…………」
「返事、聞こえませんけど?」
「……すみません」
そのまま車に戻っていった彼女。
謝ってほしいわけではなかったが、戻れと言ったのは子供達の目もあるからだ。
「兄ちゃん、姉ちゃんいじめんなよ」
「え?」
「そーですよ、凄くかっこよかったじゃないですか!」
「歩美達を助けてくれたんだよ!」
「あ、ああ、そうだね、彼女は強いから」
純粋な子供達に苦笑いが漏れる。
これはこれで有難いが俺が悪者か。
ガムテープを拾って犯人二人を拘束した。
「コナン君、この事を警察に」
「う、うん…あの…椿さん、大丈夫かな?」
「さぁ?彼女とはそこまで親しくないからね」
適当に誤魔化す。
嘘は得意。
何を聞かれても大丈夫。
咄嗟の判断も反応も組織で学んで来た。
「…さっきも聞こうとしたんだけど…安室さんって椿さんの事どこまで知ってるの?」
なのに、どこまでと考えると少し動揺した自分がいた。
自然を装わなければと安室の仮面を貼り付ける。
「うーん、コナン君よりは知ってるつもりだけど、彼よりは知らないかな」
そう、ジンよりは。
盗聴してた会話も、ジンは彼女の警察手帳を知っていた。
そして大事だと言ったジンとお揃いのベレッタ。
おそらく、いや、確実にジンは彼女の全てを知っている。
その上で、お気に入りと称して側に置いているのか。
それとも、彼女自身ジンの側にいて裏で組織の仕事をしているのか。
本当はスパイなのか。
あとの事はコナン君に任せ、警察が来る前にここから離れようと車に乗り込むと、彼女は俯いて愛銃を撫でていた。
運転席に置かれていた盗聴器をポケットへ仕舞い、チラと彼女を見る。
「大事、ですか」
「はい、私には大事なのが4つあります」
「他の3つを聞いても?」
銃をポケットへ直した所で車を発進させる。
何処へ行く事もなく取り敢えずドライブでもしようとその辺を走る事にした。
「一つはベレッタで、一つは車です」
「確かにどちらも綺麗に手入れされてましたね」
「それと、警察手帳…」
その単語にはピクリと反応した。
職員番号の合わなかった警察手帳。
存在しないIDに名前。
本物だったが本物ではない警察手帳。
「あれは、本物、なんですよね?」
「調べたなら分かりますよね?」
「……あなたは警察にはいない…」
じっと様子を窺えば彼女は瞳を泳がせた。
そして、眉を八の字にして今にも泣き出しそうだった。
尋問は得意な方だと思うが、彼女の顔を見るとどうにもいたたまれなくなる。
「あれは、見なかった事にします」
彼女も俺が尋問すると思っていたのだろう、スっと引き下がったので驚きに顔を上げた。
「それで、残りの一つは?」
最後は思い当たらないなと考えを巡らせる。
まさかお酒とか言わないだろうなと思っていると、彼女は目を伏せた。
そして、じっとこっちを見て口を開ける。
「降谷さん、あなたです」
今度はこっちが驚く番。
まさか彼女の大事なモノの4つに自分が入っていようとは。
いや、でも彼女はあのコンビニの時から匂わせていた気もする。
俺の味方だと。
「それは、ヒロに言われたからですか?」
「確かに宜しくとは言われましたけど、違います」
「だったら、何なんです?」
チラと彼女の表情を窺う。
丁度信号で止まったのでジッと見ると若干顔が赤い気がした。
まさかとは思うが…。
「僕の事が好き、ですか?」
うっと言葉に詰まってさらに頬を赤くした彼女。
ああ、ダメだ冷めていく。
彼女もまたその辺の女性と同じか。
「知ってるとは思いますけど、特定の彼女は作りませんよ」
「確かに、降谷さんの事は好きですけど、付き合って下さいとかそんな恐れ多い事は言わないです、拝むだけで十分ですよ!」
「お、拝む……」
拝むとはなんだ。
そのままの意味か?
隣の彼女はこっちに向かって本当に拝んで来たではないか。
俺の事が好きなんだと思ったが、好き違いなのか。
しかし、彼女は本当に何をしているんだ。
冷めた心が一気に色をつけた。
「椿さん、僕も拝んでいいですか?」
「だっ、ダメですよ、降谷さんは神々しいから拝んでるんですよ!」
「神々しい?…くくっ、椿さん、あなたって本当不思議な人ですね」
雰囲気がぶち壊しと言うか、いい意味で沈んでいたモノが浮かんで来る。
その辺の女性と同じだと思った。
心が冷めていった。
だけど、すぐに戻るのは何故なのか。
俺も、椿さんの事が好きですよ。
言葉には出さないが、きっとそう言う事なんだろうな。