act.03 スペシャルコーチ
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ミステリートレイン自体には本当に興味がなかった。
ベルツリー急行に乗った所で途中の田舎の駅で降りる事になる事も知っていたから自ら危険な橋は渡りたくなかったけど。
「安室さんが乗るから乗っただけ」
「その話はよくボウヤから聞く」
「ん?」
「あははははっ、ほら椿さん安室さんの事大好きだって」
「ああ、なるほど」
言ってくれてるのなら話は早い。
そろそろ降りたいと言うコナン君を仕方ないとばかりに手を離す。
するとコナン君は隣のソファに腰掛けた。
「ミステリートレイン乗りたいって言ったらウォッカがパスくれて、後は知らない」
「奴らとはどんな関係だ?」
「ジンとは友達、ウォッカとはジンを通して知り合ってキャンティも同じく」
隣でオレンジジュースを飲むコナン君を眺めてると自然と頬が緩む。
飲みながら短い足をぶらぶらとさせているのはもう本当可愛いしかない。
「ホー、では前と同じ質問をしよう」
なんだと視線をコナン君から赤井さんに移せば「キミは黒か?白か?」と問われた。
これにはなんて答えればいいのか少し考えて、思いついた言葉から口に出してみる。
「私殺しはしたくないし、でもジンに頼まれたら殺さない依頼受けるし、でもそれも結局は殺しに繋がったりするんだなって思ったらジンと友達の時点でそこは諦めるべきなんだろうけど、結局白でありたい黒、なのかな?」
うーん、と自分でもよく分からないグレーと言う答えが出た。
もしジンと赤井さんどっちか取れと言われたら凄く困る質問だ。
だけど、そこに降谷さんを入れるとガラッとモノクロだったものに、色が加わるように、変わり出す。
「私は安室さん第一で、安室さん中心にまわりたい」
悲しい事に本人にはまだまだ疑われてるけど。
そこまで話すと赤井さんはキッチンへと行って、持って来た手土産をいくつか可愛い皿に入れて持って来てくれた。
きっとこれは有希子さんの好みだな。
そう言えば、ミステリートレインで赤井さんが気になっていたなと思い、ポケットからジッポを取り出して渡した。
それをあっちからこっちから眺めていて、コナン君も手を出したので、彼の小さな手に乗せた。
「やはりGinか…」
「へぇー、本当に仲いいんだね」
「貰ったんだよ、本人から」
「ずっと愛用していた大事なモノをお前にやるとはな」
「なんだ、その言い回し、喧嘩売ってるなら買うぞ」
お前にこんな高級なモノは勿体ないと通訳してしまったけど、自分でもまぁ思う。
何故こんな何年何十年って使って来ただろうモノをポイと捨てるかのようにくれたのか。
「ジンの犬か?」
「え、やだやだ安室さんの犬がいい」
「ははっ…でも良かったね、今度から赤井さんにも愛の電話出来るね」
「なんだそれは」
愛の電話とは、勿論降谷さんネタで盛り上がると言う事だ。
コナン君はそれはそれはよく付き合ってくれていて昨日の晩もマシンガントークのように一方的に一時間程聞いてくれていた。
最近ジンは降谷さんネタになると電話してても五分程で切られてしまって相手はコナン君しかいないんだ。
「赤井さんってずっとここにいるよね?モヤシだよね?」
「陽には当たるが…まぁあまり出掛けんな」
よしと拳を握って携帯から連絡先を引っ張り出して半ば強制的に赤井さんの携帯に登録させた。
コナン君はおかわりとコップをキッチンに持って行く際に赤井さんに何か耳打ちしていた。
そう言う事か。
と言っていた事から愛の電話が何なのか説明したのだろう、大人な彼から溜め息が漏れた。
「それと、私自称世界一のハッカーなんです」
「ハッカー?君がか?」
「ハッキング得意なの」
「ジンの友人でハッキングとは……クラッキングの間違えだろう?」
どうして降谷さんと同じ事を言うかな。
