act.09 純黒の悪夢
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組織関連の急用が出来たので先に帰るね、ごめんねと客が一斉に帰る為に出来た渋滞で止まっている間にメールを送信した。
「誰です?」
「コナン君ですよ」
あんな小さな体であんなドデカい観覧車に立ち向かったんだもん凄いよね。
それにボロボロになりながらも風見を気遣ったりサッカーボール蹴ったり本当に凄い。
「妬けますね」
耳に届いた声に隣を見るとじーっとこちらを見ている。
居た堪れなくなり顔を背けるも、恥ずかしくて顔を両手で覆う。
「返事、聞かせてもらいたいんですけど」
「へ、返事…とは……」
「一世一代の告白ですよ、嘘ではなく本気です」
「一世一代の意味分かって言ってますっ!?」
「ええ、勿論、一生涯です、こんな事を想ったのも、こんな台詞を言ったのも初めてですよ」
思い出すのはあの消火栓の爆弾を解除している時の事だ。
「好きです、椿さんの事が……誰にも渡したくない。俺と付き合ってほしい」
確かに普段ポアロで見せるにこっとした笑顔ではなく、真剣で強い眼差しをしていた。
だけどどう考えてもおかしい。
「ハニートラップですか?」
「あなたにしても意味がない」
「だったら、気の迷いでは……?」
「いえ、初めこそ自分でも思いましたけど、もう数ヶ月想い続けてる事なので違います」
少し進み出した車にブレーキを放して徐行をする。
信号を曲がった所で何とか渋滞からは脱出出来たようだ。
しかし降谷さんの言葉には渋滞しまくりだ。
言葉達が脳内を巡っていて交通整理が追い付かない。
「なんで?だって降谷さんともなれば向こうから女がうじゃうじゃ寄って来るんですよ?選びたい放題じゃないですか、それにこんな得体の知れない女であり平凡な見た目で品のない言葉遣いで……どこがいいんですか、私が男ならこんな女選ばない」
「寄って来ない女性は対象外とでも?」
「そんな事は言ってないですけど……」
「それに、悲観的ではなくもっと自分に自信をもってもいいと思いますよ」
ふわっと笑った降谷さん。
顔が綺麗なら何しても絵になるし様になるしもうダメ、その顔好き。
それにしても私が降谷さんにおちてると分かっていてこんな甘い笑顔!
クソぅ、惚れた方が負けとはよく言ったものだ。
「イケメンは罪ですよー…」
信号待ちをしていたのでグデっとハンドルに突っ伏して目を閉じる。
そしてパチリと開けると思いの他近くにあった顔にひえっとまた小さな悲鳴が漏れた。
「それで?そろそろ返事が聞きたいんですけどね」
「や、私もうきっと岩以上に重いのでわけが分からなくなるのは目に見えてて……それに降谷さんが思ってる以上に面倒臭い女なんですよ」
信号が青に変わって車を走らせる。
もう降谷さんの顔が見れない。
きっと私の顔は真っ赤。
辺りには少しの光しかないのでそれだけが救いだ。
「そんな事はどうでもいいです。そこまで気が長い方でもないので返事をください」
もう待てないとばかりに隣からの視線はじっと向けられたままだ。
どうでも良くはないだろう。
絶対降谷さんに対してヤキモチ妬きまくりなのは想像がつく。
問題なのは降谷さんではなくバーボンのハニートラップや安室さんのポアロ人気にある。
こんな私で本当にいいのか。
「私降谷さんの隣に並ぶ自信ないですよ」
「それは椿さんが決めるものじゃないですよ、見た目がどうとか中身がどうとか今は関係ないです、僕の事が好きか嫌いか、はっきりとした返事が知りたい」
もう、そんな事言われたら私の思考は全て吹っ飛ぶ。
降谷さんの事を嫌いだなんて思った事もない。
この先もきっと思う事はない。
「私、降谷さんのストーカーになるかも知れませんよ?」
「ははっ、面白いですね」
「それに、毎日変な事考えてるかも知れません」
「是非内容を聞きたいものですね」
再び信号で止まり、早くと言わんばかりに降谷さんの手が私の左手に触れた。
うぅー、ずるい。
今の私はどんな顔をしているだろうか。
降谷さんの瞳と交われば口をゆっくりと開いた。
「降谷さんの事が好きです、大好きです」
そう言うとフッと笑われる。
「上出来ですね」
言わせたのか。
S!ドS!
私が降谷さんの事大好きだとバレていた事も恥ずかしいけど、ああ、もうこの人の前では仕事モードもすぐに崩れてしまう。
手が離れていったと思えば、その手は私の頬に添えられる。
そしてゆっくりと顔を近付けて来たので反射的に後ろへと引いた。
「いやあっ!ダメダメっ!それ以上綺麗な顔を近付けないでっ!」
思い切りガシリと降谷さんの口元から顎に掛けてを抑えてしまった。
あれ、なんか降谷さんの背後に黒いオーラのようなモノが見える。
「椿さん、今好きと言いましたよね?」
ひいぃ、ごめんなさいごめんなさい。
だって降谷さんの顔が、こんな至近距離にあるなんて耐えられない。
今の私には無理だ。
そこでふと降谷さんが外を見て口を開く。
「送るってまさか家ではなく倉庫にですか?」
「えっ、そのつもりだったんですけど、やめときます?」
「いえ、ここまで来たならお願いします」
心中で何度もすみませんすみませんと謝る。
もう絶対バレてるよね。
だって雰囲気がバーボン一色になってるよ。
倉庫が建ち並ぶ所を進んで行くと、見えたのはRX-7の隣に停められたジンのポルシェ。
その中には勿論ジンがいて、運転席にはウォッカもいる。
「椿さん、話とはこの事で?」
「すみません、大人しくしてて下さい」
悪いようにはしないので、なんてそんな事悪役じみたかっこいい台詞私にはとても言えない。