act.09 純黒の悪夢
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降谷さんとキールの疑いはまだ晴れないものの、一先ず落ち着いたようでジンはキャンティに電話をしていた。
「例の機体を用意しろ」
オスプレイかと頭で考えながらもパソコンの画面を開きそこにキュラソーの姿が無い事を確認してからハッキングを止めた。
カタカタとキーボードを打ち痕跡を消していく。
そうしてる間にウォッカが戻って来て逃げられましたと報告している。
「行き先は……東都水族館」
パソコンのデータを抹消していると不意にゼロと呼ばれた。
ん?と首を傾げてジンを見るとニヤリと笑う。
「てめぇも乗るか?知ってんだろ、何の事か」
「私ね、今回組織側につかないから」
グッとジンの眉間には皺が寄った。
え、まさか本当にオスプレイに乗るとでも思ってたのか。
そんな事すればまた死亡フラグが立つじゃん。
いや、それは観覧車側でも変わりないけど…。
「ジンはキュラソーの奪還なんだよね?だったら私もそうする」
何を言ってるんだと眉間の皺は更に濃くなった。
そんな顔しないのと背伸びをして眉間を押すとその手はジンによって掴まれ、下ろされる。
「訳を言え」
「ジンに恨みがあるとかそんなのじゃなくて、単にキュラソーに助けてもらったから」
だから、キュラソーが組織に戻るならそれでいいし、裏切るのならその手助けをしたいとジンに言い放つ。
「本音を言うと彼女には長生きしてもらいたいから組織には戻ってほしくない」
「……ウォッカ、車をまわせ、てめぇも行けベルモット」
それぞれの返事を聞いた所で倉庫内はシンと静まり返る。
真剣に私の瞳を見るジンは何を考えているのか分からない。
だけどここまで強気に出てしまってはもう引けない。
まぁ元より引く気はないけど、黙っていようかとも考えた結果、あとでバレると面倒だと思ったのでジンにこの話を切り出したんだ。
「椿…それをお前が一人で出来るとでも思ってんのか」
「思ってないよ、私一昨日FBIに海に落とされたんだよね、だからFBIには少し…いやかなりボコボコにしたい願望があってそっちには協力しないの」
「……公安か」
「そっ!今回は……公安の味方」
「ふんっ、勝手にしろ」
ムスッとした表情だったけど、次の瞬間にはいつもの楽しげな口角を上げたジンに戻っていた。
「死ぬなよ」
「ジンもね、今日何時に帰る?」
「あ?」
「先に帰るんだったらご飯作っといて」
「……今日は寝かせねぇから風呂で待ってろ」
言葉遣い間違ってないだろうか。
知らない人が聞けば誤解しか生まない。
ジンは私の髪が気になって仕方ないだけだけど、まさか一晩中トリートメントを揉み込む気か。
流石にそんな事をされれば馬鹿なのかと思うしかない。
倉庫から出て行ったジンを見送り、クルッと反対を向けばキールと目が合う。
「あなた、何者なの?」
「ジンに詮索するなって言われてない?」
キールの綺麗な眉がグッと寄った事からやはり言われてるのかと思ったのと、彼女は素直だという印象があった。
ポケットからベレッタを出してサイレンサーを装着し、彼女の手錠の鎖に向けて撃つとバキンとそれは簡単に断ち切れた。
「あなた……味方なの?」
「今の話聞いてた?」
降谷さんの腕に嵌っていた手錠。
それに突き刺したままの針金を引き抜き、キールの手錠を外そうと鍵穴に差し込んでピッキングを開始する。
「キールの事は知ってるよ、CIAでしょ」
「っ、じゃあ味方なのね」
「そんなわけないよ、ただ黙ってるだけであって……」
そこまで言った所で携帯が震えた。
もう少しで片方解錠出来るので待ってほしい。
いや、でもこの電話は赤井さんかな?
それか赤井さんから話を聞いたコナン君くらいか。
だったらキールでもまぁ大丈夫なので声を掛ける。
「右のポケットに携帯あるから電話出てスピーカーにしてほしい」
言われた通りにキールは私のポケットを探り、見慣れた携帯を掴むと通話を押してスピーカーにした。
もしもしと言えば、相手は予想していなかった人物だった。
この物語には出て来ねぇよと突っ込みたくもなったけど仕方ない。
『大丈夫か?病院には?』
「行ってないよ、元気だから心配しないで」
そう、電話はまさかの黒田さんからだ。
ガシャンと音を立てて手錠が落ちる。
そしてもう片方に差し込む。
『大体の状況は分かってるつもりだが……どう動く?』
「え、待って降谷さん報告したの?してないよね?」
『ああ、彼からの報告は上がってない』
だったら風見かなとも思ったけど違うな、おそらく白鳥警部か目暮警部かその辺か。
もう片方の手錠も外し、持ってもらっていた携帯を貰ってパソコンの側へと置く。
そしてコナン君のGPSを探す事にした。
『それにしても泳げないとはな』
「人間肺呼吸だから魚にはなれないの知ってる?」
水怖い息継ぎしたら沈む。
あんな尾ビレとかカッパみたいな水掻きとか本当欲しかったと思った時期はあった。
『学校は大卒か?授業で水難救助訓練があった筈だが?』
「大卒の6ヶ月、少々泳げなくても権力と頭があれば問題なかったから大丈夫だよ」
さっきのジンとの会話を思い出し黒田さんに告げる事にした。
「私今回公安につくよ」
『……キュラソーか?』
「うん、彼女いい人だからね、助けたい」
コナン君の位置が分かった所で携帯と連動させた。
そして暗視スコープをポケットに放り込む。
『なら、キュラソーを奪還しろ』
「それって命令?」
『ああ……』
「……じゃあ前行ったお寿司屋さんで」
『命令だと言ったんだがな』
「あはは、死なないように祈っててよ」
じゃあねと通話を切ってパソコンの上に置き、ジンのボトルに煙草の吸殻をいれてから荷物を全て手に持った。
それからキールの方を向いて口を開く。
「ここにいた方がいいよ、もうすぐFBIも来るだろうしおそらく事が終わればベルモットが迎えに来る……手錠は私が外したってそのまんま言ってくれていいから」
肩の銃創は痛々しいけど彼女が死なない為だったらこの場を動かない方がいい。
「あと、バーボンに言っといて、コナン君と合流してから観覧車に向かうって」
にこりと笑ってからもう来る事もない倉庫から足を進めた。