頭の回転が早い人は皆思う事が同じなのか。
オレンジジュース片手にコナン君が戻ってきて、会話に混ざる。
「ボクまだ見てないけどハッキングの腕はそれなりにあると思うよ」
「何故そう思う?」
「灰原の事知ってたし…それにあのパソコンは結構出来る構造してた」
まさかの褒め言葉に頬が緩んだ。
ああもう可愛いな。
コップを机に置いた所をすかさずぎゅうっと抱き締めた。
「ホー、なら俺の事はどこまで知ってる?」
「え……自己紹介でもすればいい?」
「ああ」
赤井さんの前で赤井さんの自己紹介。
確か前にコナン君にはその人の85%は知っていると言った。
なので適当に原作のまんまを伝えればいいのかな。
しかし、どこまで。
行き過ぎるとストーカーの部類に入ってしまう。
「えーっと…取り敢えず、住んでた所が燃えてここにお世話になってる東都大学に通う27歳で、過去に諸星大の名前で生きててライとして組織に潜入…くらいでいいかな?」
これ以上言ったら口が止まらなくなる。
好きなお酒、今はバーボン一筋で、なんて言えば盗聴器か何かあるのかとまたややこしい事になりかねない。
「君は嘘が苦手と言っていたからここで言った事は全て信じよう」
「え……本当に?」
「なんだ、疑ってほしいのか?」
ぶんぶんと首を振る。
ここまで降谷さん大好きオーラを出しているのに信用してもらえた。
だけど、信用してほしい人には信用されない。
何故だ、逆に降谷さんには全てを話してしまった方がいいのかな。
「赤井さんって安室さんの事どう思う?」
「どう、とは?」
「好きとか可愛いとか癒しとか」
コナン君には始まったと半目で見られた気がしたけど、気にしない事にした。
ターゲットロックオンだ。
「俺がそれを言えば気持ち悪いだろ」
「大丈夫、私そーゆーの平気!赤井さんが安室さんの事好きとか全然大丈夫!」
「まぁそうだな、彼を揶揄うのは楽しいな」
ニイっと口角をあげた。
え、昔二人の間で何かあったのか?
確かに降谷さんは赤井さんに遊ばれてそうだけど…それは緋色シリーズを見て思った。
赤井さんの方が落ち着いていて一歩上手だ。
その分降谷さんは子供と言うかなんと言うか。
あの純黒の悪夢でも殴りあってるこんな場面でと突っ込みを入れざるを得なかった。
でもまぁそれがファンの心を擽るんだろうけど。
「楽しいって事は癒しだよね!」
「そこに結びつけるのすげぇな…」
「うわぁぁぁ早く安室さんに赤井さんの話山のようにしたい!その崩れた顔も早く見たい素敵っ!」
両手で顔を覆って項垂れていると、ピンポーンと来客を知らせるベルが鳴る。
一瞬固まった三人。
私の所為で変装を解いてしまった赤井さんは対応が出来ない。
責任を感じて腰をあげた所でコナン君から鶴の一声。
「ボクが出るよ」
リビングから出て行ったのを見送って大丈夫かなと考えていると、視線を感じたので首を傾げる。
「コーヒー嫌いだったか?」
「え、んーそう言うわけじゃないんだけど、癖で…」
元公安の名残で他人の家で出された飲食物はあまり口にはしたくない。
だけど飲もう。
砂糖もミルクも入れず、カップに手を伸ばしたけど、その腕は赤井さんの手に掴まれピタリと止まる。
「無理しなくていい」
「別に無理してるわけじゃないんだけど…」
「何してるの?二人共…」
タイミング良くか悪くかコナン君が戻って来た。
この腕を掴まれてる状況を見て何事だと感じたのだろう。
スっと赤井さんが腕を離してくれたのでコナン君に訪ねて来たのは誰だったのかと聞くと、宅配業者の方だと言う。
え、その宅配業者の方はもしやイケメンのあの人ではないよね?降谷さんじゃないよね?
でももしそうならコナン君気付くか。
「それじゃ、そろそろお暇します」
コナン君は?と聞くとボクはまだ居ると言ったので一人で帰る事にした。
きっと私が帰った後は、二人で今日説明した事を推理の如く話し合いでもするのだろう。
このシャーロキアンめ。