act.03 スペシャルコーチ
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降谷さんが完全に助手席の扉を閉めたのを確認してから深く息を吸う。
ああああ、叫びたい!
車の匂いと降谷さん特有の匂いが混じって何とも言えない本当にいい匂いがする。
ずっと吸っていたい。
香水の匂いもしないので本来の匂いだと思うとコレまたのたうち回りたいくらいにニヤけてしまう自分がいる。
両手で顔を覆ってニヤけている顔を必死に戻そうとするも、運転席の扉が開いた事により頑張って気持ちを無にして顔をあげた。
「大丈夫ですか?」
苦笑いで言われたけど決して気分が悪いわけではない。
後部座席に荷物を置いてくれて、シートベルトを締めたのを確認すると車はゆっくりと発進した。
前屈みになって手を下に伸ばし、足を冷やしていると、足上げてもらって構いませんよと気遣いをされた。
うわあ、こっからの角度最高だ。
かっこ良すぎる、髪サラサラだ。
なんて思っているとグローブボックスで頭を打った。
痛いと頭を押さえてから靴を脱いで、足を座席に上げて三角座りをして氷を腫れている所へと当てる。
「そう言えば話って……」
「ああ、言いましたね」
顎に人差し指を添えてははっと笑う降谷さん。
「聞きたい事は山程あるんですが、これと言っては特に」
ん?日本語の意味が分からない。
しかしもしあっちもこっちも調べているとしたら凄く貴重な時間を取ってしまっていると思うと申し訳ない。
綺麗な顔にまた隈が出来ると思うと心配になる。
「私の事調べても何も出て来ないので直接聞いて下さいね」
「そのようですね、何度もあなたの事は調べましたが結果は毎度同じで至って普通のどこにでもいる女性でした」
「そうですね、何から何まで普通です」
「アレは書き換えた情報ですか?」
「いいえ、何も弄ってませんよ」
生憎何を調べたのかは知らないけど、自分の情報を書き換えてはいないので答えはノーだ。
すると、ブブッと携帯の震える音がしたので自分のかと思い確認すると、僕のですよと返ってきた。
信号で止まりそれをサッと確認したかと思えばインカムを耳に付けた。
「すみません、少しベルモットに」
お気遣いなくと言うと携帯を一度タップしてからコンソールボックスへと置いた。
「……ええ、事件は解決しましたよ…毛利名探偵のお陰でね…」
確かこのシーンってベルモット泡風呂に入ってたな。
そんなちゃぷちゃぷ言ってる所で降谷さんと電話しないでほしい。
それと違っても常日頃からセクシーなんだ。
ああ、やきもち。
そうだよ、いつも彼女がこの車のココに座ってると思うだけで胸がきゅっとなる。
「いえ、俄然興味が湧いてきましたよ……眠りの小五郎という探偵にね…」
コナン君バレましたよ。
どこでもあんな目立つ時計カパッてしてるから。
あんなの構えてたら誰でも怪しむよ。
「…情報、ですか?…いえ、詮索するなと言ったのはあなたですよ」
詮索?赤井さんかな?
でもこんなシーンあったっけ?
そもそもベルモットが詮索するなって言った人物?
なんだそれ。誰だ。
チラッと横目で見た降谷さんと目が合ったので、聞いては不味い事だったのかと耳を塞いだけど、ふふっと笑われてしまった。
「そうですね、そうしたいのは山々ですが命は惜しいので……あなただってそうでしょう、ベルモット」
耳は塞いでるけど、如何せんこの狭い密室なので丸聞こえだ。
「もし見つけたらどうします?……まぁそれは僕も気になる所ですよ……ええ、ではまた」
電話を切り切断した事を確認すると、降谷さんはふわっと笑った。
すると、もういいですよと言っていただいたので耳からそっと手を離す。
「聞こえてるのに塞ぐ意味あります?」
「塞いだのに聞こえるんですよ」
半分程溶けてしまった氷の袋を掴んでコロコロと転がる中身を見てから足に当てる。
話の内容が気にならない事もないので降谷さんの方を向いてじーっと観察してみる。
それには苦笑いをされた。
だけど意図が分かったようで口を開いた。
「椿さんの事ですよ、ジンには詮索するなと言われているので」
「ああ…まぁ、口止めはしましたけど…守ってくれてるんですね」
それはよかった。
だけど凄くむず痒い。
あのジンが私の秘密を言っていない。
ウォッカにも言っていなくて、でもあの迎えに来てくれた時にジンから言っといてとは言ったので話してはくれてる筈だけど…他の幹部には言ってないんだ。
確かに一つ二つバレたら全てが終わりそうだ。
すると、ブブッと今度は私の携帯にメールが届いた。
その内容を見て眉が寄った。
今度パーティーがある。
ジンからのメールはその一文のみで詳細も何もない。
仕方ないのでどんなパーティーなのかを返信すると、返事はすぐに来た。
パーティーの内容は年に一度の大規模なもので完全なる裏社会の人間しか立ち入る事が出来ないようだ。
そしてもう一つの条件が男女のペアと言う事。
「大丈夫ですか?難しい顔してますよ」
「え、あ…大丈夫です」
男女ペアとは、バーボンとベルモットも来るのだろうか。
聞いてみたい。
でも、ペアと言う事はそーいう事なのだろうなとも思うので、ジンに聞いてみようか。
二人が腕を組みながら歩いてる所なんて見たくない。
ダメだ、思考が段々沈んでいく。
「あの…降谷さん…」
「はい?なんでしょう」
すっかり暗くなってしまったけど、今時の高速道路は明るいので顔ははっきりと見える。
私の声にチラとだけ目を向けて、前を向く降谷さんに…。
「殴ってくれませんか?」
と言ってみた。
「は……?」
「いや、最近本当に思考がヤバいんですよ、痛いんですよ」
どんどんはまって行って、抜けられなくなる。
ああ、もう、好きだ。
好きすぎる。
大好きだ。
だから、おかしくなりそうで、この目の前の人は現実で、さわれて、温かくて、そう思うと本当に私なんかが好きでいていいのかとさえ思う。
「そんな顔しないでくださいよ」
優しく気遣うように、だけど、少しの苦笑い。
「…どんな顔してます?」
「そうですね…罪悪感と、それから、泣きそうな顔をしてますよ」
エスパーかと思う程に当たっている。
実際キラキラとした二人を思い浮かべると泣きそうになる。
今度コナン君に相談しよ。
そっと、右から伸びてきた手になんだろうと首を傾げる。
「女性を殴る事は出来ませんけど…頬を抓るのが限界です」
にこりと笑って、そしてぎゅっと右頬を引っ張られた。
結構痛い。
アレ?容赦ねぇな。
「ギ、ギブ!」
「そのメールの内容ですか?あなたを悩ませてるのは」
おお…バレている。
小さい声ではいとしか答えられなかった。
言う気はないけど、それが降谷さんにも伝わったのかそれ以上何も聞いては来なかった。
そして東京に着き、部屋まで送っていただいた。
玄関の所に荷物を置いてもらい「なるべく安静に」と言って上がる事なく降谷さんは帰って行った。
決して送り狼にはなりませんでした。
クソぅ!