act.02 ミステリートレイン
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降谷side
ミステリートレインから数日間はポアロを休む事にした。
なんせ公安としての仕事が山積みの上に調べる事も沢山あった。
二徹目ではあるが今日もせっせと机のモノを一つずつ片付けていると、風見が顔を出した。
丁度昼か。
話があるから来いと言っていたのを忘れていた。
その話とは椿さんの事。
組織については上からの指示で風見に言う事を抑えなければいけないが、彼女の事は別だ。
まだ容疑者の段階で上に報告も出来ない。
出来れば、いい方向に転がってほしいが…。
「コンビニへ行く」
食堂でご飯を食べてもいいが同じメニューで食べ飽きた。
なので今日はコンビニで弁当でも買おうとすぐ近くの所へと足を向ける。
聞かれても良さそうな話題を半歩後ろを歩く風見としていた所、コンビニに着いたのでその話をやめた。
扉に手を置き、引けば中から女性が走って来て思い切りぶつかった。
避けようにも重そうな袋と鞄とで結構幅を取っていたので避け切れず、物の見事に彼女は鞄の中身をぶちまけ、袋は俺に当たってから落下した。
そしてさらには携帯も落としたようだ。
何が入っていたのか当たった所は地味に痛かった。
なんとか彼女だけは支えられたが、そのシルエットには覚えがある。
まさか、と思っているうちにすみませんと彼女は顔を上げた。
「え……安室さん?」
「椿さん、何故ここに?」
「公園に行こうと思って……」
公園…日比谷公園か?
驚きで固まってしまったが、彼女は次の瞬間には大声を上げて少し先に走って行った。
どうやら鞄から流れ出たパソコンが残念な事になっているようだ。
「降谷さん……」
「ああ…普通にしてろ」
風見が鞄の荷物を拾っているのを確認してから俺は落ちた携帯を手に取った。
そこには驚きの字があった。
ジン。
今まさにそう記されている。
そっと耳に当てると『おい、どうした』と言う声。
これは間違いなく俺の想像しているジンだ。
片手で袋を拾い上げながら中身をチェックすると紅茶のペットボトルに……バーボン、バーボン、バーボン、そしてスコッチ。
思わず苦笑いしてしまう。
なんだ?また友達にパシらされたとか言うつもりなんだろうか。
『椿……』
ヤツの声が携帯越しに聞こえる。
名前呼びときた。
と言う事はおそらくコードネーム持ちではない。
もしそうだとして、幹部でもないのにジンと電話をする程の仲。
実に興味深い存在だ。
じっと彼女を見ると苦笑いをしてから歩き出したので後をついていく。
角に止めてあった黒い車の助手席を開けて荷物を置いた。
ナンバーは俺と同じ。
指定ナンバーではない事からどんな奇跡だと思った。
彼女に袋を渡せばそれも助手席へと積んだ。
そして携帯を返せと無言で手を差し出してくる。
仕方ない返してやるかと携帯をその手に置いた。
ぺこりとお辞儀をしたので、まさか帰るつもりなのかと慌てて腕を掴んだ。
ここで逃げられてはいけない。
溜め息を漏らしてから携帯を耳に当てた彼女はこちらの様子を窺いながら声を出した。
「ごめん、人にぶつかって鞄やら何やらぶちまけた……うん…でもね、パソコン車に踏まれてお亡くなりにっ、めちゃめちゃ気にいってたのに!……本当!?今狙ってるやつあるの!それがいい!」
驚いた事に普段の彼女からは想像が出来ないくらいに無邪気に話している。
こっちが本当の彼女なのか?
話してる間もなんとか逃れようと腕を引いたり振ったりと頑張ってはいるものの、そう簡単に離してはやらない。
あまりに藻掻くので掴んでる手には力が入る。
痛いのだろう彼女は眉を顰め、そして、いきなりの俊敏な動きに驚いた。
腕がグルッと回り、俺の腕の真ん中に掴んでいた方の肘が入り、咄嗟の事で対応が追い付かず少し距離を取った。
温厚そうな彼女からは想像がつかなかった。
驚いたな、少し、彼女の事を甘く見ていたようだ。
そして彼女は一瞬目を伏せて「車に乗って下さい」と言った。
後部座席の扉を開け、そこで、風見に外で待つように言おうと思ったが、それより早く彼女が口を開いた。
「風見さんも乗って下さい」
何故、名前をと思った所ではっとした。
風見を知っていると言う事と、この場所にいる事、彼女の頭の回転が早ければ不味い事になる。
溜め息を吐いて彼女は運転席に乗り込んだ。
「ジン、バーボンにバレた……笑わないでっ!」
ダッシュボードに手を伸ばして、置いてある煙草を取ろうとしてやめたようだ。
それを見た後でスピーカーにしてほしいと頼んだ。
「え、ああ…ジン、バーボンがスピーカー要請してるよ?」
ちぃっと舌打ちが漏れた。
普通なら相手に黙ってスピーカーにするか、しないかだ。
さっきから彼女にはよく分からない行動で振り回されっ放しだ。
それも、ジンと電話を繋いでいる手前、下手な事は出来ない。