act.08 お祭り日和
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
降谷side
今日は依頼人と会う予定をしていて、どこか静かな食事でも出来る店がいいと言われたので昔に理事官に連れて来てもらった事のあるパスタ店を予約した。
その辺のファミレスでも良かったが、彼女の家が結構な金持ちだからその方がいいと踏んだ。
なら何故こんな探偵なんかに依頼をするのかと聞いてみたが両親には内緒らしい。
ストーカー被害を受けていて言い辛いらしくこっそりと俺に依頼したそうだ。
大体の話を聞きながら相棒でパスタ店へと来たのだが…。
「カオス!!」
想いを寄せている人の声が聞こえてまさかと店内を見ると椿さんがいた。
それも、風見とだ。
今日は風見はオフだと言っていて予定があるとも言っていたが、まさか彼女と食事だったとは。
声を張り上げた彼女を注意している店員に顔が綻ぶ。
すると風見もこっちの様子に気付いたようで勢いよく立ち上がった。
「ふ、降っ」
風見が名前を呼び掛けた所で彼女のビンタが炸裂した。
ナイスだ。
そしてSit down!と彼女は叫んでまた店員から叱られている。
案内された席は椿さんと風見の席の隣で、座ろうとして彼女と目が合ったのでにこりと笑って頭を下げておいた。
勿論それに対し彼女も満面の笑みで微笑んでくれた。
依頼人の話を聞きながら食事をしているが、隣の会話はない。
何故沈黙なんだ。
ここの料理は本当に美味しい、それなのに会話はないのか。
チラと様子を窺うとワインを片手に何かを考えている彼女と、そわそわしている風見が目に入る。
「落ち着け」
彼女の凛とした声が聞こえ、その後に風見の溜め息が耳に届く。
「お前なんでそんなに冷静なんだ」
「冷静に見えてるならよかったよ、裕也は見てておかしいくらいだよね」
裕也……?
いつの間にそんなに仲良くなったんだ。
俺の知らない間にそんなに親密になっていたとは。
風見には彼女に近付くなと言ったままの筈だが……どういうわけか一緒に食事をしている。
会計は彼女持ちか。
いくら彼女が金持ちとはいえ、男として年上としてどうなんだそれは。
そんな時、銃声が聞こえた。
彼女と依頼人を秤に掛けたが仕事上依頼人を第一に護らないといけない。
だが、個人的には勿論彼女の傍に駆け寄りたい思いでいっぱいだ。
脳内で瞬時に判断して依頼人の頭を抑え姿勢を低くすると、悲鳴と逃げ惑う足音、それから、嫌に響く男の声が聞こえた。
「何を出そうとしたんだ?嬢ちゃん?」
視線を向けると彼女の額には銃口が押し付けられていて愛銃を取り出そうとしていた手は男によって捻り挙げられている。
依頼人には今のうちに皆に紛れ逃げるように言えば、安室さんはと心配そうに聞かれたので大丈夫だと伝えると渋々といった感じで走っていった。
何かあった時の為に姿勢を低くして構えるが、彼女もみすみすと殺られる真似はしないだろう。
風見を見ると勿論、いつでも動けるようにはしているが、俺が動いた方が早いな。
「オーナー出せ!俺はそいつを殺せばそれでいい」
「え、オーナーに恨みあるの?」
素で喋っている彼女には緊張感というものがないのか。
体を反転させられこめかみに銃を突き付けられ人質にされると彼女の眉が寄った。
その役割は嫌そうだな。
まぁ好きな奴なんていないか。
彼女と視線が合うと、にこりと笑われた。
なんだ、こんな時なのに何故笑う。
彼女には何か作があるのか。
そして突き付けられた銃を見てへにょっと顔を歪めた。
ああ、ベレッタがお揃いだとでも言いたいのか。
すると徐に銃を下ろせ警察だと吠える風見は愛用の銃を男に向け構えた。
「お前っ、余計な事すんなカス!」
彼女が風見に暴言を吐いた瞬間、彼女は男の手を弾き銃を落としたのでダッと走り出すも、机や椅子が邪魔で思うように動けない。
落ちた銃を遠くへ蹴り飛ばしたのを横目に、彼女は男の顎に一撃入れた所でピタリと動きが止まる。
俺も風見も、足を止めるしかなかった。
「誰も銃は一つだなんて言ってねぇよなあ?残念だったな、形勢逆転だ」
ここからは見えないが動きを止めた彼女と男の発言から銃を突き付けられているのは確かだ。
「可愛いっ!ピースメーカーじゃん!どこで入手したの?」
Colt Single Action Armyか。
通称ピースメーカー若しくはSAA。
M1873とも言われている。
通常の拳銃よりは長いが…よくそんな物を所持していたものだ。
「てめぇ自分の状況が分かってんのか!」
「お兄さんさ、銃に慣れてないでしょ?その銃の弱点って知ってる?」
弱点?銃にそこまで詳しくはないが、SAAは回転式拳銃で45LC弾だったか。
彼女の場合ベレッタを愛銃にしているくらいだからリボルバーを使うには面倒臭い所があるのだろうが……面倒臭い?
ああ、なるほど、弱点という弱点でもない。
それに慣れてないかと聞いたのは慣れ不慣れを知る為。
不慣れだとすれば、ハンマーを起こすのに時間が掛かる。
起こさなくても撃てるがその精密度はかなり下がるはずだ。
つまり、銃に不慣れならばシングルアクションの銃はやめておいた方がいい。
何故なら二発目への時間が掛かる。