act.08 お祭り日和
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「銃をおろせ!警察だ!」
銃を構えている裕也。
「お前っ、余計な事すんなカス!」
プライベートだというのに銃を所持している裕也に私が暴言を吐いた瞬間、男の腕が緩んだので銃と腕を掴み反対を向いてその手を弾くと簡単に銃が落ちたので思い切り遠くへ蹴り飛ばした。
その隙に裕也と降谷さんがダッと近付いて来たけど、無造作に並べられた机や椅子の所為で真っ直ぐには来られない。
相手の飛んで来た拳を避けて、顎を一発下から殴った所で、まさかだ。
「誰も銃は一つだなんて言ってねぇよなあ?残念だったな、形勢逆転だ」
ニヤリと笑った男は銀色に輝く銃を胸元に突き付けてくる。
その事に周りの動きがピタリと止まる。
そして胸元にある銃をじっと見る。
「可愛いっ!ピースメーカーじゃん!どこで入手したの?」
「てめぇ自分の状況が分かってんのか!」
「お兄さんさ、銃に慣れてないでしょ?」
あ?と低い声と共にハンマーを起こし、シリンダーが廻る。
「その銃の弱点って知ってる?」
そして一歩一歩ゆっくりと後退る。
なるべく距離を取る為に後ろへ。
「弱点を知った所でなんだ」
赤井さんがいなくなってるので何処へ行ったのかと探せば、キッチンの側にいた。
オーナーの足止めでもしているのか。
ある程度の距離を取った所で男に言い放つ。
「撃ってみ?ここ、即死だから」
「まさか避けられるとでも思って距離を置いたのか?だったら馬鹿だろ」
自らの鼻先を指差せば男は素直に銃口を上へとあげた。
そして向けられるのは勿論即死のコースだ。
実際に避けた事はないけど、蘭ちゃんが映画で避けてたくらいだから引き金に掛かる手と銃口の方向を見ていると、おそらく避けられる。
いつでも避けられるように構える。
そして、引き金を引いたと同時に体勢を低くして避け、その足をバネに男に飛び掛かる。
「コッキングが遅いっ!」
シリンダーを廻すよりも早く銃を掴み反対の手で男の肩口を思い切り打撃して外した。
「う、腕があぁ!!」
「煩いな、ちょっと外しただけでしょ……形勢逆転、だな?」
銃を落とし、男の鳩尾に一発入れようとした時、先に入れた人物がいた。
降谷さんだ。
気絶した男をその場に横たわらせ、ギロりと睨んでくる。
「なんて無茶をするんだ!」
「えっ、いや、人質なんて嫌じゃないですか」
「だからって大人しくしてろ!本当に死ぬかと思ったんだぞ!」
あまりに真剣な表情だったので、言い返そうと思った言葉を飲み込んだ。
「……私も初めて銃弾躱しましたよ」
「……椿さん…お願いですから危ない事はしないでください」
み、耳があるなら垂れてる。
裕也を見ると男の銃を机に二つ並べている。
そして気絶はしているものの、いつ起きるかも分からないので見張る事にしたようだ。
そして携帯を手に電話をしていたので警察でも呼んだのか。
「聞いてるのか?」
「聞いてないです、今は説教される時間も惜しいので」
事情聴取はなんとしてでも避けたいので私も携帯を取り出し黒田さんに掛ける。
降谷さんから距離を取ろうと一歩二歩と歩いたのに付いてくるではないか。
眉を寄せて降谷さんを見ると、彼は笑顔を貼り付けている。
どこに掛けているんですかと言う目だ。
すみません、あなたの上司です。
「今ね、前に連れて来てくれたパスタの店にいるんだけど」
『ああ、今目暮がそっちに向かったようだな』
「話早いね、私人質みたいな感じになっちゃって、なんとしてでも事情聴取を受けたくないから……なんとかしてほしいなぁーって」
前回は警察手帳を探してもらい、今日は事情聴取を免れたいと言う我儘。
本当それもこれも管理官様々だ。
権力って凄いわと身を持って思う。
『そうだな……椿が手料理をご馳走してくれるならなんとかしてやらん事もないが』
「よっしゃ乗った!流石ダディ、愛してるわ!」
『ああ、また近々な』
「うん、それじゃあ私帰るから綺麗さっぱりもみ消しといてね」
鞄を掴んで持とうとした時、その手首を掴まれた。
勿論降谷さんに。
携帯を切ってポケットへ仕舞い、じっと見てくる降谷さんをじっと見つめる。
睨めっこなら負ける自信ありますよ。
「電話の相手は誰です?その様子からだと警察関係者ですよね?ダディとは父親ですか?」
「いいえ、父親のような存在なだけです」
私の倍生きてるから本当に父親と言ってもいい年齢だ。
それにしても黒田さんについてもいつまでもバレないでいる自信ないし……いつか言わないととは思うけど…その手料理の時にでも家に招こうかな。
いや、無理だ。
あんな美味しい料理が作れる降谷さんに私の料理を振る舞える自信がない。
「もみ消すとは……?」
「事情聴取が嫌なので後日その書き換えをお願いしただけですよ」
「書き換えなら椿さん自らが出来るのでは?」
「まぁそうなんですけどね、ここに目暮警部達が向かってるそうなのでその人達も丸めてしまわないといけないじゃないですか?なのでそれをしてもらうんですよ」
「なるほど、権力は警部よりも上か」
ええ、あなたの上司です。
とここで言ってもいいけどそうなれば今すぐにここから去る事はさせてくれないだろうし…。
取り敢えずこの手を離してほしい。
そろそろ顔が沸騰してしまう。
必死で違う事を考えて意識しないようにはしてるけど、長く持ちませんので勘弁して下さい。
「お手を離していただければ……」
「…………」
無言だ。
じっと見られてはいるけど、無言だ。
「……タイムリミット…」
「え、はい、タイムリミット?」
「忘れてませんよね?」
「ああ、はい、ちゃんと覚えてますよ」
東都水族館。
忘れるわけがない。
返事を聞くと降谷さんは手を離してくれた。
鞄を肩に掛けて店の出入口へ向かおうとしてふと思い出してまた戻る。
さっき裕也が置いた銃を手に取ろうとして、またも手首を掴まれる。
「ダメですよ?」
「何がです?」
「持ち帰ろうとしましたよね?」
「いえ、まさかそんなピースメーカーが可愛いからって欲しくないですよ」
にこりと笑って分かりやすい嘘をつく。
もう喉から手が出る程欲しい。
こんな長い銃を持ち歩こうなんて思わないけど、それでも欲しい。
「家に飾るだけなのでお願いします!」
離されて自由になった手でパンと両手を合わせ降谷さんに頼んでみるも、やはりダメの一点張り。
そりゃあ犯人の所持品なので、それもぶっ放した物なので貰えるとは思ってないけど、1%の望みでもと聞いてみただけだ。
「何度言われてもダメですよ」
「分かりました、ジンに頼んでみます」
フンと踵を返し携帯を取り出してジンの番号を探す。
「裕也ー、また今度ゆっくりご飯行こーねー」
ぶんぶんと手を振り降谷さんにもぺこりとお辞儀をしてからジンに電話を掛ける。
すると早速なんだと低い声が聞こえた。
「今ね、事件に巻き込まれてその男がピースメーカー持ってたんだけど、可愛かったか『他をあたれ』」
意図が分かったジンに話を遮られる。
駐車場まで行ってイヤホンに切り替えてから車を発進させるとパトカーが何台も押し入ってきた。
そのまま家への道を走る。
「ジンー、ジンさーん、ジンちゃーん」
『組織に手を貸すってんなら用意してやってもいいがなあ?』
「たまに情報あげてるじゃん」
『殺し、取引、ハニートラップが出来てから言え』
「鬼」
クソぅ、もういいやと電話を切った。
ジンはまだ何かを言おうとしてたけど切ってしまったものは仕方ない。
再び電話をする気にもなれず、用があるなら向こうから掛けて来るだろうと隣に座る狼を撫でた。
そして今日一日で思った事。
裕也って呼ぶようにしたけど、やっぱり違和感なので風見に戻す事にした。
という事を本人にメールで送信しておこう。